「99人の壁」の面白さと突破する条件
「テレビブロス」が月刊化した最初の号かなんかに載っていた“てれびのスキマ”さんの原稿でその存在を知った「超逆境クイズバトル!! 99人の壁」という新しいクイズ番組。
不定期放送であり、毎日ラテ欄をチェックすることもないので、放送終了後に番組の放送を知ることもあり、なかなか見ることができずにいました。
10月21日(土)にレギュラー化を知り、その日の夜の放送を早速録画しました。
その日は出かける用事があり、翌日の夜にどんな感じかを知ろうと見始めたら、2時間見通してしまいました。一瞬も飽きることなく、早くも来週を楽しみにしています。
1.「99人の壁」概要
- 出演者は25人×4ブロック=計100人
- 出演者100人のうち、1人がチャレンジャーとなり、自分の得意ジャンルの問題に答える
- チャレンジャー以外の99人はブロッカーとなり、チャレンジャーが正解するのを防ぐ
- 1問勝ち抜くごとに1ブロックずつブロッカーが増えていく
- ブロッカーの人数は、1問目25人、2問目50人、3問目75人、4問目99人、5問目99人
- 5問正解すると賞金100万円
- 問題は早押しか、チャレンジャーとブロッカーが交互に答えていく形式
- チャレンジャーをブロックしたブロッカーが次のチャレンジャー
- ブロッカーとして正解すると自分が次のチャレンジャーになれることがブロッカーのモチベーションの1つ。他のモチベーションとしては「チャレンジャーを阻止したい」「わかったら答えたい」という根源的な理由が考えられる。
2.10月21日放送の概要
○ ジャンル
「藤井聡太」「ハリー・ポッター」「サメ」「ボクシング」「偉人の墓」「フィリピン」「古畑任三郎」「佐藤二朗」「武田鉄矢」「アフリカ音楽」「80年代音楽」「ONE PIECE」
○ チャレンジャーの敗因理由
(1)11歳、男子、小学5年生
① ジャンル「サメ」
② 敗因の分析
早押しクイズで「今年公開され大ヒットしたサメ映画、、、」と問題が最後まで読まれていない段階でブロッカーが押し、「MEG」と答えて不正解。これを受けてチャレンジャーが「MEG ザ・モンスター」と映画の正式タイトルを答えたが、同じく不正解。
「今年公開され大ヒットしたサメ映画「MEG ザ・モンスター」にも登場する全長23メートルという巨大なサメの種類は何?」というのが問題の全文でした。
本人は正解(メガロドン)を知っていたものの、ブロッカーが答えたことから焦ってしまったのが敗因。
「○○といえば××ですが、△△は何でしょう?」と二段階あるのが定番です。
サメの種類を50はそらで言えるほどの知識がありながら、壁からのプレッシャーに気持ちの余裕がなくなり焦ってしまい、問題を最後まで聞かない段階で押し、敗退してしまいました。
(2)41歳、男性、国語教師
①ジャンル「偉人の墓」
②敗因の分析
外国のお墓の写真を見てそれがベーブルースの墓であるとわかるチャレンジャー。「偉人の墓」というマニアックなジャンルが幸いし、最終5問目まで進みました。
5問目の問題は「大河ドラマ「西郷どん」では石橋蓮司が演じた書家で沖永良部島で西郷隆盛と出会い西郷のお墓の文字を書いたのは誰?」。
チャレンジャーはボタンを押すことができず、「西郷どん」を毎週見ているというブロッカーが「川口雪蓬」と正解を答えました。
チャレンジャーは「西郷どん」を見ていないそうです。
(3)15歳、女性、高校1年生
①ジャンル「佐藤二朗」
②敗因の分析
ジャンル名の札に「佐藤二朗」とあったため、MC佐藤二朗からの指名でチャレンジャーとなる。
3問目、佐藤二朗の子供が妻に言った一言は何かという問題をブロッカーに早押しで負け、敗退してしまいました。
佐藤二朗のツイートからの出題というのを聞いて、佐藤二朗のツイートが面白いとちょっと前に話題になっていたことを思い出しました。佐藤二朗のファンはチャレンジャーしかいないとしても、ツイートがネットニュースに拾われ、世間に知られることはしょっちゅう起こっていることです。
(4)36歳、男性、フリーター
①ジャンル「アフリカ音楽」
②敗因の分析
「アフリカ音楽」という「偉人の墓」に次ぐエアポケットのようなジャンルだったため、するすると正解したチャレンジャーでしたが、最終問題へたどり着く前に敗退。
「北島三郎の「与作」にも使われているというアフリカ音楽の栄光を受けたロバのアゴの骨で作る楽器はなに?
