『深代惇郎の天声人語』と坪内祐三『考える人』

 

 

 深代惇郎(ふかしろ じゅんろう、1929年4月19日 - 1975年12月17日)執筆の「天声人語」が『深代惇郎天声人語』(朝日文庫/15年9月)として出版されたことを、たまたま立ち読みした『週刊文春』の「文庫本を狙え」で知りました。

 深代惇郎のことは、「文庫本を狙え」の執筆者である坪内祐三さんが雑誌『考える人』に連載していた「考える人」を通して知りました。

 季刊誌『考える人』04年夏号(04年7月)に掲載された深代惇郎の取り上げられた回は、このように結ばれます。

  来年(二〇〇五年)は深代惇郎が亡くなって三十年です。それに合わせて彼の著作が復刊されることを私は希望します。朝日新聞社の良き伝統を守るためにも。

  結果として、2005年に復刊されることはなく、没後40年の今年に復刊されました。

 連載「考える人」で深代惇郎が取り上げられた回の冒頭も引用します。

 

 先日、私より十八歳年下である編集者のK青年と話していたら、彼が、深代惇郎のことをまったく知らないと言うので、ちょっと驚きました(彼は同世代の中でもかなりの読書家です)。彼にとって、「天声人語」は、ものごころついた時から、すでに、今のような「天声人語」であって、かつてそれが輝いていた時代があったことを知らないのです。

 しかし、考えてみたら、それも当たり前なのかもしれません。

 彼は一九七六年生まれだから、深代惇郎が現役の「天声人語」子のままで急逝したあとで生まれたわけですから。

( 中略 )

  ただし、K青年が深代惇郎の存在を知らなかったのも無理ありません。

 深代惇郎は、没後、四冊の著作が刊行されました。少なくともその内の二冊(『深代惇郎天声人語』正・続)はベストセラーになりましたし、残りの二冊(『深代惇郎エッセイ集』『深代惇郎の青春日記』)もロングセラーでした。文庫本はずっと切れずに新刊本屋の朝日文庫の棚で見かけましたし、古本屋の均一コーナーにもよく並んでいた。はずです。

 はずです、と書いたのは、K青年に言われて、気になって、最新の文庫目録をチェックしたら、四冊共に既に絶版になっていました。しかも改めて古本屋や古書展で探してみたら、簡単に見つかるはずだと思っていたのに、全然見つかりません。

 つまり、深代惇郎の本はいつの間にか本屋から消えていたのです。

 「考える人」の連載を通して深代惇郎に出会い、その著作に触れようした時、坪内さんも書くように、店頭に深代惇郎の著作は並んでいませんでした。

 常に深代惇郎のことが気になっていたので、三冊は古本屋の店頭で見つけることができました。『~青春日記』はネットを使って入手しました。

  復刊するのは10年遅かったけれど、復刊されるのは素晴らしいことです。何より、10年前に復刊されていたら四冊を入手することはなく、現在では入手はより困難になっていたでしょう。

 

        ※ ※ ※ ※ ※ 

 

  引用したなかに登場する「K青年」とは、新潮社の金寿換さんです。

 金寿換さんは樋口毅宏さんの『タモリ論』をはじめとして、西寺郷太さんの『プリンス論』などヒットメーカーになりました。

 そのヒットメーカーが手掛ける最新作は、宇野維正さんによる初めての単著です。

 楽しみでしかたないので、発売されるまで他の書籍を買うことを自分に禁じました。

 ただ問題は、「今冬発売予定」の「今冬」とは何月なのでしょうか?フォーマットの決まっている新潮新書なら装丁にかかる時間は省略されるし、2月3月も冬に括られると困りますんで、年内発売が希望です。

 

 と書いてたら、発売日は来年1月15日前後との情報が、、、。来年最初に買う本にしようかな、、、。

 

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