恩田陸『蜜蜂と遠雷』(を読みはじめた)

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1月9日にレンタルDVDを返却したついでに併設されている本の売り場に買おうと思っていた『半径5メートルの野望』(はあちゅう講談社文庫)はあったけれど、文庫1冊だけ買って帰るのは勿体ないと思って、売り場を徘徊しました。

「これ!」というのがみつからず、未読の小説は『犯罪小説集』『キャプテン・サンダーボルト』など何冊もあるけどと思いつつ恩田陸『蜜蜂と遠雷』を買うことにしました。佐久間宣行さんのツイートに背中を押されたからです。

 翌日、1月10日は飲み会があったので、普段とは異なりJRで帰宅することになりました。スマホの充電が切れ、電車に遅延が発生したこともあり、駅の待合室で腰を据えて『蜜蜂と遠雷』を読みはじめました。

今日までに40ページ読みましたが、帯に書いてあるとおり「著者渾身、文句なしの最高傑作!」である予感がします。昨年読んだ小説は8冊で、恩田陸の小説は『ドミノ』『Q&A』しか読んでないので何の説得力もありませんが。

 さて、『蜜蜂と遠雷』。読み終えた冒頭40ページは、亡くなった著名な音楽家に師事を受けたカザマ・ジンという少年がピアノ・コンクールのオーディションを受け、演奏を聴いた審査員の3名が混乱する、という内容。

 冒頭を読み、「著名な音楽家の師事を受けた、正当な音楽教育を受けていない青年が音楽コンクールに臨む」という本書の骨格から一色まことピアノの森』が想起されます。

 『ピアノの森』の主人公は貧民街/風俗街の出身で母子家庭、『蜜蜂と遠雷』は養蜂家の息子で父子家庭。

類似や差異を探したり比較することへの熱意はなく、小説にしかできないことが記されていることを期待しています。

審査員の3名がフランス、パリのバルで議論しあうのが面白くなるのは小説ならではであるし、恩田陸の技術により飽きることがありません。

 

この世界に浸り続けていたい小説です。最後までこの感覚が続きますように。 

定期購読している雑誌、2017年1月の。

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2015年5月29日に「定期購読している雑誌は14誌あります。」というブログを書きました。書いてから1年半が過ぎました。

 

2017年1月現在で毎号購入している雑誌と新聞は以下の10誌(紙)です。

15年5月に比べると少し減りました。雑誌不況と言われているらしいので、個人平均からすると多めなのでしょう、恐らく。

 

1『本の雑誌

2『MUSICA』

3『ele-king

4『KAMINOGE

5『POPEYE』

6『ケトル』

7『フリースタイル』

8『広告』

博報堂の社員が編集長の辞令を受ける雑誌。コミック雑誌のように連載作品があるわけではないためガラリと変わる楽しさがあります。

昨年末で編集長の尾形真理子さんが2年間の任期を終えました。1月19日発売の次の編集長は誰なのでしょうか?

9『Dモーニング』

ジャイアントキリング』が全然連載再開しないし、読むマンガ少ないのですが、アプリを登録しているのでズルズルと購読しています。

10『朝日新聞

2015年5月当時は沢木耕太郎「春に散る」のスタート直後たったので連載を追うために切り抜きをしていましたが、次第に追わなくなりました。しかし、年始から吉田修一×束芋という『悪人』の座組みで「国宝」という連載が始まったので切り抜きを再開しました。

 

2015年5月当時は購入していた雑誌は以下の理由から現在は毎号購入していません。

en-taxi

2015年11月26日発売の46号をもって休刊。

『SIGHT』

書評対談『読むのが怖い!』が載らなくなったので買わなくなりました。

BRUTUS

2015年5月当時は樋口毅宏「ドルフィン・ソングを救え!」のスタート直後だったので連載を追うために買い続けましたが、次第に追わなくなりました。今は特集によって買う/買わないを判断しています。

『GINZA』

松尾スズキ「東京の夫婦」の立ち読みはしていますが、特集によって買う/川内を判断しています。

ヒバナ

創刊から何号か買っただけです。2016年に読んだマンガは10作に満たない気がするので、今年はもう少し増やそうと思います。

 

