最近の『テレビブロス』から

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雑誌の売り上げが下がっているようですね。でも、雑誌、読んだほうがいいと思います。

最近ローンチされた『文春オンライン』は「週刊文春のスクープ記事が読める」ことを売りのひとつにしていますけれど、文春オンラインに転載されない記事は連載を中心にたくさんあるから「週刊文春」本誌も適当な周期で買えばいいと思います。

週刊文春」に限らず、雑誌に載った原稿がもれなく単行本化するなら雑誌を買う必要はないけれど、単行本化されず雑誌に載って終わりということは頻繁にあります。

たとえば、ロッキング・オン社の『ロッキング・オン・ジャパン』や『BUZZ』などに載った宇野維正さん、兵庫慎司さんらの原稿。山崎洋一郎さんの「激刊!山崎」は2冊の単行本にまとまりましたが、コラムやレビューの原稿を読むにはブックオフやネットからサルベージする必要があります。

ということもあるし、雑誌の面白さが語られなさすぎるんじゃないかと思う面もあるので、興味深かった雑誌の記事を紹介します。サブカル中年なので、「テレビブロス」から。

  

< 狩野有里「タトゥーにして彫りたい」(1/14号)>

 狩野有里さんのことは存じ上げないのですが、ミュージシャンへのインタビューページの隣、新譜レビューの下に載っていた枠に目が留まりました。

完熟食べごろ魅惑の28歳なのに結婚しそうな気配は皆無です。「ラッパーの彼氏がいるじゃん!」って声が「タトゥ彫り」マニアから聞こえてきそうだけど、最近登場してないことからお察しのとおり、自然的にお付き合いを解消いたしました。

(中略)

そもそも何万回も言っていますが付き合い始めて3年後に突然ラッパーに転身した彼氏をどう扱えってんですか。

そしてラッパーの彼氏の情報が小出しにされていきます。

・ラッパーの彼氏が組んでいるラップグループが最初のCDを出したときに、彼らのインタビューとこの連載が奇跡的にブロスの紙面で隣り合わせになった

・ラッパーの彼氏は乃木坂46とも仕事したとかしないとかレベルの映像ディレクターでもある

「青春ゾンビ」読んでるのだから何となく察せればいいんだけど、なんにもなれなくて、検索ばかりうまくなってしまったのは私も同じで、EMCの人だったのか!と辿り着けました。

その後、2月11日号でも以下のように書いていました。売れると掃蕩の妻(彼女)を切り離すのは世の常です。

鬱々とした気持ちを抱えていると、とんでもないニュースが飛び込んできた。バカリズム原案の面白げなドラマ『住住』の主題歌決定の報。歌っているのが本連載おなじみ“ラッパーの彼氏”改め“ラッパーの元彼”のグループだというのだ。前号であれだけ恨み、妬みを書き連ねた罰か。

 

< てれびのスキマ/「てれび30年のスキマ あのころのテレビ’02年」(1/14号)>

またW杯の真っ最中、テレビ(誌)界は巨星を失った。ナンシー関が39歳の若さで亡くなったのだ。創刊期に彼女の連載を掲載していた本誌でも急遽、7月6日号で追悼特集を組み、豊崎由美は「ナンシー関に書かれて、人は初めてテレビの住民になれる」とコラムを寄せている。ナンシー関の登場以前と以後でテレビの見方は劇的に変化したと言われるし、いまだに「もしナンシーがいたらなんと言っただろう」と常套句のように使われる。もちろん、それは彼女の偉大さの証だが、僕らのようなテレビのことを書いているライターの不甲斐なさもあらわしている。もういい加減、彼女の言葉に頼るのはやめようと思うのだが、追悼特集で抜粋された彼女の批評はいまなお鮮烈で鋭く響き続けている。

こういう振り返り企画でなければ、てれびのスキマさんが自分の不甲斐なさについて書くことはなかったように思う。てれびのスキマさんが製作者のインタビューを重ねているのは、ナンシー関をとは違う立ち位置を考えた末の行動だと思っています。

 

< 清水富美加「いざ‼おにぎりの中へ‼」(2/11号)>

「吉夢を見ました。マジ地球‼」「そして私は悟りを開くのです。夢の中で。自分は常に受け手であるのだ、と。すべてを地球から受け取っているだけの存在に過ぎないのだ、と」という文章を2月11日の夜に読んだ時は窪塚洋介の「ピースな愛のバイブスでポジティブな感じでお願いしますよ」とか中尾明慶仲里依紗の「BIG LOVE」のようなことかと思っていたけれど、翌日の朝には全く違う読み方をされるようになってしまったことが悲しくて寂しい。

