池上彰、竹内政明『書く力 私たちはこうして文章を磨いた』
『情報を活かす力』『学び続ける力』『伝える力』『見通す力』など「○○力」というタイトルの書籍を出版し続ける池上彰さん(「○○力」でいうと齋藤孝先生が最も多いですよね)。
読売新聞の一面コラム「編集手帳」を2001年から担当されている竹内政明さん。
このお二方による、文章の書き方指南書が本書『書く力』です。お互いが文章を書くときに気をつけていることを披露しあう形式ではありません。
四章から構成されており、章によっては対等に自分が気に入っている文章を紹介しあったりもしていますが、大半は池上さんが聴き手となり、竹内さんが過去に書いた文章を取り上げながら、心がけていることや文章上の工夫を深掘りしていく内容になっています。
第一章 構成の秘密
第二章 本当に伝わる「表現」とは
第三章 名文でリズムを学ぶ
第四章 悪文退治
途中途中で他の方の書いた文章術の書籍との内容のリンクがありました。私は他の書籍の内容とリンクすると、書いてある内容が補強されたように捉えています。異口同音に言われているということは、間違いないんだ、と。保険のような感じです。
池上
「記事の部品になりそうなものを」をとにかく挙げていく。
(中略)
このようにして、「書くべき要素」を、まず書き出してしまう。全体の構成は、自分で書きだしたその要素を眺めたり、何度も読み返したりしながら、全体の流れが通るようにしていくというわけです。
という池上さんの発言。
唐木元さんの『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング』にも同様のことが書いてありました。
続いても池上さんの発言です。
池上
「それは無茶振りだ」と思われるかもしれませんが、私は、「なんでもいいから書いてみる」ということをおすすめしたいですね。そのテーマが世間的に意義があるのかどうかも、内容としてまとまっているかどうかも、とりあえず置いておき、パソコンの電源を入れて、文字を置いてみる。
そうすることで、自分の考えがまとまってくるんですね。実際に文字にすると、自分でそれを客観的に「読む」ことができるようになる。つまり、自分と自分で対話ができるようになるんです。
「作家・はあちゅう」さんの『言葉を使いこなして人生を変える』にも同様のことが書いてありました。
私、先輩作家さんの言っていた、
「たまにいい文章を書く人ではなく、とにかく、毎日書き続けられる人が勝ち残る」
という言葉を信じていて、書くことがない日に書けるのが作家だと思っているから、毎日が修行だと思って書いています。
とりあえず、何か一行書けば、次の一行は書ける。
引用したのはいずれも池上さんの発言だったので、竹内さんの発言で感心したことを引用します。
知識があるだけでは面白い文章は書けませんが、面白い文章を書くのに知識は間違いなく役に立つんですよね。
気に入った言葉を一つでも原稿に入れるなり、入れないまでも頭に浮かべて文章を書くようになると、その部分だけでなくて、文章全体をちょっと洒落たものにしないといけない気がしてくるんです。
(中略)
いい言葉を一つでも仕入れると、その前後がいかにも駄文というのは、具合が悪く感じられる。一つのいい言葉を活かすために、他の部分の表現も自然と工夫するようになる。こうして文章全体のレベルが上がっていくんです。
余談ですが、竹内さんの執筆する「編集手帳」について気になっていることを。
『本の雑誌』06年5月号に掲載された「坪内祐三の本日記」に以下の記述がありました(『書中日記』から引用)。
2月20日(月)
(前略)続いて読売新聞を読む。同紙一面のコラム「編集手帳」は朝日新聞の「天声人語」よりもずっとコラムらしい読みごたえがあるのだが、今日のテーマはイギリスの経済誌『エコノミスト』の編集長ビル・エモットの新著で、「近ごろ邦訳が出版された『日はまた昇る』である」。ふむふむ、どうやら素晴らしい本らしい……。と思いつつ、新聞をがばっと開くと、第二面の下に、その『日はまた昇る』(草思社)の巨大な広告が。ようするにパブ・コラムだったわけ?
実際のコラムの内容を確認しようと、06年8月に発売された『読売新聞 朝刊一面コラム「編集手帳」〈第10集〉 』(中公新書)を書店で手に取ったら、この日付のコラムが収録されていませんでした。
収録されていないということは、やっぱり「パブ・コラム」(広告タイアップ・コラム)だったの?ともやもやし、今も忘れられずにいます。実際のところは、どうだったんでしょうか?