雑誌の良さは何だろうかと考えました。

雑誌の良さは『本の雑誌』『MUSICA』『ele-king』などそれぞれの雑誌が網(フィルター)を持っていて、その網(フィルター)で掬い上げられて届く物や事柄は私の生活している範囲にはないものです。ネット上のウェブメディア、たとえばナタリーやリアルサウンド、では自分が知っている物しか目に入らないし、Amazonは自分の好きそうな物しか薦めてきません。雑誌という物体があることで、今は素通りしても、何かのきっかけで再びアクセスすることが可能になります。

 

吉田豪『続・聞き出す力』を読み始めたんですが、そこに「紙のプロレス」所属時の上司が山口日昇であったと書いてありました。山口日昇は「KAMINOGE」によく出ている名前だからちょっと読み返してみよう、というようなことが楽しくて雑誌を読んでいます。

テレビドラマ OF THE "2016"

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2016年のベスト・ドラマ

1『奇跡の人』

2『ちかえもん』

3『トットてれび

4『重版出来!

5『スニッファー』

ランク外『逃げるは恥だが役に立つ』、『ゆとりですがなにか』

 

『奇跡の人』は峯田和伸麻生久美子の『色即ぜねれいしょん』コンビ再び!ということで下手なドラマにはならないと思っていましたが、予想を超えて良かったです。キャスト10人だけで回した小演劇のような座組みで、その10人が極めて優秀だったので、目を逸らすことができませんでした。とくに正志を演じた山内圭哉。朝ドラ『朝が来た』の大番頭が真面目で良い人で友近との淡い恋を楽しんでいたので、ギャップに悶えてしまいました。

松尾スズキさん主演の『ちかえもん』。江戸時代の劇作家を、松尾スズキさんが演じる。創作の苦悩を演じるのだから、松尾スズキさんは適役でした。

満島ひかりさんが黒柳徹子を演じた『トットてれび』。テレビ草創期の黒柳徹子の映像を見ると『トットてれび』での再現性の高さに驚きます。黒柳徹子の歴史はテレビの歴史になっていることは凄いことだし、黒柳徹子が今も現役であることは信じがたいことだけど、長生きすることで失ったものの寂しさを考えてしまいます。

トットてれび』に登場した渥美清坂本九向田邦子沢村貞子、そして森繁久彌黒柳徹子と友情より深い関係を結んでいく人たちが描かれていますが、いずれも物故者となり、黒柳徹子は皆から別れを告げられています。

その後、主役だけが生き残るなんて、黒柳徹子の眩しさに翻弄されていまうけれど、黒柳徹子が主演でなければ、悪い夢のようなドラマ。

 

ベスト5本のうち4本がNHKのドラマってのは、なんなんでしょうか?「画面にヒビの入ったスマホは映せない」とか民放のドラマの規制や予算、人材不足が原因なのでしょうか?

そんななかで、フジテレビの『重版出来!』は安心して観れました。原作はいつのまにか若手マンガ家が成長していく話になったので巻を追うのが途絶えてしまいましたが、その手前までをドラマにまとめてありました。

黒木華がシャツの第1ボタンまで留めていて、田渕ひさ子さんの系譜に連なっていて好感を持ちました。

主人公の黒沢たちが毎回立ち寄る小料理屋「重版」の女将で「朝が来た」美和役の野々すみ花さん出てきて嬉しかったけど、役回りが「朝が来た」と同じだったのでキャスティングに捻りがありませんでした。出演は嬉しいけど、違う顔が観れなくて残念だったということです。

そんな『重版出来!』で効率重視の編集者を演じた安田顕が『スニッファー』最終回で演じた役にはガッカリしたし、井川遙の元旦那との繋がりも唐突であると思って興ざめしたので最終回はダメでした。

そのダメだった最終話を除く6話までは1話完結で解き明かす行程にワクワクしたし、トータス松本劇団ひとりのキャスティングは嵌っていたし、連続して楽しめたドラマでしたよ、『スニッファー』は。

『逃げるは恥だが役にたつ』は妻が観てるのを横目で観たり観なかったりしたのでフルで観てませんし、『ゆとりですがなにか』は重くて録画したのを消化できてないんで、ランク外にしました。1クールに1本、見続けられるドラマがあると嬉しいです。

BOOK OF THE "2016"

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年末を迎え、各誌、各サイトで年間ベストが発表されはじめました。