出演作リストを見てもいまいちパッとせず、これからだと思っていました。いや、思っています。

「仕事を綺麗にしてから引退すればいいのに」とか「迷惑をこうむる人が大勢いるのに」と和田アキ子カンニング竹山やLilicoが偉そうに言ってるようですけど、逃げたいときは逃げるしかないし、逃げればいいんですよ。23歳だし、いくらでもやり直しがききます。元気になったら謝って、復活すればいいんですよ。

安倍首相だって、お腹痛いとかそんな理由で総理大臣を辞めて、今また総理を務めているわけだし。平気平気。

 

< 大根仁「中春スケッチブック」(2/11号)>

『群像』17年3月号に寄稿した「私のベスト3 映画史上ベストカップル」というコラム。

ベスト3に挙げられた3作品はライアン・ゴズリングエマ・ストーンの『ラブ・アゲイン』(2011)、『L.A.ギャングストーリー』(2013)、『ラ・ラ・ランド』(2016)。

2月11日号でも映画『ラ・ラ・ランド』が取り上げられ、『ラブ・アゲイン』『L.A.ギャングストーリー』にも触れられていました。「群像」はランキングという枠がありましたが、ブロスのほうでは時系列でつづられているところに、コラムニストとしての大根仁さんの技術を見ました。

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こだま『夫のちんぽが入らない』

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明るい場所へ続く道が

明るいとは限らないんだ

出口はどこだ 入口ばっか

深い森を走った

 

足がちぎれても

義足でも

どこまでも

走れメロス

――  宇多田ヒカル「忘却ft.KOHH」

 

悩んだ末に出た答えなら15点でも正しい

――  Mr.Children「CENTER OF UNIVERSE」

 

読みかけのまま別のことをしている時、読み終わった時に浮かんだ2曲の歌詞を引用して私の感想とさせていただきたい。

、、、いただきたいが、2017年を象徴していく作品の感想を引用に頼るわけにはいきませんので、少し。

 

ceroが14年12月にリリースしたEP『Orphans/夜去』。

収録されている「Orphans」は同人誌に掲載された「夫のちんぽが入らない」がモチーフになっているということがインタビューで語られていました。

 高城 オレが好きなブロガーの方が、ミニコミに寄稿した「夫のちんぽが入らない」っていうエッセイがあるのね。彼女は不思議なめぐり合わせで男性と結婚したんだけど、その夫のチンポがどうしても入らない。そして、一時期、自棄になって出会い系サイトで知り合ったひととやりまくって、どうでもいいやつのチンポは入るのに、運命的に出会った夫のチンポだけは入らないのはどういうこと? みたいに悩む話で、そのエッセイの締めが「私たちが本当は血の繋がった兄妹で、間違いを起こさないように神様が細工したとしか思えないのです」っていう文章なの。オレはそれにガッツーンときて、泣けて泣けて。そのブロガーの方に「僕はこれを歌にします!」っていう熱いDMを送ったりして。

 

――では、やはり、そのエッセイもモチーフのひとつではあるんだね。

 

高城 はい。「Orphans」に関してはニュースではなく、そういう、個人的体験を書いたエッセイがいちばんの源になっていますね。

 (16年2月にリニューアルされた『Quick Japan』124号から、こだま「Orphans」という連載がはじまっています)

読み終えて、印象に残る場面は、大学進学のためアパートに入居する日の出来事です。

 私は入居した日に最初に声を掛けてくれた青年と、のちに結婚することになる。

その人は同じアパートの住人だった。

入居した日にカラーボックス作りを手伝ってくれて、教科書を何冊も譲ってくれた青年は、その日23時をすぎても主人公の部屋でくつろいでいました。

まるで太田光代の家にもぐりこんだ太田光のようです。

印象に残る言葉は、夫が主人公について語る言葉、主人公はどういう人間であるのかを夫が評している言葉です。2ヶ所出てきますが、その引用は避けます。主人公がとても大切にしていると思わせる言葉です。

 

妊娠できるのは当たり前のことではないのに、子どもがいないことは気の毒に思われてしまいます。

「子どもがいないことが気の毒なこと」という空気が漂う中で、子どもを持たない事を選んでいる夫婦があります。この空気が自分のなかにもあることに気づいてドキッとします。

結婚していない理由は巡りあわせが悪い、という理由に収束されるけれど、結婚している夫婦に子供がいない理由はいくらだってあります。夫婦関係がギクシャクしてるなら離婚してるでしょうし。