北島三郎ファンなのか、演歌ファンなのか、早押しに勝ち「キハーダ」を正解したブロッカーに阻まれました。
(5)34歳、男性、会社員
①ジャンル「ONE PIECE」
②敗因の分析
尾田栄一郎による大ヒットしているマンガ「ONE PIECE」ファンで、フジテレビのワンピースクイズ大会で全国1位となり、「ONE PIECE」のファンブックにも関わっているチャレンジャー。
100万円の使い道は「ONE PIECE」掲載誌の「週刊少年ジャンプ」(約1,000冊!)や単行本、関連書籍を全て所有しているため家の床が抜けそうになっているので増築か書庫の建設費用。
1、2問目を難なくこなし、3問目はビジュアルクイズ。「ナミの向かって左隣にいるこの人物は誰?」という問題で、正解は「安室奈美恵」。得意ジャンル「安室奈美恵」のブロッカーも壁の一人でしたが、押すのが早く正解しました。
「「ワンピース歌舞伎」の主演は誰?」という問題を挟み、最終5問目。
「2010年1月号の表紙をルフィが飾り、これが創刊以来初の「漫画キャラによる表紙」となった男性向けファッション雑誌は何?
チャレンジャーが「2010年」「創刊の」というワードで2010年の少年ジャンプの表紙が頭の中に並んで週刊少年ジャンプのこととして問題を聞いている間に、ブロッカーが「MEN’S NON-NO」と正解してチャレンジャーを阻止。
井森美幸さんが「たくさん情報を持っているとそれを整理する時間がかかるんですね」と秀逸なコメントをしていました。
3.「99人の壁」の面白さと「99人の壁」を突破する条件
99人いると知識が集積され、チャレンジャーが得意とするジャンルとの接点も多くなります。
ジャンル「偉人のお墓」で「この偉人の墓地はどこにある?」という問題。ブロッカーの1人が自分の家のお墓が同じ霊園にあると正解を答えていました。
「偉人の墓」に関心なくても、毎週見ている大河ドラマの登場人物の名前なら答えることができます。
マンガ「ONE PIECE」を読んでいなくても、主題歌起用が縁になり安室奈美恵がワンピースのアニメの世界に入れば安室奈美恵ファンも「ONE PIECE」との接点が生まれます。
問題の難易度が高すぎないところにも面白さがあります。最終問題であっても、重箱の隅をほじくるような難しさはありません。
チャレンジャーは好きなジャンルのことどんどん掘り下げているため、チャレンジャー自身が問題の敷居をあげ、難しく考えすぎている傾向もみてとれます。
チャレンジャーは敗退した問題の正解を知っていても、壁である99人に先に正解を出されたり、99人が壁となっていることで焦らされ自分の知識が渋滞を起こして負けてしまいます。
99人の壁を突破するために重要なのは、問題を正解する知識を持ち合わせていることを前提としたうえで「プレッシャーに負けずリラックスして臨むこと」「早押しに勝つこと」の2点です。
クイズ番組は宮崎美子が答えをわかっているのに「わかんない~」って前フリするのが嫌いだし、勉強嫌いでお笑いの道に進んだであろう芸人がクイズ番組のだめに教科書とか参考書で勉強してるであろうことが滑稽で全く見ないのですが、「99人の壁」は芸能人も素人と同列でいるし、素人の面白さが出ているから良い。
文章にしにくいから深い言及はできないけれど、2時間飽きさせないのはこの番組の「テンポの良さ」に起因していると思う。早押しというフォーマットもあるし、素人メインだから全員に見せ場を作る必要もないし、小学生以外は勝手にしゃべらないし。
こなれた芸人司会なら素人をいじりにいったり、フリーアナウンサー司会ならトントン進みすぎたりしてしまうところですが、素人を緊張させない佐藤二朗が司会することで小学生が勝手にしゃべりだし息抜きの瞬間を生んでいます。