いろんな人が10本、10枚、10作、、、と選出していますが、分母が気になってしまいます。

あなたの選んだ10本(10枚/10作)は幾つの選択肢から選んだものなのですか?と。

手に取る段階において、なんらかのフィルターがかかるのは仕方ない事なのですが、あの作品が入ってないけど、作品に触れたうえでランキングから外してんの?と突っかかりたくなるわけです。

「観た(聴いた/読んだ)けどランク外」と「観て(聴いて/読んで)ないからランク外」は違います。

 

ということで、私が年始から12月19日までに読み終えた36冊のランキングを発表します。

 

順位/ランク/読んだ順番/著者/タイトル

1      A      13 坪内祐三『昭和にサヨウナラ』

2      A      24 藤井健太郎『悪意とこだわりの演出術』

3      A      29 くるり+宇野維正『くるりのこと』

4      A      28 阿部広太郎『待っていても、はじまらない』

5      A      35 佐久間宣行『できないことはやりません』

6      A      22 大崎梢『スクープのたまご』

7      A      6 佐渡島庸平『ぼくらの仮説が世界をつくる』

8      A      20 

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9      A      33 橘川幸男『ロッキング・オンの時代』

10     A      4 宇野維正『1998年の宇多田ヒカル

11     A      31 石井朋彦『自分を捨てる仕事術』

12     A      25 池田純『空気のつくり方』

13     A      2 水口克夫『アートディレクションの「型」。』

14     A      36 佐藤オオキ『佐藤オオキのボツ本』

15     A      14 大崎梢『クローバー・レイン』

16     A      32 目黒考二目黒考二の何もない日々』

17     A      1 若林正恭『完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込』

18     A      12 大崎梢『プリティが多すぎる』

19     A      23 藤田和日郎『読者は読ムナ』

20     A      30 宇野常寛吉田尚記『新しい地図の見つけ方』

21     B      19 

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22     B      26 

tabun-hayai.hatenablog.com

23     B      5 小西利行『すごいメモ。』

24     B      34 柴那典『ヒットの崩壊』

25     B      10 山内マリコ『買い物とわたし』

26     B      15 大崎梢『平台がおまちかね』

27     C      3 江弘毅『K氏の遠吠え』

28     C      7 みうらじゅん『大人に質問!「大人ってどのくらい大変なんですか!」』

29     C      8 大崎梢『サイン会はいかが?』

30     C      17 大崎梢『背表紙は歌う』

31     C      9 ホイチョイ電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり』

32     C      11 印南敦史『遅読家のための読書術』

33     C      16 佐々木典士『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』

34     C      18 増井修ロッキング・オン天国』

35     C      21 尾崎世界観『祐介』

36     C      27 中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』 

 

以下は2016年の読書傾向と「ブックデザイン部門」です。

〇 大崎梢著作を読み漁った

ブログに書いたように大崎梢が出版について書いた著作はあらかた読み終えました。著作7冊のうち購入したのは『スクープのたまご』のみで他の6冊は図書館で借りたので申し訳ない気持ちもあります。

 

〇 小説を読んでない

大崎梢著作7冊を除けば『祐介』のみ。『祐介』については、装丁100点だけど、内容に入り込めませんでした。文学になってるし、青春でもあるんだけど、私の好きな青春小説ではなかったです。35歳の私では入り込めませんでした。

 

〇 ロッキング・オン関係の本を読んだ

ロッキング・オンと一括りにするのは乱暴であるが、ロッキング・オン出身の人の著作を5冊読みました。ロッキング・オン出身の人は文章について地肩ができているから手にとってしまいます。「地肩」というのは、古い話で恐縮ですが、大根仁さんの言い回しを拝借しました。

モテキの取材をいくつかやってて、原稿チェックしたりもするんだが、元ロッキンオン系のライターさんが書く文章やインタビューや対談をまとめたテキストはなんか違う。地肩が強いというか「直させねえよ!」というオーラがある。あとまあなんか筋が通ってるんだ文章に。(2011.7.28)

 

ロッキング・オン関係のなかでは、『くるりのこと』を最上位にしました。くるりの楽曲は全て聴いているけれど、くるりが最も好きなバンドであるというわけではないから、この順位です。

ロッキング・オン天国』は、タイトルにロッキング・オンとあるけれど、90年代の海外の音楽事情について紙面が割かれており、ロッキング・オンの内部事情とか編集方針とかを読みたかった私には肩すかしでした。なので、『ロッキング・オンの時代』は渋谷陽一のエピソードが多く出てきたので『ロッキング・オン天国』より上位にしました。

