大崎梢が書店員、出版社を扱った作品群を読みました。
「読みました」と書いて「愛読しています」と書けないのは、今まで読んだ分は全て図書館から借りて読んだことの後ろめたさに寄ります。
このことの後悔はひとまず置いておくとして、「作品群」についてです。
大崎梢が書店員、出版社を扱った作品には以下のものがあります。
成風堂書店事件メモシリーズ
『配達あかずきん 成風堂書店事件メモ』(06年5月/東京創元社)
『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ(出張編)』(06年9月/東京創元社)
『サイン会はいかが? 成風堂書店事件メモ』(07年4月/東京創元社)
『ようこそ授賞式の夕べに 成風堂書店事件メモ(邂逅編)』(13年11月/東京創元社)
出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ
『平台がおまちかね』(08年6月/東京創元社)
『背表紙は歌う』(10年9月/東京創元社)
千石社シリーズ
『プリティが多すぎる』(12年1月/文藝春秋)
『クローバー・レイン』(12年6月 /ポプラ社 )
『スクープのたまご』(16年4月/文藝春秋)
本にまつわる作品として、他に2冊出版されています。
『だいじな本のみつけ方』(14年/光文社)
『大崎梢リクエスト!本屋さんのアンソロジー』
先日、『ようこそ授賞式の夕べに 成風堂書店事件メモ(邂逅編)』を読みましたが、読む順番を間違っていたら、ここまで楽しめなかっただろうと感じたので、読む順番を指南させていただきます。
0『配達赤ずきん』『晩夏に捧ぐ』
1『サイン会はいかが?』
2『平台がおまちかね』『背表紙は歌う』
3『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』
4『ようこそ授賞式の夕べに』
『配達赤ずきん』『晩夏に捧ぐ』は未読なので、0番目としました。『配達赤ずきん』が大崎梢のデビュー作なので、読むに越したことはないでしょう。
最初の2作は図書館になかったので未読ですが、私は『サイン会はいかが?』から大崎梢を読みはじめました。
短編集なのですが、表題の「サイン会はいかが?」は影平紀真という作家のサイン会を成風堂書店で開催する話です。成風堂書店に勤めるしっかり者の書店員・杏子と、勘の鋭い大学生アルバイト・多絵のコンビが書店に持ち込まれる謎を解いていく、というのが「成風堂書店シリーズ」の概要です。謎解きに長けた書店員がいるということが書店界隈のなかで評判になります。その噂が出版社にも広がり、影平にも解いて欲しい謎があったので成風堂書店でサイン会を開くことになります。
『成風堂書店』がどういう書店か分かった後は、「出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ」である『平台がおまちかね』と『背表紙は歌う』を読むのをお勧めします。
この2冊は出版社の営業マン井辻君、通称ひつじ君を主人公にした短編集であり、営業先などで出版にまつわる謎を解いていく、というのが「ひつじ君シリーズ」の概要です。
2冊それぞれの巻末に収められた「ときめきのポップスター」「プロモーション・クイズ」という短編には、成風堂の書店員が間接的に登場します。
3番目に挙げた2作『プリティが多すぎる』『クローバー・レイン』の舞台は「千石社」という老舗の出版社です。『プリティが多すぎる』ではティーン誌、『クローバー・レイン』は文芸を担当する若者が主人公になっています。
『ようこそ授賞式の夕べに』は「書店員大賞(≒本屋大賞)」授賞式の1日を描いた作品ですが、『クローバー・レイン』に登場する家永嘉人『シロツメクサの頃』も再登場していますので、お見逃しなきよう。
そして、5冊ないし7冊読んだ後に読むのが、『ようこそ授賞式の夕べに』です。邂逅編とあるように、ようやく成風堂の杏子と多恵が「いつじ君」との邂逅を果たします。いつじ君は出版社の営業マンなので成風堂を訪れることもあるかと思いきや、成風堂は先輩が担当している区域内にあるため「出版社営業・井辻智紀の業務日誌シリーズ」では間接的に登場するだけで、杏子と多恵の姿は出てきませんでした。そういった前提がありつつの「邂逅編」です。
泣くことはなかったけれど、こみ上げるものがあったのは『クローバー・レイン』と『ようこそ授賞式の夕べに』の2作品。私の挙げた順番で読んでいけば作家・大崎梢の成長がはっきりと分かるでしょう。
書店員を描いた作品の数々でありながらも、私は図書館で借りて読みました。書店員や出版社を描いた作品であるからこそ、読後には図書館で借りてしまったことの後悔がありました。
とはいえ、挙げた作品が地元の書店には置いてないのも事実であり、注文して取り寄せるほどのことでもなくジレンマもありました。
千石社シリーズの最新刊『スクープのたまご』こそは買おうと思いつつ何軒か巡り、先週末にようやく入手でき、昨日から読みはじめました。ワクワクする出だしでした。感想はそのうち、、、。