『デッドプール』

 6月1日に公開された『デッドプール』を字幕版で観ました。観たのは日曜日(5日)の初回9時10分から。

 マーベル作品に詳しくないので『アントマン』に続いて、単独で見ても楽しめる映画っぽいということで観に行きました。

 シネコンに行ったのですが、最も大きいスクリーンでした。客席の入りは2割程度。次の回では『ズートピア』の上映されるスクリーンであり、上映後の待合スペースでは親子連れを含めて多くの人が待機していました。

 上映前に予告編が流れるのは映画館の定例ですが、映画の予告以外で結婚式場(複数)やセブンイレブンのCMが流れるのは全国共通のことなんでしょうか?映画がデートコースとして定番なので結婚式場のCMが流れるのは分かりますが、惣菜を大写しにする意味ってあるんですかね。

 予告編を見たなかでは『10クローバーフィールド レーン』『インディペンデンス・デイ』が楽しみになりました。

 さて、『デッドプール』。

 映画ジャーナリスト宇野維正さんのコメントを引用します。

 どんどんヘヴィに、ますます複雑になっていくスーパーヒーロー映画界に新風を巻き起こしたこの軽さ! このシンプルさ! みんなが待っていたのはこれだ!

 このコメントで触れているのは、デッドプールの人物設定についてであり、『デッドプール』という映画についてではありません。

 キャラクターとしてのデッドプールは凄く完成されています。赤と黒のコスチュームの配色や、長い刀を2本背負うところ、照れ隠しとしてのユーモア、本人が観客に向かって話すコメント(「127時間」のネタバレになるよ、とか)などなど。デッドプールの魅力のみで、108分間を疾走した映画であると言えます。

 デッドプールに引っ張られるので上映中はワクワクするのですが、上映後に振り返ると多くの「?」が浮かび、消化不良を起こします。あれ?何がどうなって、こうなったの?となること必至です。

 『デッドプール』には説明を放棄した事柄があります。「デッドプールの闘う理由」と「フランシスの所属する組織の目的」です。

 1つめの「デッドプールが闘う理由」について。

 闘う理由については、人体実験によって爛れた顔を「美容整形して元に戻して欲しい」という理由しか示されていませんでした。美容整形をして欲しくて、実験を行ったフランシスを探すためとはいえ、何人も殺す必要があるようには思えませんでした。

 敵組織の人員とって「殺すことをいとわない」ことがデフォルトの設定であるとしても、描写する理由がわかりませんでした。

 最終的に恋人ヴァネッサは、ウェイドのただれた顔を見ても嫌がることなく受け入れていました。何のための殺戮だったのでしょうか?

  2つめの「フランシスが所属する組織の目的」について。

 敵役フランシスの働く人体実験を行っている施設は、ボロボロで不衛生で、組織に金銭的な余裕がないことが伺いしれました。そして、手術をおこなうフランシス以上の立場の人物が登場せず、フランシスがトップであるかのような描かれ方をしていました。本当にフランシスがトップであるとしたら、その組織は中小企業なんでしょうか?

 なんでも説明しろとは言いませんが、人の生死に関わることについて読み取るヒントすら与えらないのでは何ともフォローできません。

 「『デッドプール』の日本興収がコケると「やっぱりタレント吹き替えや日本アーティストによる主題歌やその他奇抜な宣伝商法をしなければ洋画は売れない」と判断されこの先永劫地獄が続くことになるので皆さん頑張りましょうね」という記述を見かけました。

 『デッドプール』がタレントやJ-POPのアーティストを吹き替えや主題歌に起用しなかったことは英断ですが、そのことのために脚本に瑕疵のある映画をヒットさせるために頑張る必要も義理も私にはありません。

 

 追記として。

 ウェウィド・ウィルソンの恋人、モリーナ・バッカリン演じるヴァネッサが雨の中で差していたビニール傘は、6月1日に放送された『マツコの知らない世界』で紹介されていたイギリスの傘メーカーFULTONのバードケージでした。6日の『めざましテレビ』でお天気キャスターの阿部華也子さんもお気に入りだと紹介していました。

 「アメリカの娼婦が、英国王室御用達の傘を使うのか?」ということも浮かんだ「?」のひとつです。

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