本の感想/書評

寺尾文孝「闇の盾」

寺尾文孝は元・警察官の機動隊員で、現在は日本リスクコントロール社長。 「闇の盾」の副題は「政界・警察・芸能界の守り神と呼ばれた男」。帯には以下のようにあります。 人知れず「権力者」たちが闇から闇に処理してきた事件、トラブルの数々。その陰には…

エムカク「明石家さんまヒストリー2 1982~1985 生きてるだけで丸もうけ」

〇不世出の明石家さんま 今のピン芸人に明石家さんまを置き換えようと試みて、結局誰にもあてはまらないことに気づきます。 明石家さんま、笑福亭鶴瓶、所ジョージといったお笑いコンビを経ていないピン芸人の司会者がいません。 今のテレビで司会をするのは…

佐久間宣行「普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる」

結局、仕事をしていて一番楽しいのは、おもしろい仕事したあとにみんなでお酒を飲んでいるときなんですよ。自分だけ評価されたり、自分だけ儲けたりしていると、楽しく飲めないじゃないですか。打ち上げメインの仕事をしてるから、打ち上げの空気が悪くなる…

BOOK OF THE 2020

2020年に読んだ冊数は57冊。月平均4.75冊。 音楽やマンガ、ドラマは細かく記録をつけないと何を見聞きしたか忘れてしまいます(映画は1本も見ませんでした)。 音楽やテレビ、マンガと異なり、本は読み終わるまでに一定の時間がかかります。加えて「読書メ…

村上春樹「村上T 僕の愛したTシャツたち」

坪内祐三さんは、村上春樹「シドニー!」の書評を以下のように書き始めました。 村上春樹は文筆家として四つの顔を持つ。 作家、翻訳家、ノンフィクションライター、コラムニストである。 私は読者として、作家村上春樹は×、翻訳家村上春樹は〇、ノンフィク…

板垣巴留「パルノグラフィティ」

2016年3月3日 「週刊少年チャンピオン」14号(秋田書店)に「BEAST COMPLEX」掲載(4号連続の短期連載) 2016年9月8日 「週刊少年チャンピオン」41号から「BEASTARS」連載開始 2019年9月19日 「週刊少年チャンピオン」に板垣恵介と板垣巴留の親子対談が掲載…

購入を検討している書籍と雑誌(2020年2月)

新刊をチェックして脊髄反射でAmazonのカートに入れて10,000円くらい溜まったら買うという、今までの生活を辞めにして、最近は未読の本を解消していく生活にシフトチェンジしています。今週は「夏の庭」を50ページずつ読んでいます。 とはいえ、Web「本の雑…

ヒラリー・クリントンの敗北宣言を引用した3冊

2016年11月9日、ヒラリー・クリントンはアメリカ大統領選挙に対する敗北宣言を行いました。その敗北宣言を引用したエッセイやマンガが3冊になりましたので、その箇所を引用します。年月は書籍としての刊行年月であり、いずれも雑誌連載をまとめた書籍なので…

ブルボン小林「ザ・マンガホニャララ 21世紀の漫画論」

2008年5月に「週刊文春」で隔週連載がはじまった「マンガホニャララ」。単行本としては3冊目にあたる本作。2018年10月とある「あとがき」は「まだまだ連載は続く(多分)し、評の言葉を届けたい。漫画を愛するすべての皆さん、どうぞ応援よろしくお願いしま…

たなか亜希夫「リバーエンド・カフェ」

もともと1年に1冊のペースでしか単行本が刊行されなかった「リバースエッジ大川端探偵社」。原作者の逝去に伴い、いよいよ新刊の出版が不透明になった日々を過ごしていたところ、「リバーエンド・カフェ」という新刊を手にしました。 作者は「リバースエッジ…

津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』総集編

津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』は2017年1月から18年3月にかけて朝日新聞に連載されたのち、18年6月に単行本が刊行されました。 朝日新聞連載時と単行本では、話の収録順が変更になっています。 朝日新聞連載時は「えりちゃんの復活」→「若松家ダービ…

津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』(カングレーホ大林の不在を埋める『この世にたやすい仕事はない』)

杜王町、仙醍キングス、EAST TOKYO UNITEDなど小説やマンガに出てくる架空の町やチーム。どこかのチームの熱狂的なサポーターでなければ、実在する町やチームに対してより親近感が持てるはずです。 2015年10月に刊行された『この世にたやすい仕事はない』に…

ジェーン・スー『生きるとか死ぬとか父親とか』

80歳手前の父と40代半ばの娘。2人という最少人数で構成される家族の日々を読み進めるうちに、読者自身の家族のことが頭の中をよぎり続けることでしょう。 著者はTBSラジオ「生活は踊る」のパーソナリティとしての肩書が最も知られていますが、エッセイスト、…

五明拓弥「全米は、泣かない。」

著者は、お笑い芸人「グランジ」というトリオの一員で、背の高い人です。トリオのもう2人は、椿鬼奴の旦那である佐藤大と、ラジオ「School of Lock」や5月6日に開催された音楽フェス「ビバラポップ」等でMCをしている遠山です。 著者の本職はお笑い芸人です…

花田菜々子『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』

東京の話であり、ヴィレヴァンの話でもあり、ひとりの女性の再起動までの話でもあり、男は女性をどう見てるかの話でもあり、ブックガイドでもあり、「夫のちんぽが入らない」に続く強いタイトルの作品でもある。私は自発的に本の情報を入手し、読む/読まな…

