「KAMINOGE」というプロレスの雑誌

 樋口毅宏、田村淳、壇蜜宮藤官九郎×伊賀大介麻美ゆまサイプレス上野幅允孝九龍ジョー、イーピャオ&小山ゆうじろう(『とんかつDJアゲ太郎』)という方々のロング・インタヴューが読める「プロレス雑誌」があります。

 『KAMINOGE』というプロレス雑誌が、どういう雑誌であるかを説明するためには、39号に登場した幅允孝さんの発言が分かりやすいので引用します。

 「プロレスはわからんが『KAMINOGE』は好きだ!って入れといてください。ホントにいいと思いますから。どこかの文芸誌と比べても全然『KAMINOGE』が勝ちますよ」

 個人的には、「どこかの文芸誌」に勝てる雑誌ではなく、「音楽カタログ」や「月刊ももクロ」と揶揄される以前の『ロッキング・オン・ジャパン』や『クイック・ジャパン』に近いオーラをまとった雑誌と認識しています。

 

 『KAMINOGE』の魅力は以下の3点です。

 1.登場する人選が凄い

 2.個々のページ数が長い

 3.プロレスを知らなくても読ませる

 

1.「登場する人選が凄い」

 『リアル』13巻が1冊まとめてプロレスの話になると「スコーピオン白鳥」が表紙を飾るとともに井上雄彦のインタヴューが載り、『まほろ駅前番外地』でプロレスが取り上げられると大根仁さんのインタヴューが載る。

 『KAMINOGE』にはこういうフットワークの軽さがあります。

 加えて、劔樹人さん×犬山紙子さんの結婚報告インタヴューが読めたり、音楽誌には何年も登場しないケイゾウさん(KING BROTHERS)がリリース・タイミングとは無関係に登場したりしています。

 4月下旬発売の41号には『水曜日のダウンタウン』総合演出の藤井健太郎さんが出るとあっては、今後も目次のチェックを怠ることはできません。(『水曜日のダウンタウン構成作家の大井洋一さんが聞き手なので、ぬかりなく「エル・チキンライス」の解説が早速されているようです)

 

2.「個々のページ数が長い」

 『KAMINOGE』の総ページ数は160ページですが、インタヴューや対談に登場するのは10人程度。単純に割って、1人に対して16ページの誌面が割かれていることになります。 

 1996年の、『KAMINOGE』と同じ版型だったころの、「ロッキング・オン・ジャパン」は11組に170ページを割いています。

 10ページの誌面を埋めるということは、インタヴュー時間も長くなるということであり、他では読めない記事が出来上がるのは必然のことです。

 

3.「プロレスを知らなくても読ませる」 

 プロレスの事は分からなくても、間口の広いインタヴューがあります。

 たとえば、15号に載った橋爪幸彦さんのインタヴュー。

 坪内祐三さんの著書を愛読していることもあり、柴田勝頼(1979年11月17日生まれ)と後藤洋央紀(1979年6月25日生まれ)が三重県立桑名工業高校の同級生だということを戦績以上に気になってしまいます。2人の高校時代の恩師が橋爪幸彦さん(1970年12月19日生まれ)です。ただプロレス界を目指す2人の高校生がいただけではなく、的確に導いてくれる恩師の存在があったことにグッと来てしまいました。15歳と24歳の時に出会っていたというのであれば更に。

 他には、27号に載った高木三四郎with加代子夫人&長女レイちゃんのインタヴューも印象に残ります。

 プロレス団体社長の小学生の娘がレスリングに打ち込んでいてオリンピック・メダリストである永田克彦の教室に通っていることが語られました。家に帰ると、天井からトレーニングのためのロープが吊るされていた、というエピソードに笑ってしまいました。

 

 6号で樋口毅宏さんのインタヴュアーを務めていた九龍ジョーさんが39号でインタヴューされる側に回って登場する。『KAMINOGE』でしかできない事です。

 その九龍ジョーさんのコラム連載は、41号の予告に「最終回」とありました(42号から新連載はじまって欲しい)。

 連載コラムから引用して終わります。

 

 「私は実在するプロレスラーたちが吐いたいくつもの名言や、実況解説、プロレス・マスコミ、活字プロレスが生みだしてきた名フレーズの数々を思った。プロレスは体であり、言葉でもある。なんなら『KAMINOGE』のこの号だけでもそれを証明できるにちがいない。」

 「九龍ジョーのワカとモモと池田屋へお散歩。」第14回

 

KAMINOGE』の表紙を飾った人たち

 3号 前田日明

 6号 前田日明×菊地成孔

12号 前田日明×青木真也

14号 甲本ヒロト

15号 アントニオ猪木

17号 綾小路翔氣志團

18号 麻生久美子

20号 柴田勝頼×KENTA

21号 前田日明

22号 桜庭和志×青木真也

23号 中邑真輔

24号 スコーピオン白鳥(『リアル』)

25号 鈴木敏夫×川上量生

26号 柴田勝頼×後藤洋央紀

27号 中邑真輔

33号 前田日明

39号 飯伏幸太

40号 ケンドー・カシン

 

買うきっかけとなった人たち(表紙除く)

 6号 樋口穀宏

12号 伊賀大介

15号 田村淳、壇蜜

17号 大根仁

20号 宮藤官九郎×伊賀大介

21号 松本ハウス

22号 麻美ゆま

23号 小林恵美

24号 井上雄彦

25号 ATSUSHI(ニューロティカ)、サイプレス上野

27号 増田セバスチャン

33号 劔樹人×犬山紙子

39号 幅允孝九龍ジョー

40号 ケイゾウ(KING BROTHERS)、イーピャオ&小山ゆうじろう(『とんかつDJアゲ太郎』)