テレビやラジオで流れる曲の歌詞への不満

朝食の時にかけていたラジオのパーソナリティが紹介したのはmiwaの「春になったら」(11年2月リリース)。

「予定 〜福島に帰ったら〜 」のように、春になったらこういうことをしたいっていう歌なんだろうなと思ったら、彼氏からのメールや電話で元気になったという内容で、そんなの季節関係ないじゃんと思って気持ち悪くなりました。
miwaにしたって36歳子持ちのオッサンに向けて歌ってはないだろうけれど、若い女の子は年中欲情してるってことなんですか?
結局「君に会いたい」「君のことが好き」という歌詞ばかりで、それしか言うことないのかとうんざりします。

昨年末に、平井堅「ノンフィクション」をテレビで見た時も同じことを思いました。

描いた夢は叶わないことの方が多い
優れた人を羨んでは自分が嫌になる

浅い眠りに押しつぶされそうな夜もある
優しい隣人が陰で牙を剥いていたり

惰性で見てたテレビ消すみたいに
生きることを時々やめたくなる

人生は苦痛ですか?成功が全てですか?

 ここまでは良かったし、なんならCD買おうかと思わせられました。しかし、この曲は

僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ
みすぼらしくていいから 欲まみれでもいいから
僕はあなたの あなたの 本当を知りたいから
響き消える笑い声 一人歩く曇り道
僕はあなたに あなたに ただ 会いたいだけ

と続いて1番が終わります。歌唱力を担保にして適当に歌詞を終わらせすぎています。絶唱熱唱すれば良いと思ってるんでしょうか。


最近、Mr.Childrenへの熱が低下しているのは、いつまでたっても「か弱き青年」から抜けない歌詞を綴っているからです。

名前もない路上で
ヒッチハイクしている
膝を抱えて待ってる

05年にリリースされた「四次元 Four Dimensions」に収録された「未来」について、石井恵梨子さんが「SPA!」で「35歳にもなって路上で膝を抱えてるってどういうこと?」という内容のレビューを書いていました。

自分が20代半ばだったので気にならなかったけれど、それから10年以上も同じスタンスでいられると、距離ができてしまいます(「himawari」のカップリング「忙しい僕ら」のような曲をもっと押し出してほしい)。

「フリースタイル・ダンジョン」の放送を毎週楽しみにしている理由のひとつは、常套句に対して厳しく、本心かどうかや生き方をお互いに問うているからです。
俺の方が凄い、適当なこと言ってんじゃねーよ、それは本心か、どっかで聞いたことあるフレーズだ、即興じゃねぇだろ、、、等々。
18年2月20日放送回では、pekoが「俺はお前をグサっと刺す」と言ったことに対して輪入道が「刺せ!オラ刺せ!出来ねえなら言うなよ。オイ刺せ!早く刺せ!出来ねえなら言うなよバカ」と返していました。
「言葉で刺す」という比喩なのを分かったうえで、そんな使い古された表現は認めねぇぞと輪入道は「刃物で刺す」にすり替えてpekoに迫っていました。
ミュージシャンや作詞家の皆さんには、こういうやり取りを自分の中で起こしたうえで、歌詞を発表して欲しいとつくづく思います。

miwa「春になったら」に対しては「彼氏のことばかり考えて欲情してないで受験なり期末試験がんばれよ」と言いたくなるし、平井堅「ノンフィクション」に対しては45歳過ぎてウダウダいってねぇで電話かけるなり押しかけるなりして会いに行けよと言いたくなるし、ミスチル「未来」に対しては、「預金残高9桁10桁あるんだろうから路上でヒッチハイクしてないでヘリでもプライベートジェットでも呼べよ」と言いたくなります。

(「ノンフィクション」は自殺した友にむけた曲であるという主旨のリプライがきました。ファンなら制作意図まで知ろうとしてくれますが、一見さんの私からしたら、裏にどんな状況があろうとアウトプットが平凡なら平凡な楽曲と思うだけです。「友達死んだのか、ならCD買うよ」とはなりません。)

CDが売れない状況下で色々手を尽くそうとしているゴールデンボンバー鬼龍院に「現代ビジネス」が注目するのはいいのですが、売り出し方を考えに考え抜いていたとしても、歌っている内容が「君が好きだ」「君に会いたい」から脱け出せないなら、生活に入り込んできて駅のホームで流れたとしてもノイズになるだけで、逆プロモーションにしかなりません。

星野源「恋」の凄さは、「恋」というタイトルなのに「当たり前を変えながら」「夫婦を超えてゆけ」「二人を超えてゆけ」「一人を超えてゆけ」と歌うところです。
「恋」と聞けば結婚前の出会って間もない関係の二人のことかと思いきや、すでに夫婦となっている二人の歌だとわかり、更に夫婦や二人を超えて、結局は一人であることも超えてゆことを鼓舞しています。どんどん聞き手の予想を裏切っていくのです。

Kendric Lamarのライブでシンガロングが起きるのは、Kendric Lamarの歌詞が求められているためです。「DAMN.」のCDについてた和訳を読んだけれど言葉数が多く、内容も「君に会いたい」とはかけ離れたものばかり。

CDが売れないのは色々要素があるんだろうけど、テレビから流れてきて耳にした際に欲しいと思わせる楽曲が少なくなっているという一面もあるはずです。Suchmos「STAY TUNE」がヒットしたのは欲しいと思わせる曲だったからです。

リリースの情報は雑誌やネットで入手しているから、「関ジャム」で紹介されたのがきっかけで気になったり買ったりしたアーティストや曲はあれど、歌番組やCM、ラジオきっかけでそう思わせられた曲は何年もないです。

歌番組にはテロップで歌詞が出るのだから、ダンスがんばるのもいいけど、私まで届く歌詞を書いて欲しいと思う。

御託はうんざり 言い訳は聞き飽きてるんだ
僕らは歌詞がほとんど同じ歌に飽き飽きしてるんだ
じゃなきゃ売れない?
「翼を広げず瞳を閉じずに桜が舞わずに君の名を呼ばずに」
過去を消すために生きてるんじゃない
未来をつくるために生きてるんだ

The Mirraz「NEW WORLD」