 

〇 ブックデザイン部門

1位 『悪意とこだわりの演出術』

2位 『くるりのこと』

3位 『昭和にサヨウナラ』

4位 『待っていても、はじまらない。』

5位 『ロッキング・オンの時代』

6位 『祐介』

7位 『読まされ図書室』

8位 『空気のつくり方』

9位 『アートディレクションの「型」。』

10位 『目黒考二の何もない日々』

11位以下は、ワーストの『できないことはやりません』『新しい地図の見つけ方』を除いて並列です。

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私の見方に興味ある方いましたら、読書メーターのマイページに寸評書いてあるので、そちらをどうぞ。

elk.bookmeter.com

 

特典のDVDを聴いている


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『ミュージック・ポートレイト』で又吉直樹さんが紹介していたハンバートハンバート「ぼくのお日さま」。番組を機に、改めて聴きたくなりました。

けれども収録されている『むかしぼくはみじめだった』が見当たりません。残念に思いながら、You TubeでPVを何回か見て、聴きたい気持ちを落ち着かせました。

ハンバートハンバートへの興味が再び高まり、『ぼくはみじめだった』を買い直すことも考えましたが、ディスクユニオンに手ぬぐい付きの『FOLK』というアルバムが売っていたので注文しました。

『FOLK』に収録されている「国語」が素晴らしくて、歌詞をまるまる引用したいのだけれど、本題から逸れるので控えます。

『FOLK』を含め、他にも何枚かCDを買ったので、車のHDにリッピングしました。リッピングするだけだと曲名が出ないので、ネットに繋いでタイトルを登録するためSDカードを取り出しました。SDカードを取り出したけれど、なんやかんやあってタイトル取得の作業を忘れたまま、車に乗ってしまいました。

車に乗って聴くものがないことに気づき、手元にあった『FOLK』は何度か聞いたということで、特典のDVD『FOLK LIVE』流すことにしました。

DVDを入れてから気づいたのは、運転中は映像が遮断されるので、ほぼほぼCDを聞くのと変わりがないということです。

この『FOLK LIVE』には「ぼくのお日さま」が収録されているので、車内で声を張り上げて歌うようになりました。

 

CDにいつごろからか付属するようになったDVD。

ウィキペディアには谷村新司が1996年にリリースした『シンジ ラ ムニタ』が世界初の商業用DVDと書いてあります。

96年が最初とはいえ、実感としては2000年代に入ってからCDの初回限定盤に付属するようになった印象があります。

ライブでもPVでも映像で音楽に接することはほとんどないので、しっかりと区切ることはできないのですが、それでもかつて購入したものを思い出してみました。

 

1997年4月『music clips ALIVE』Mr.Children

1998年10月『WINTER GIFT '98 Happy Songs & Music Clips』広末涼子

2000年2月『ビデオ ポキールBUMP OF CHICKEN

2004年4月『シフクノオト』Mr.Children

2006年7月『箒星Mr.Children

 

『ビデオ ポキール』はVHSで、『シフクノオト』にはDVDが付いてきたので、2000年と2004年の間あたりでDVDが広まりだしたのだろうと思います。

CDの売り上げのピークが『1998年の宇多田ヒカル』に書いてあったように1998年であるから、右肩下がりの市場のなかで、DVDを付属して初回盤の値段設定を高くするのが打開策の1つとして広まったと推測します。

あと、CDとDVDは形状が一緒なのでパッケージしやすいってのも広まった理由の1つなんだと思います。広末の『WINTER GIFT’98』はCDとVHSがセットになっいて、かさばってましたし。

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大友啓史『ミュージアム』と巴亮介『ミュージアム』

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巴亮介ミュージアム』を原作とした大友啓史『ミュージアム』を鑑賞しました。その感想です。

マンガや小説など原作があるものを映画化する場合、何らかの脚色をすることは避けられない事です。

 細かい事ではあるけれど、その脚色具合への不満が6ヶ所あったので書きます。感想であり、紹介ではないからネタバレを気にせず行きます。 

 

(1)

「ドッグフードの刑」執行後、現場確認を終えた主人公は、近くにいたカエルに「お前は何を見たんだ?」と話しかけます。

冒頭、散らかった自室のソファーで目覚めたシーンや玄関で妻を見送る回想シーンからも推測できるように、主人公の仕事の忙しさから妻が子どもをつれて家を出てしまっています。妻に出ていかれ、それでも仕事に出かける主人公にカエルに話しかけられるだけの心理的余裕はあるのか、と疑問が浮かびました。

