最近の『テレビブロス』から

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雑誌の売り上げが下がっているようですね。でも、雑誌、読んだほうがいいと思います。

最近ローンチされた『文春オンライン』は「週刊文春のスクープ記事が読める」ことを売りのひとつにしていますけれど、文春オンラインに転載されない記事は連載を中心にたくさんあるから「週刊文春」本誌も適当な周期で買えばいいと思います。

週刊文春」に限らず、雑誌に載った原稿がもれなく単行本化するなら雑誌を買う必要はないけれど、単行本化されず雑誌に載って終わりということは頻繁にあります。

たとえば、ロッキング・オン社の『ロッキング・オン・ジャパン』や『BUZZ』などに載った宇野維正さん、兵庫慎司さんらの原稿。山崎洋一郎さんの「激刊!山崎」は2冊の単行本にまとまりましたが、コラムやレビューの原稿を読むにはブックオフやネットからサルベージする必要があります。

ということもあるし、雑誌の面白さが語られなさすぎるんじゃないかと思う面もあるので、興味深かった雑誌の記事を紹介します。サブカル中年なので、「テレビブロス」から。

  

< 狩野有里「タトゥーにして彫りたい」(1/14号)>

 狩野有里さんのことは存じ上げないのですが、ミュージシャンへのインタビューページの隣、新譜レビューの下に載っていた枠に目が留まりました。

完熟食べごろ魅惑の28歳なのに結婚しそうな気配は皆無です。「ラッパーの彼氏がいるじゃん!」って声が「タトゥ彫り」マニアから聞こえてきそうだけど、最近登場してないことからお察しのとおり、自然的にお付き合いを解消いたしました。

(中略)

そもそも何万回も言っていますが付き合い始めて3年後に突然ラッパーに転身した彼氏をどう扱えってんですか。

そしてラッパーの彼氏の情報が小出しにされていきます。

・ラッパーの彼氏が組んでいるラップグループが最初のCDを出したときに、彼らのインタビューとこの連載が奇跡的にブロスの紙面で隣り合わせになった

・ラッパーの彼氏は乃木坂46とも仕事したとかしないとかレベルの映像ディレクターでもある

「青春ゾンビ」読んでるのだから何となく察せればいいんだけど、なんにもなれなくて、検索ばかりうまくなってしまったのは私も同じで、EMCの人だったのか!と辿り着けました。

その後、2月11日号でも以下のように書いていました。売れると掃蕩の妻(彼女)を切り離すのは世の常です。

鬱々とした気持ちを抱えていると、とんでもないニュースが飛び込んできた。バカリズム原案の面白げなドラマ『住住』の主題歌決定の報。歌っているのが本連載おなじみ“ラッパーの彼氏”改め“ラッパーの元彼”のグループだというのだ。前号であれだけ恨み、妬みを書き連ねた罰か。

 

< てれびのスキマ/「てれび30年のスキマ あのころのテレビ’02年」(1/14号)>

またW杯の真っ最中、テレビ(誌)界は巨星を失った。ナンシー関が39歳の若さで亡くなったのだ。創刊期に彼女の連載を掲載していた本誌でも急遽、7月6日号で追悼特集を組み、豊崎由美は「ナンシー関に書かれて、人は初めてテレビの住民になれる」とコラムを寄せている。ナンシー関の登場以前と以後でテレビの見方は劇的に変化したと言われるし、いまだに「もしナンシーがいたらなんと言っただろう」と常套句のように使われる。もちろん、それは彼女の偉大さの証だが、僕らのようなテレビのことを書いているライターの不甲斐なさもあらわしている。もういい加減、彼女の言葉に頼るのはやめようと思うのだが、追悼特集で抜粋された彼女の批評はいまなお鮮烈で鋭く響き続けている。

こういう振り返り企画でなければ、てれびのスキマさんが自分の不甲斐なさについて書くことはなかったように思う。てれびのスキマさんが製作者のインタビューを重ねているのは、ナンシー関をとは違う立ち位置を考えた末の行動だと思っています。

 

< 清水富美加「いざ‼おにぎりの中へ‼」(2/11号)>

「吉夢を見ました。マジ地球‼」「そして私は悟りを開くのです。夢の中で。自分は常に受け手であるのだ、と。すべてを地球から受け取っているだけの存在に過ぎないのだ、と」という文章を2月11日の夜に読んだ時は窪塚洋介の「ピースな愛のバイブスでポジティブな感じでお願いしますよ」とか中尾明慶仲里依紗の「BIG LOVE」のようなことかと思っていたけれど、翌日の朝には全く違う読み方をされるようになってしまったことが悲しくて寂しい。

出演作リストを見てもいまいちパッとせず、これからだと思っていました。いや、思っています。

「仕事を綺麗にしてから引退すればいいのに」とか「迷惑をこうむる人が大勢いるのに」と和田アキ子カンニング竹山やLilicoが偉そうに言ってるようですけど、逃げたいときは逃げるしかないし、逃げればいいんですよ。23歳だし、いくらでもやり直しがききます。元気になったら謝って、復活すればいいんですよ。

安倍首相だって、お腹痛いとかそんな理由で総理大臣を辞めて、今また総理を務めているわけだし。平気平気。

 

< 大根仁「中春スケッチブック」(2/11号)>

『群像』17年3月号に寄稿した「私のベスト3 映画史上ベストカップル」というコラム。

ベスト3に挙げられた3作品はライアン・ゴズリングエマ・ストーンの『ラブ・アゲイン』(2011)、『L.A.ギャングストーリー』(2013)、『ラ・ラ・ランド』(2016)。

2月11日号でも映画『ラ・ラ・ランド』が取り上げられ、『ラブ・アゲイン』『L.A.ギャングストーリー』にも触れられていました。「群像」はランキングという枠がありましたが、ブロスのほうでは時系列でつづられているところに、コラムニストとしての大根仁さんの技術を見ました。

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