松本人志とZeebra

松本人志は、「水曜日のダウンタウン」が暴れだすと及び腰になります。

フレーズの二度使いをしてこなかった松本人志にとって珍しく、「BPOに目をつけられている」「この番組の悪いとこ出た」を繰り返し使用しています。

松本人志のコメントの打率は10割と信じていたし、常に驚く角度からのコメントが飛び出すと期待していたけれど、「BPO」というフレーズが出るたびに少しがっかりして、一歩退いた立場からコメントするようになったのかと落胆します。

本当にBPOからの介入に怯えているならスタッフに伝えるだろうけれど、そんなことはしていないだろうから、ウケるフレーズとして使っていると思われ、この見方が落胆を加速させもします、、、。

水曜日のダウンタウン」という最前線の番組に出演しながらも、松本人志の立ち位置は一歩下がったところにあります。

同じような立ち位置にいるのが、Zeebraです。

かつて、adidasばっかり着ていることを茶化した爆笑問題を呼びつけ、フロウを真似されたと言って降谷建志を「公開処刑」するなど、新しい才能に対してイラついていた2人でしたが、松本人志は出演番組に対して手綱を引くコメントをし、ジブラは般若が出てくると涙ぐんでいます。

2人ともプレーヤーではなく、プロデューサーになったのです。

松本人志は、大喜利の「IPPON グランプリ」、笑わせあう「ドキュメンタル」という場を作り、ジブラは地上波のテレビ番組「フリースタイルダンジョン」、ラジオ局「WREP」という場を作りました。

「ドキュメンタル」でモニターを見ている時の松本人志と「フリースタイル・ダンジ4ョン」で対戦を見ているジブラは同じ表情をしています。

松本人志とジブラの肩書について、これまで通り「お笑い芸人」と「ラッパー」として捉えると活動との齟齬が生じるので、「プロデューサー」として捉えるようになりました。

松本人志の最近の活動は、「ドキュメンタル」「IPPONグランプリ」をはじめとして一歩下がった立ち位置のものばかりです。

「クレイジー・ジャーニー」のMCはタブーに挑んできた実績を買われての起用でしょうが、実際は1人でJRの切符も買えないし、一人旅もできないほどでクレイジーとは最も遠い場所にいます。

ワイドナショー」も安倍総理が出演して喜んでいて、政治家になりたがっていると浜田雅功を揶揄していますが、松本の方が近いのではないかと察します。選挙にはでなくとも、何かの審議会委員の委嘱が来ればすぐに引き受けそうにも思う。

ガキの使いやあらへんで」の「笑ってはいけない」シリーズなどは、受け身の立場での出演です。お笑い番組としては優れているけれど、それは筋肉や老化などで笑われることを良しとしたわけであり、松本自身が笑わせには行っていません。

ダウンタウンDX」や「水曜日のダウンタウン」でのコメントは手癖でやっているように見えます。
ガキの使い」のフリートークは面白いけれど、漫才やコントとしての面白さではありません。3分、4分の緊張感ではなく、30分与えられていることによる「余裕」から来る面白さです。

ジブラときたら、DJ DIRTYKRATESを名乗り「フリースタイル・ダンジョン」から派生した「Dungeon Monsters」のバックDJを務める始末。RAU DEFなどにゲスト参加することはあれど、単独名義の音源は13年リリースが最後で、「Grateful Days」の盛り上がりを取り戻せてはいません。

M-1グランプリキングオブコント、ドキュメンタルやフリースタイルダンジョンンの出場者には、売れてやろう、一旗揚げてやろうという野心があります。その野心が大会や番組に緊張感を生み、視聴者を引き付けています。

今の松本人志とジブラは「余裕」を手にいれており、そこに「野心」はありません。勝ちしか許されない状況下でわざわざ負けに行く理由もないし、負けるくらいならプロデューサーでいる方を選ぶのは当然の流れです。

寿命が長くなってきているお笑い芸人やラッパーにとってのロールモデルになっているけれど、過去の威光を引きずっているだけとも言えます。

反骨の象徴であった松本人志とジブラが権威になってしまい、退屈に映ります。

引退して、その分野のプロデューサーになるのは、運動系の流れです。スポーツなら監督になるし、格闘家なら猪木や前田日明高田延彦のように大会を主催する側にまわりだします。

一方で、小説家や映画監督、ミュージシャンは現役でい続けることが可能です。

本来であれば、お笑いとラップは現役であり続けることが可能であるはずなのに、松本人志とジブラがプロデューサーに寄っていったのが残念でなりません。

一方で、松本人志とジブラが新しい場を作り、若手がフックアップされ、シーンが面白くなってるのは事実であり、、、。現役とプロデューサーのどちらになって欲しいのか折り合いをつけることが出来ていません。

とはいえ、2人の立ち位置が退屈なのはつまんらんのです。

ジブラはソロの人になっているから期待はないけれど、松本人志については浜田雅功が発火させるんじゃないかという期待を捨てきれずにいます。