佐野研二郎『7日でできる思考のダイエット』

 まずはじめに、このエントリによって2020年の東京五輪エンブレムに関して、15年7月24日に佐野研二郎さんデザインのものが選ばれ、9月1日に白紙撤回されるまでのことを蒸し返したいわけではありません。

 東京五輪エンブレムが佐野研二郎さんデザインのものになったことについては何の不満もないし、グッズ展開されていくことを楽しみにしていました。

  このエントリでは一連の佐野研二郎さんへの批判のなかで、触れられていなかったことについて指摘しておきたいと考えました。

  マガジンハウスから10年3月に刊行された『今日から始める思考のダイエット』が13年8月30日付で「マガジンハウスポケット」から『7日でできる思考のダイエット』として新書化(文庫化?)されました。

 『7日でできる思考のダイエット』について、amazonのレビューでは五輪エンブレムを巡る佐野研二郎さんへの批判ばかりであり、著書のレビューとしては全く機能していません。そのことの気持ち悪さも、今回のエントリの動機でもあります。

 

 そもそも「マガジンハウスポケット」とはどのようなレーベルでしょうか?

 「マガジンハウスポケット」単体でのHPはないようで、検索したら書店向け注文票のPDFにただり着きました。

 そのチラシには「ポケットサイズの新装版「magaziiiine house pocket」が8月より創刊されました!これまでに刊行され、ご好評頂いた書籍が、ポケットサイズで新登場!ぜひシリーズで販売をお願い致します!」とありました。

 刊行ナンバー「001」が『7日でできる思考のダイエット』です。

 13年当時でも、佐野研二郎さんがある程度の知名度を確保していることが伺えます。

 

 さて、『7日でできる思考のダイエット』についてです。

 雑誌「広告批評」を愛読していた私は広告クリエイターの方々へのあこがれがありますので『今日から始める思考のダイエット』『7日でできる思考のダイエット』ともに刊行直後に購入しました。

 2冊のうち、『7日でできる思考のダイエット』については、サイト「読書メーター」に14年10月30日付で、以下のように感想を記録しました。

 

 3年前刊行の本を新書化したもの。思考の仕方の実例として、元版のブック・デザインの過程を、そのまま転載しているのは大きな減点。「この本の表紙のデザインは~」とあって、初見の人は混乱するだろう。新書版は著者の装丁ではないし。著者と編集者の失敗だと思う。/内容としては「前倒しで取り組む」「美大生にもおばちゃんにも好かれるもの」など実践したくなるやり方や考え方がいくつも。

 

   前段の『3年前刊行の本を新書化したもの。思考の仕方の実例として、元版のブック・デザインの過程を、そのまま転載しているのは大きな減点。「この本の表紙のデザインは~」とあって、初見の人は混乱するだろう。新書版は著者の装丁ではないし。著者と編集者の失敗だと思う』という部分につてい、詳しく補足をしておこうと考えました。

  新書版196pに「思考のダイエットのプロセスについて、最後の章でおさらいをする前に、この本の表紙のデザインがどのようなステップを踏んで出来上がったかを、実際に紹介しましょう。多くのものは、その途中段階を見ることはできませんが、この本ができたその過程を知ること自体が、思考のシェイプアップに繋がると思うからです」とあり、201pまで解説が続きます。

  単行本は佐野研二郎さん自身による表紙デザインでしたが、新書版は統一のフォーマットで刊行されるため、装丁は水戸部功さんでした。帯には単行本の表紙デザインが引用されていますが、帯については誰がデザインしたか記載はありません。

  単行本版には表紙デザインのラフスケッチ画像が掲載されていましたが、新書版ではカットされていました。

  佐野研二郎さんのデザインについて批判することはできませんが、この6ページについては、手を抜きましたね、と言うことができます。

 

 佐野研二郎さんの手抜きでありますが、最初の読者であり新書版を企画した編集者の怠慢でもあると思います。

 その証拠として、「magazinehouse pocket」レーベルは13年10月までに11冊を刊行し、続刊が途絶えています。

 

f:id:tabun-hayai:20151109180422j:plain単行本表紙

f:id:tabun-hayai:20151109180459p:plainmagazinehouse pocket版 表紙(帯あり)

f:id:tabun-hayai:20151109180514p:plainmagazinehouse pocket版 表紙