自分以外の夫婦が子どもを持つかどうかについては、何をどう思おうと、立ち入ってはいけないことです。

結婚すると「子どもはまだか?」と聞かれます。私個人が言われる分には社交辞令として受け止められたので苦痛ではなかったけれど、夫婦のなかで決断をくだした後でも言われることがあります。

ジャネット・ジャクソンが50歳で妊娠したそうだから、恐らく50歳までは出産しないのか?と聞かれることを覚悟しなければいけない世の中になっています。

 

この本の軸は2本あります。

ひとつは題名にあるとおり、ちんぽが入らない夫との関係であり、もうひとつは他者との関係。

夫婦は教職についており、2人とも真剣に目の前のこどもたちと向き合おうとします。

妻はこどもと関係を築けず心を崩し、夫は同僚のなかで浮いてしまい心を崩します。心を崩してなお、向き合い方が足りなかったと妻は嘆きます。

2本の軸に共通して、理想通りの、教科書通りの生き方をできないため、自分に欠陥があると主人公は悲観にくれます。その悲観は解消していないけれど、欠陥を受け止めるまでの物語でした。

「戦いにこだわって 敗れ行く定めだとしても 移ろうこの世間にゃあ ズレてる方がいい」と励ますには壮絶な物語でしたが、この物語が世に出てきてくれたことは励みになります。

壮絶な経験がなければ本を書けないのか?と思うことはありますが、壮絶な経験をした人にとって、最後の砦としての「文学」を取り戻した作品だと思います。

 

16年末に毎日新聞松尾スズキによる書評が発売に先行して掲載され、発売後に多くの人が感想を綴っているのを見ました。2017年を代表する1冊になるのは間違いないでしょうが、世の中を変える一冊になっていくことを信じています。

ここ3年間の環ROY

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2013年4月3日に4枚目の『ラッキー』をリリースして以降、環ROYの単独名義としてのリリースが途絶えています。

「途絶える=沈黙」である場合がほとんどですが、環ROYの場合はCDアルバムという形式で音源の発表をしてないだけで、活動そのものは活発になっています。活発になっているだけでなく、YOU TUBEに音源を挙げたり、現代アートのようなライブをしたり、鎮座DOPENESSとのユニットKAKATO名義のライブを行ったりと表現の幅が広くなっています。iTunesにあげてない音源も多く、コンパイルしてまとめて聴くこともできません。

作品をリリースしない、というとChance The Rapperを想起します。

フリースタイルダンジョン」から遠く離れたところに現在の環ROYはいます。

音源のリリースがないので批評の対象になりにくく、表現が軽やかなのでHIP HOPシーンからも距離を置かれているような印象があるのがもどかしくあります。

遠く離れているとはいえ、審査員やればいいのにと思ったり、やっぱやらなくていいやと思ったり。

16年9月の「りんご音楽祭」でKAKATO名義のライブを見ましたが、大勢の観客がおり、リリースしなくてもファンが途絶えないんだなと実感しました。ライブの内容は鎮座DOPENESSとのフリースタイルがメインで、KAKATO名義の2枚のフリーダウンロードアルバムの楽曲から何曲か披露という構成でした。延々フリースタイルが終わらなかったのが思い出です。

 

以下に近年の活動をまとめました。

 14年1月 蓮沼執太フィル『時が奏でる』に参加

 14年9月YUKI『FLY』に参加(「波乗り500マイル~reat.KAKATO」)

 14年10月U-zhaan『Tabla Rock Mountain』に参加(KAKATO×U-zhaan「Tabla'n'Rap」)

 

 15年10月 ソフトバンクロボティクス 人型ロボット「Pepper」の広告動画「ペパリズム」へ後藤正文(ASIAN KUNG-FU GENERATION)と共に出演

 15年12月 NHKラジオ「すっぴん」にKAKAATOとして出演

 「環ROY × 蓮沼執太 × U-zhaan」名義での 即興ライブを行う

 16年6月~

KAKATO名義で『デザインあ』#105からコーナー「めでたい」に「うた」を提供。

「めでたい」とは、祝福、祈り、寿ぎといった「気持ち」が、どのように「物」に込められ、形に表されているのかを、ラップとアニメーションで紹介するコーナー。

過去の放送は「おせち」、「晴れ着」、「水引」、「だるま」。

 16年6月 環ROY×Taquwami×OBKR名義で「ゆめのあと」をYOU TUBEで公開

 16年7月 NISSIN SAMURAI NOODLES "THE ORIGINATOR”の動画にラップで参加

 16年7月 鎮座DOPENESS×環ROY×U-zhaan名義で「サマージャム'95」をYOU TUBEで公開

 16年12月公開『アズミ・ハルコは行方不明』(監督:松居大悟)の劇判音楽を担当

ライブは 「ありか (島地保武×環ROY)」を含めた29本。

他に「ラッパーのための三つのプラクティス」という言葉の説明だけでは想像できない意欲的な取り組みを行っている。

 

