訃報によってその人に出会うことがある。残念ですけれど。
岩田聡さん。
テレビゲームをしない私は、この人に出会っていませんでした。
同じ任天堂でも、11年11月5日に放送された「松本人志 大文化祭」の中で松本人志さんが会いたい人として対談をしていた宮本茂さんの事は認識しておりました。
岩田さんの死に触れた糸井重里さんのコラムは糸井さんらしいものでした。
具体的なエピソードではなく、雰囲気を語る。糸井さんの文章が支持されるのは、読み手が想像で補っている部分が大いにあって。一時期は「ほぼ日」を毎日覗いていたけれど、今は「ほぼ日手帳」を注文するときしかアクセスしなくなりました。
とはいえ、人が死ぬのは悲しい。悲しいけれど、悲しいことがニュースになり私のところへ届くのが世の中です。
忌野清志郎さん。
「HEY! HEY! HEY!」で篠原涼子とイチャイチャした人、ドラマ『マンハッタン・ラブストーリー』にストーリーと関係なく、ふらっと出演した人。
亡くなったことで追悼の言葉があふれ、追悼の特集が組まれ、生きていたらどんな歌を歌ったのかという想像があふれました。
あふれたことで忌野清志郎さんに再会し、RCサクセションの2枚のベストアルバム、タイマーズ『COVERS』を買いました。
追悼の言葉。
生きている誰かを褒めたり、生きている誰かの思い出を語ることはないけれど、亡くなることで照れが消えるせいなのか、生前の思い出が語られます。
嫌なエピソードは「仕方ないエピソード」の箱の中に入れ替えられ、大人げないエピソードは「人とは違ったエピソード」の箱の中に入れ替えられます。
死んだ人のことを悪く言わない、というのは日本人の美徳なんでしょう。
死んだ人のことを厳しく書いた言葉は、「en-taxi」創刊号(扶桑社)に掲載された坪内祐三さんの安原顯(ヤスケン)への文章しか知りません。
死ぬまで気にも留めなかったのに、亡くなった途端に喪失感が蔓延して寂しい雰囲気につられてしまいます。岩田さんの事なんて知らなかったのに。
結婚はめでたいことだ臨終はかなしいことだまちがえるなよ
桝野浩一さんの短歌です。