このシーンは原作にはなく、作品として重要なモチーフである「カエル」に重ねてタイトルを出すための脚色です。

(2)

「ドッグフードの刑」を執行された被害者と同棲する彼氏は金髪でした。

映像としての見映えのためでしょうか。このことは有効的な脚色だと感じました。 

(3)

「均等の愛の刑」執行し、均等に切断された裁判官の遺体が自宅と愛人の勤め先に送付されます。原作では会社の事務員であった愛人ですが、映画ではクラブに勤めるキャバ嬢になっていました。

これも映像としての見映えのためにクラブのセットが選ばれ、愛人がキャバ嬢になったのだろうと推測しますが、裁判官がキャバ嬢を愛人にするのか?というところの疑問がありました。

原作どおり、一般企業の事務員の設定の方が、大学や仕事上での接点があり得そうに思えました。

(4)

女医がカエル男と双子であるという繋がりが急にあらわれ、クラクラしました。

資産家夫婦殺害が原作通りカエル男の犯行であるとするなら、その時に双子の片割れは何をしていたのか?という疑問が生まれます。

今回の犯行前に幼女樹脂詰事件があり、その時も双子の片割れである女医は気付かなかったと断言して良いのでしょうか?

(5)

原作と比べて主人公が痛めつけられすぎであるということ。

友人宅に身を寄せていた妻と子供がカエル男に誘拐されたのち、主人公とカーチェイスをするシーン。

カーチェイス自体は原作にもありますが原作では電柱に衝突するだけで、映画のように横転したり、カエル男がトラックを運転することはありませんでした。

また、主人公とカエル男がビルの屋上で対面する前、カエル男を探している時に主人公は車に撥ねられます。撥ねられてもカエル男を追う。執念というか、もう破綻してます。

(6)

カエル男の家でカエル男と対峙するシーン、原作では後姿を見て妻の立ち姿を思い出し、妻がカエル男のマスクを被っていることに気づきます。

しかし、映画ではしゃがみこんで泣き叫びます。「尾野真千子、なにしてんだよ?」と原作ファンである私は思いました。

 

 以上のように、瑕疵ばかりを書いてしまいましたが、画面の暗さなどのトーン、リアルサウンド映画部でも記事になっていたカエル男・妻夫木聡はじめ俳優陣の演技などについては何の不満もありません。特に、田畑智子さんが短い時間ながら光っていたことも嬉しかったですし、「親の痛みを知りましょうの刑」で殺されるオタクがおでんの玉子を口に入れたあとにポンッと鍋に吐き出すシーンは良かったです。

市川実日子さんが出てきて嬉しかったのですが、これは私の観たい実日子さんではありませんでした(私のベストの実日子さんは『blue』です。あと、『午前、午後。』に続くエッセイ集の出版をお願いします)

主演・小栗旬の演技は『GTO』と『宇宙兄弟』くらいでしか観たことありませんが、原作の主人公を実在化させることに成功していたので、何の文句のつけようもありません。

 

原作はカエル男を追うことを重視して読みましたが、映画『ミュージアム』では「失いつつある家族」から「仕事と家族のバランス」について我が身を振り返ることに自分の重心が移っていくのを感じました。

原作の『ミュージアム』が完結する3巻の発売は14年4月で読了時は自分が独身で16年11月の現在は結婚しているからだろうし、尾野真千子の存在感が強かったせいもあるだろうと思います。

 あと、大半の映画と同じように、ONE OK ROCKの主題歌も必要性が感じられませんでした。

映画を観に来た観客に無理やりにでも歌を聞かせられるし、CMやテレビの映画紹介時に曲が流れるということで主題歌があるのでしょうけども、ONE OK ROCKのCDの購買欲は刺激されませんでした。

市川実日子さんが公式サイトで「台本の中に、私の好きな歌が出てきました。明るくかわいい歌です。普段なら。このミュージアム界ではどんな歌に聴こえてくるのか、作品の完成が・・・とっても恐ろしいです」とコメントしていた曲、つまり、カエル男がつぶやくように歌っていた、大貫妙子「メトロポリタン美術館」が主題歌としてベストだったはずです。

そのままでなくとも、誰か(五十嵐隆さんとか?)にカバーさせればよかったのにと思いました。

 