17年1月 U-zhaan×環ROY×鎮座DOPENESS名義で「七曜日」をYOU TUBEで公開

17年1月 「そうそうきょく」ライブ映像公開

2016年に買って良かったもの

< MERCH BEST 5 >

宇野維正さんが「2016年の音楽シーンを一言であらわすと?」という質問に「”MERCH”」と答えていました(『WOWOWぷらすと」特集「2016年の音楽界を振り返り!~WOWOWぷらすと2016年総決算SP~」

「MERCH」といいうのは「merchandise」の略で、グッズのことです。

所有するTシャツの8割が音楽関係のものという程度に、ミュージシャンや映画のグッズを買うのが好きなので、16年も色々購入しました。

購入した中から良かったものを挙げます。

大半が売り切れになっていますが、アフィが入ってくるわけでもないし、このブログを読む奇特な方のことを気遣うつもりはありません。

  

Coloring Book Hoodie (Navy) $50

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Chance the RapperのHoodieです。Chance the Rapperのサイトで注文しました。

11月下旬に購入した「AIR JAM×TOWER RECORDS KEEP GOING パーカー GRAY(XL 6,264円)は186cm/100kgの私にはピッタリすぎるサイズでしたが、Chanceのはゆったりと着用できました。

今週届いたYOUNG THUGのHOODIEもゆったり感があり、可能なら交互に着続けたいくらいです。

ChanceのHoodieの他に買ってよかったもの、愛用しているのは以下の4つです。

 

「1TIME4EVER BOMBER JACKET」(15,000円/KANDYTOWNのブルゾン)

AIR JAM×TOWER RECORDS KEEP GOING コーチJK NAVY (6,912円)

「AF Double Poket Tote」(3,200円/アナログフィッシュのトートバッグ)

「Chance 3 snapback」(35$/『Coloring Book』ジャケットの帽子)

 

服装が自由な職場なのでKANDYTOWNのブルゾンは外に出る際や通勤の時に着ていて、AIR JAMのコーチは職場内で着ていて、アナログフィッシュのトートは毎日持ち歩いています。

なのでChance the Rapperの帽子以外はほぼ毎日使用しています。Chanceのキャップは、最近になってNEW ERA製で多色展開されているのが売られるようになったから、そのうち買います。

フジロックcero×VIDEOTAPEMUSIC、Suchmos、D.A.N.のTシャツを買ったり、りんご音楽祭でOTOGIBANSHI’Sのキャップやタオル、やけのはらの栓抜きキーホルダーを買ったり、ROSE RECORDSの通販で「お土産DANCE TO YOU」を注文するついでにサニーデイ・サービスのノートを買ったり、OBKRが主宰する「Tokyo Recordings」のキャップを買ったりしました。

音楽関係ではないですが、イラストレーターであるノリタケのノートやペン、長場雄のペンやカレンダーも買いました。

買いすぎたかもと思うくらい買ってますが、The Weekndのポップアップショップに出かけられなかったのが心残りです。

あと、「Coloring Book」のポスター、注文を間違えたのか10枚届いてしまったのも良い思い出。

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< 布団乾燥機 >

アイリスオーヤマ ふとん乾燥機 【マット不要】 カラリエ パールホワイト FK-C1-WP

 

一昨年、2015年の夏から同居することになった妻は、寒くなったころから湯たんぽを使っていました。

年末に大山卓也さんのブログ『TAKUYA ONLINE』、12月28日付「毎日がぬくもり天国!布団乾燥機ニュージェネレーション」を読んで購入しました。

takuyaonline.hateblo.jp

Amazonで注文したので履歴を確認すると16年1月26日に発送されていました。

 

家に届いたのち、湯たんぽは覇権を失いました。15-16シーズン、そして16-17シーズンと、毎日乾燥機のスイッチを押しています。

買ってから1年たちますが、6ヶ月、180日くらい使っていることになってて驚いています。

大山さんは60分コース(「冬」)のようですが、妻は20分コース(「あたため」)を利用しています。

私自身は入浴後すぐに就寝するので平日は使っていないのですが、休日の日中に60分コースを使っています。

 

ありがとう、TAKUYA ONLINE!