続きの気になる連載中のマンガ7作品

最近は読むマンガの大半が1冊で完結するマンガや巻数の少ないマンガ(「お父さんクエスト」「ルーブルの猫」「ニューヨークで考え中」「いのまま」、、、)になっているし、年末のランキングに載ってくるのもそういった作品だけれど、やっぱり毎週/毎月の連…

古瀬絵理写真集「蜜」「陽だまり」

(今も古瀬絵理さんを追っている同志に向けたエントリです。) 古瀬絵理さんは、1978年2月8日生まれで、先月40歳を迎えたばかりです。 1st写真集「蜜[mits]」出版から2nd写真集「陽だまり」までの間に結婚と出産を経ています。 2011年2月 33歳「蜜」(撮影:…

藤原嗚呼子「きまじめ姫と文房具王子」

店頭で見かけたときは表紙の感じからファンシーな作品なのかという印象を受けましたが、文房具好きなので抵抗できず購入しました。 読了後に掲載誌を確認したら「月刊スピリッツ」でした。ドラマ化された「重版出来」が有名ですが、他にも「阿・吽」や「映像…

「みずず」2018年1・2月合併号「読書アンケート特集」

2017年2月16日付のエントリの冒頭を引用します。 「みずず」2017年1・2月合併号「読書アンケート特集」 年末に各誌で発表される「年間ベスト」。その末尾を締めるのは、みすず書房が発行するPR誌「みすず」の「読書アンケート特集号」。今号では146名の方が5…

「ブレイディみかこ」が絶頂期に入っている

毎月7日に4冊の「文藝誌」が同時に発売されていることは、どのくらい認知されている事なのでしょうか。 毎月7日の朝日新聞には4誌が並んだ広告が掲載されるので、朝日新聞を購読されている方はご存知かもです。 そもそも「文藝誌」とは、芥川賞に絡む作家の…

津村記久子「ディス・イズ・ザ・デイ 最終節に向かう22人」(第5話~第9話)

tabun-hayai.hatenablog.com 第5話「篠村兄弟の恩寵」 奈良FC VS 伊勢志摩ユナイテッド 篠村靖(兄) & 篠村昭仁(弟) 兄弟で奈良FCに所属していた窓井のファンになったが、窓井の移籍とともに弟は伊勢志摩ユナイテッドのサポーターになり、兄はそ…

子どもの本の国の豊かさ

昨年発行された小山健「お父さんクエスト」、山崎ナオコーラ「母ではなくて、親になる」、池谷裕二「パパは脳科学者」の3冊が育児本のジャンルでは今後長きに渡ってのベストです。これは確定です(ブック・オブ・ザ・イヤーで無視されてんのは何でだ?)。 t…

宇野維正「小沢健二の帰還」

著者である宇野惟正さんのデビュー作にあたる「1998年の宇多田ヒカル」は総論的な作品で、2作目の「くるりのこと」は黒子として聞き手にまわった作品でした。そして、3作目にあたる本作のテーマは小沢健二について。著者の小沢健二への追っかけ振りは、小沢…

小山健「お父さんクエスト」

マンガ家や小説家による育児体験を記した本は、何冊も出版されています。 榎本俊二「カリスマ育児」阿部潤「はじめて赤ちゃん」樋口毅宏「おっぱいがほしい!」山崎ナオコーラ「母ではなくて、親になる」小山健「お父さんクエスト」 私が読んだのは上記の5冊…

星野源が偉い10の理由

星野源が続けざまに「ROCKIN'ON JAPAN」「anan」「MUSICA」の表紙を飾り、色々背負わされていて凄いなぁと思ったところが今回のエントリのきっかけ。 星野源の何が凄いかと考えだしたけれど、偉いんだと思いついて、偉い所を挙げだしたらすぐに10個になりま…

樋口毅宏「おっぱいがほしい!」

「週刊新潮」に2016年5月から1年間連載された本作は、2015年11月2日に産まれた長男を同年12月15日から2016年12月29日にかけて育児する日々をまとめた作品です。 樋口毅宏の著作で読んだことあるのは「タモリ論」「さよなら小沢健二」と「ドルフィン・ソング…

尾崎世界観「苦汁100%」

水道橋博士が発行人のメールマガジン「メルマ旬報」で連載されているクリープハイプ尾崎世界観の日記が早くもまとまりました。 誰かの日記を読むとき、この人は何を吸収しているのかという音楽や本などの具体名が気になります。 本書にも「書店に行った」、…

綿矢りさ「インストール」

綿矢りさ「インストール」を12年ぶりに再読しました。第38回文藝賞発表号の「文藝」で読み、2001年11月の単行本刊行時に読み、2005年10月の文庫刊行時に読んだので、12年ぶり4回目です。 自意識が膨らんで破裂した女子高生が学校をサボることになり、自室の…

「はあちゅう」とは何者か?

「はあちゅう」さんが肩書きを「作家」にしようとしたら炎上しました。 「はあちゅうさん、吉田豪さんに認識されていて凄い!」というのが私の第一印象でしたが、いろんな人がいろんなコメントをし、あれよという間に炎上したので驚きました。 「作家・はあ…

石持浅海「殺し屋、やってます。」

余計なことを考えると、行動が制約される。行動の制約は、失敗に直結する。プロとして、絶対に避けなければならない。 殺し屋を扱った小説を読むのが好きです。好きとはいえ、伊坂幸太郎「グラスホッパー」「マリアビートル」、曽根圭介「殺し屋.com」しか読…