たなか亜希夫「リバーエンド・カフェ」
もともと1年に1冊のペースでしか単行本が刊行されなかった「リバースエッジ大川端探偵社」。原作者の逝去に伴い、いよいよ新刊の出版が不透明になった日々を過ごしていたところ、「リバーエンド・カフェ」という新刊を手にしました。
作者は「リバースエッジ大川端探偵社」の作画を担当していた、たなか亜希夫。
「リバーエンド・カフェ」を読むと、先行作である「リバースエッジ大川端探偵社」との共通点や変化に気づきます。
30後半~40前半くらいの男とギャル(女子高生)という関係性や不思議な謎解きは共通しています。
タイトルが「リバースエッジ(川の端)」から「リバーエンド(河の終わり)」に変わり、拠点が探偵社からカフェに変わり、主人公が探偵から女子高生に変わりました。
「リバースエッジ大川端探偵社」は依頼人が訪ねてくるところから始まり、「リバーエンド・カフェ」は客が喫茶店「リバーエンド・カフェ」に来訪するところから始まります。
「リバースエッジ大川端探偵社」は客の依頼を解決していましたが、「リバーエンド・カフェ」の場合、店主と主人公が客の人生に関わらないこともあります。
「リバースエッジ大川端探偵社」はどのエピソードも1話完結であったため、起承転結でいえば「転」がなく、「起承結」で終わっていました。主人公・村木が敏腕だからあっさり解決するんだと納得させようとしても、探偵としての活躍が少なく、次第に影が薄くなっていきました。
「リバーエンド・カフェ」はエピソードのスケール感によりページ数が多く割かれるため、物語も大きく動いていきます。
「リバーエンド・カフェ」の主人公・入江サキは、高校で陰湿なイジメにあい、震災で両親を亡くし(作品の舞台は現在の石巻)、PTSDを抱え、両親の死去による保険金を情夫に渡す叔母と生活しています。
喫茶店の店主との出会いによりサキの生活に張りが生まれていきますが、高校でのイジメ、PTSDが解決するまでには時間がかかりそうです。
ひじかた憂峰のハード・ボイルド感と、たなか亜希夫のエモーショナルが融合した「リバーエンド・カフェ」が傑作になっていくことを期待しています。
傑作と認定されたり、ランキングに入ったりしなくとも、現時点ですげー面白いから、巻数を重ねる前に読むことをお薦めします。
余談ですが、主人公サキの通学カバンには「BECK」に登場した継ぎ接ぎの犬・ベック、「RiN」に登場した予言を残していくカラスの着ぐるみを着たような人物・ヤッサンのキーホルダーが付いています。「BECK」「RiN」ともにハロルド作石作品であり、たなか亜希夫とハロルド作石の交友関係を知らなかったため、出版社の垣根を越えて過去の作品のキャラクターが登場したことは嬉しい驚きでした。
07年12月 「リバースエッジ大川端探偵社」連載開始
16年10月08日 「リバースエッジ大川端探偵社」8巻発売
17年07月 「リバーエンド・カフェ」連載開始
17年11月29日 「リバースエッジ大川端探偵社」9巻発売
18年01月07日 「リバースエッジ大川端探偵社」原作者、ひじかた憂峰、死去
18年09月28日 「リバーエンド・カフェ」1、2巻同時発売