渡辺潤『クダンノゴトシ(1)』

 渡辺潤先生の前作『三億円事件奇譚 モンタージュ』は途中までしか追えなかったので、ある程度巻数が揃ってから手に取ろうと思っていました。

 しかし、コミックナタリーでの対談試し読みを読んだ結果、気になってしまい、『クダンノゴトシ(1)』を購入しました。

 単行本の裏表紙に載っていたあらすじを引用します。

 卒業旅行帰りの大学生7人が事故で轢いてしまった、”異形の何か“。その出遭いこそが、悪夢の始まりだった。前途洋々だったはずの若者たちに、突如下される“余命7日間”の宣告。逃れる術は、無いのか――。

 

 「異形の何か」とは、人の顔をした牛のような生き物。のちに「クダン(件)」と呼ばれる妖怪であると大学の民俗学研究所の教授から説明を受けます。

 そして「前途洋々」に見える大学生ですが、男女7名それぞれが色々な事情を抱えていることが分かっていきます。ある人は就職できていない事から自殺を図り、ある人の父親は家族を捨てて若い子と駆け落ちし今は風俗店の呼び込みをしており、ある人の持っている写真に写る男の顔は最初に出会った「クダン」に似た顔をしていました。

 「クダン」は1人ひとりに余命7日間の宣告をしていくらしく、自殺や飛び降りで勝手に死ぬことを許してくれません。

 1人が死に、1人に余命7日間の宣告がされるところまでで1巻は終わりました。

 

 この作品に私は何を望んでいるのか?そして何を見せてもらいたいのか?

1巻では1人が亡くなりました。残り6名はどうなるのでしょうか?1巻の終わりで早速生き残る可能性を探り始めていましたが、生存者は多くても1名に収めて欲しい。決して人が死ぬのを見たいわけではないけれど、風呂敷が広げられた以上は提示してもらわないわけにはいきません。「クダン」のリアリティを担保するためにも、大学生の死にゆく姿を見届けるつもりです。

 前作『三億円事件奇譚 モンタージュ』は19巻という長期連載になったので挫折してしまいました。結末を見届けるためにも10巻以内で完結してくれるとありがたいです。

 

 コミックナタリーに掲載された対談のなかで渡辺潤氏が今後の構想を語っていました。

渡辺 「クダンノゴトシ」は死を意識したとき、どうやって生きるのかというテーマがあって。件から死の予言を受けた大学生7人が、それぞれどういう生き方を選ぶのかを描いていきたい。

 

──予言を受けてから7日後に死ぬ、という設定が絶妙だと思いました。1週間って短いですけど、いろいろできますし。

 

渡辺 あがくキャラもいるだろうし、ゆっくり受け入れるキャラもいるだろうし。自分はやっぱり人間ドラマが描きたいんだろうなあ。

 

 1巻のみではどんな人物なのかを知れるシーンが少なかったので、今後、個人個人がフックアップされていくことも期待します。

 7日間の余命宣告というと『イキガミ』が思い出されます。

 『イキガミ』はそういう制度下にある世界の話でしたが、『クダンノゴトシ』では「クダン」に謝れば許してもらえるのか、という淡い期待もあります。「クダン」との対峙が何らかの形で描かれることもあるのでしょうか?

 次の展開が待ち遠しいです。掲載誌「ヤングマガジン」には手を出さないので、ゆっくりと刊行を待つことします。