深夜番組がゴールデンに昇格した途端、半年で終了という前例はありますが「100ジャンル×5問=500問」というクイズ作家の労力に見合うためにもゴールデンで続いていってほしい。
面白いことを考える人もいるもんだとスタッフロールを確認したら「水曜日のダウンタウン」にも関わっている矢野了平さんの名前が。番組の趣旨を理解し、難易度の塩梅がちょうどいいクイズを作るには最適な人選。
対談 藤井健太郎×矢野了平(PART1) | QUIZ JAPAN
自分にとっての得意ジャンルは何かと考えてしまいます。
「ダウンタウン」と「バナナマン」なら何とかなるかもしれません。
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過去の特番に出演したことのある能町みね子さんの的確すぎる分析がネットニュースの記事になっていたので、引用します。
漫画家の久保ミツロウ、コラムニストの能町みね子、音楽プロデューサーのヒャダインによるトークイベント『久保みねヒャダこじらせライブ VOL.7』が4月28日、東京・フジテレビ湾岸スタジオで行われた。
(中略)
能町がフジのクイズ特番『超逆境クイズバトル!! 99人の壁・春の乱』(4月5日放送)に出演し、人生初の"CMまたぎ"をしたことを報告。「あそこで視聴率上がったのか下がったのか知りたい!」と気になる様子だ。
『99人の壁』は、自身の得意ジャンルで最大99人の「ブロッカー」とクイズで対決し、5問連続正解で100万円が獲得できるというルールだが、「稀勢の里」で挑んだ能町は2問目で敗退し、「『稀勢の里』っていうジャンルは、今思えば若干選択ミス」と反省。「狭すぎて問題が作りづらいので、結果わりと簡単な問題になっちゃうんですよ」と、『99人の壁』の難しさを説明した。
答えられなかった2問目は、問題文が「稀勢の里が龍ケ崎市立長山中学校で…」まで読み上げられた時点で先に正解されてしまったが、能町は「私は稀勢の里の中学校時代のことすごい知ってるから、絞りきれないんですよ」と、知識量が仇になってしまったそう。問題文の続きは「部活は何部だったか」というもので正解は「野球部」だったが、能町は「私は合唱で指揮をしたのも知ってるし、野球部なのに相撲大会に出て優勝したのも知ってるし、いろいろあるから…」と戦略ミスを惜しんだ。
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「テレビブロス」6月号(4月25日発売)がまだ自宅にあったので、当該記事を確認しました。
「てれびのスキマ新連載スタートスペシャル」と煽りのついた「番組表がないテレビ誌の進むべき道」というタイトルでした。この記事の結論は忘れましたが、「99人の壁」に触れた箇所だけ覚えていました。
「ラ・テ欄読み」を続けてきた結果、大好きになるような番組のほとんどは、初回放送はもちろん、パイロット版からしっかり見ることができているのだ。直近でいえば『超逆境クイズバトル!!99人の壁』(フジテレビ系)の光り輝きようったらなかった。昨年末に第1回が放送され、好評を受け4月に第2弾が放送されたクイズ番組である。初回は大晦日の午前中という埋もれがちな時間帯だったが、僕はチャンネルを合わせる手を止められなかった。
(中略)
斬新でよくできたシステムと、不慣れながらも「司会役」をまっとうした佐藤が噛み合い、想像通りの面白さに。
今読み返すと「チャンネルを合わせる手を止められなかった」が褒め言葉になっているのか疑問はあるし、「想像通りの面白さ」という上からの目線も気になりますが、半年前の私は、面白さを伝えたい気持ちを確かに受けとりました。
だからこそ、私はブロスで記事を読んでから半年近くも「99人の壁」という番組名を忘れることがなかったのでしょう。
突破は難しいかとおもったけど、翌月には2週続けて突破されていました。
それでもなお面白いという内容のブログも書きました。