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11月に読んだ本

津村記久子『この世にたやすい仕事はない』

 長年勤めた職場を退職した女性が転職を繰り返していく連作短編集。5話収録されており、5つの職場に主人公は席をおきます。

 5つの職場では「みはりのしごと」「バスのアナウンスのしごと」「おかきの袋のしごと」「路地を訪ねるしごと」「大きな森の小屋での簡単なしごと」をすることになります。

 短期間のなかで主人公はどの職場でも一定の業績をあげるのですが、転職を繰り返すことになります。仕事内容、人間関係、やりがい。何に重きをおいていくのかを読み進めるに従って考えてしまいました。

 作家生活10周年記念作品と帯にありました。『カソウスキの行方』『アレグリアとは仕事はできない』『ワーカーズ・ダイジェスト』『とにかくうちに帰ります』といった津村記久子の小説のなかでも仕事小説を私は愛読しています。

 仕事内容のディテールが積み重ねられ、何とか持ちこたえている主人公が登場するので好感や親近感をがもつことができます。

 

 

吉田修一『作家と一日』

 著者初のエッセイ集と帯にありました。

 表紙に著者の顔がバーンとでることからもわかるように、吉田修一さんは結構なハンサムながら、『悪人』や『元職員』『怒り』などの著作の内容と相まってミステリアスな存在でした。

 本書により、体調を崩した友人と湯治に行ったり、台湾が好きだったり、猫が好きだったり、ショッピングモールで何が流行っているかを知ったりするという新たな一面が知れます。

 航空会社の機内誌に連載されているエッセイなので読む機会はありませんでしたので読めてよかったです。

 

 

倉知淳『片桐大三郎とXYZの悲劇』

 『週刊SPA!』に掲載された吉田大助さんによる紹介を読み購入。

 エラリー・クイーンバーナビー・ロス名義で発表したドルリー・レーンを探偵役とする「悲劇」4部作『Xの悲劇』『Yの悲劇』『Zの悲劇』『レーン最後の事件』を元ネタとした100ページ前後の中編が収録されています。

 ウィキペディアでみると探偵や事件の設定は元ネタから引っ張ってきていることが分かりました。

 たとえば、聴覚を失った俳優が探偵役で、「ニコチンを使った殺人」「容疑者は家族の誰か」「貴重な作品の盗難」といった事件を解決する点が共通していそうです。

 俳優の道を究めたといってもいい大スター・片桐大三郎が解決する3つの事件(もう1つは助手が主役)では、かつてあった出来事を置き換えて解決の糸口を見つけていました。一つのことが深くまで詳しくなると、その知識が別の事にも置き換えられるから応用が効くというようなことを何かで読んだことがあるので、そういうことなのでしょう。

 2段組み400ページという分量でしたが、すらすらとテンポよく読めました。

すぐにでもドラマ化できそうですが、主役のキャスティングが難しそうです。北大路欣也は軽やかさやユーモアが足りないのでいまいちですし、高橋英樹は重鎮というには軽すぎるし、仲代達矢では王道感が薄いし、平幹二朗は個人的に顔が思い浮かびません。失礼なことを書き始めてしまいましたので、この辺でやめます。