 

原作ファンとして注文が多くなってしまいましたが、とても良い映画でした。集客も85%くらい埋まってましたし。

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2016年11月23日、アナログフィッシュ@松本ALECX、そしてバンドの衣装のこと


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アナログフィッシュ下岡晃がプロデュースを務めたHelsinki Lambda Club『ME to Me』。

リリースツアー『From Me to You』の一環としてAnalogfish、Kidori Kidoriを呼んだ公演が松本ALECXで開催されたので出かけてきました。

松本はちょっと遠いので本来であれば見送るところですが、アナログフィッシュのアコースティックアルバム『town meeting』を買うためもあって出かけてきました。 

最初はKidori Kidori。

Kidori Kidoriに対してはメンバーが失踪して脱退したバンドであると音楽ナタリーで読んだことあるだけで音源を聞くのは今回がはじめてでした。

良いバンドであると思いましたが、「アウトサイダー」を演奏する前に「生きにくいということを歌詞にしました」と紹介していましたが、肝心のその歌詞が聴き取れなくて残念でした。

 

そして、アナログフィッシュ

1.平行

2.こうずはかわらない

3.My Way

4.Good bye Girlfriend

5.Baby Soda Pop

6.There She Goes(La La La)

7.今夜のヘッドライン

8.No Rain (No Rainbow)

以上のようなセットリストでした。

「平行」という驚きのスタートでした。

佐々木健太郎さんの曲は「Good bye Girlfriend」と「Baby Soda Pop」。この2曲が鉄板なのは百も承知ですが、他の曲も聴いてみたいのがファン心理です。

「抱きしめて」がセットリストから外れていたことも驚きました。「抱きしめて」に代わって軸となる「No Rain(No Rainbow)」が産み出されたので、「抱きしめて」が演奏されないことについての不満は全くありません。

私はりんご音楽祭とかネオンホールでのタテタカコとの2マンなどでトータル5回くらいアナログフィッシュを見ているけれど、いずれも1時間程度なので、長尺の20曲くらいの公演をいつか観に行きたいと思っています。

そうなると、東京まで行かなくてはならず、、、。武道館公演が実現した際は平日であっても行きます!

 

トリを務めたのはヘルシンキ・ラムダ・クラブ。

電車の都合があって30分くらいしか観れなかったけれど、良いバンドでした。

 

 

良いバンドであるヘルシンキ・ラムダ・クラブとKidori Kidoriが松本ALECX程度の箱を簡単に埋められるようになるには何が足りないのか?音楽的なことは分かりませんが、衣装の統一は必要なのかな、と思ってしまいました。

古くはThe Beatlesから始まって、the michelle gun elephant、東京スカパラダイスオーケストラと衣装の統一されているバンドは大概、カッコいいです。

普段着でステージに上がっていたアジカンだって『Wonder Future』ツアーやGotch & The Good New Timesのツアーでは衣装を揃えるようになっています。

ふらっと登場してバーンと演奏する。それでは日常の延長線上になってしまいます。

そのことがダメなわけではないけれど、観客としては驚きがありません。

BUMP OF CHICKENがあの勲章いっぱいつけた中世ヨーロッパのような衣装で揃えたり、WANIMAが短パンで揃えり、【ALEXANDROS】がスーツで揃えたりしているのは、自分たちの演奏する音楽と一致する服装を考えた結果であるはずです。

アナログフィッシュについては、歌詞の内容が日常に根付いたものなので、普段着だったりメンバー思い思いの服装で演奏するのが当然であると思います。

ただ、ヘルシンキ・ラムダ・クラブ、Kidori Kidoriがどういった内容の歌を唄っているのかを知らないので、認知度が上がるまでは衣装に統一感を持たせることも必要なのではないかと思った次第です。

 

ちなみに、Kidori KidoriのマッシュはThe Beach Boys、ドラムの川元直樹は橋本塁が中心となっているブランド「STINGRAY」のTシャツを着ていました。

アナログフィッシュ下岡さんはカナダのバンド「HOLYFUCK」、斉藤州一郎さんはアナログフィッシュのTシャツでした。

アナログフィッシュ、Kidori Kidoriともベーシストは長袖のシャツを着ていました。

ヘルシンキ・ラムダ・クラブはサイケデリックなポンチョを着てるメンバーもいればTシャツだけのメンバーもいました。

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