 

布団乾燥機のエントリとあわせて、コーヒーメーカーとコーヒーミル、珪藻土バスマットも紹介していました。

どちらも買いたいと思いつつ、置き場所や必要性の高まりが見込めず、買うまでには至りませんでした。ずるずると買わずにいたら、コーヒーミル「ナイスカットミル」は16年4月に生産が終了していました。

とはいえ、コーヒーを淹れてもらえる職場環境が変更になったらコーヒーメーカーV60を買おうと思う。

恩田陸『蜜蜂と遠雷』(を読みはじめた)

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1月9日にレンタルDVDを返却したついでに併設されている本の売り場に買おうと思っていた『半径5メートルの野望』(はあちゅう講談社文庫)はあったけれど、文庫1冊だけ買って帰るのは勿体ないと思って、売り場を徘徊しました。

「これ!」というのがみつからず、未読の小説は『犯罪小説集』『キャプテン・サンダーボルト』など何冊もあるけどと思いつつ恩田陸『蜜蜂と遠雷』を買うことにしました。佐久間宣行さんのツイートに背中を押されたからです。

 翌日、1月10日は飲み会があったので、普段とは異なりJRで帰宅することになりました。スマホの充電が切れ、電車に遅延が発生したこともあり、駅の待合室で腰を据えて『蜜蜂と遠雷』を読みはじめました。

今日までに40ページ読みましたが、帯に書いてあるとおり「著者渾身、文句なしの最高傑作!」である予感がします。昨年読んだ小説は8冊で、恩田陸の小説は『ドミノ』『Q&A』しか読んでないので何の説得力もありませんが。

 さて、『蜜蜂と遠雷』。読み終えた冒頭40ページは、亡くなった著名な音楽家に師事を受けたカザマ・ジンという少年がピアノ・コンクールのオーディションを受け、演奏を聴いた審査員の3名が混乱する、という内容。

 冒頭を読み、「著名な音楽家の師事を受けた、正当な音楽教育を受けていない青年が音楽コンクールに臨む」という本書の骨格から一色まことピアノの森』が想起されます。

 『ピアノの森』の主人公は貧民街/風俗街の出身で母子家庭、『蜜蜂と遠雷』は養蜂家の息子で父子家庭。

類似や差異を探したり比較することへの熱意はなく、小説にしかできないことが記されていることを期待しています。

審査員の3名がフランス、パリのバルで議論しあうのが面白くなるのは小説ならではであるし、恩田陸の技術により飽きることがありません。

 

この世界に浸り続けていたい小説です。最後までこの感覚が続きますように。 

定期購読している雑誌、2017年1月の。

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2015年5月29日に「定期購読している雑誌は14誌あります。」というブログを書きました。書いてから1年半が過ぎました。

 

2017年1月現在で毎号購入している雑誌と新聞は以下の10誌(紙)です。

15年5月に比べると少し減りました。雑誌不況と言われているらしいので、個人平均からすると多めなのでしょう、恐らく。

 

1『本の雑誌

2『MUSICA』

3『ele-king

4『KAMINOGE

5『POPEYE』

6『ケトル』

7『フリースタイル』

8『広告』

博報堂の社員が編集長の辞令を受ける雑誌。コミック雑誌のように連載作品があるわけではないためガラリと変わる楽しさがあります。

昨年末で編集長の尾形真理子さんが2年間の任期を終えました。1月19日発売の次の編集長は誰なのでしょうか?

9『Dモーニング』

ジャイアントキリング』が全然連載再開しないし、読むマンガ少ないのですが、アプリを登録しているのでズルズルと購読しています。

10『朝日新聞

2015年5月当時は沢木耕太郎「春に散る」のスタート直後たったので連載を追うために切り抜きをしていましたが、次第に追わなくなりました。しかし、年始から吉田修一×束芋という『悪人』の座組みで「国宝」という連載が始まったので切り抜きを再開しました。

 

2015年5月当時は購入していた雑誌は以下の理由から現在は毎号購入していません。

en-taxi

2015年11月26日発売の46号をもって休刊。

『SIGHT』

書評対談『読むのが怖い!』が載らなくなったので買わなくなりました。

BRUTUS

2015年5月当時は樋口毅宏「ドルフィン・ソングを救え!」のスタート直後だったので連載を追うために買い続けましたが、次第に追わなくなりました。今は特集によって買う/買わないを判断しています。

『GINZA』

松尾スズキ「東京の夫婦」の立ち読みはしていますが、特集によって買う/川内を判断しています。

ヒバナ

創刊から何号か買っただけです。2016年に読んだマンガは10作に満たない気がするので、今年はもう少し増やそうと思います。

 

雑誌の良さは何だろうかと考えました。

雑誌の良さは『本の雑誌』『MUSICA』『ele-king』などそれぞれの雑誌が網(フィルター)を持っていて、その網(フィルター)で掬い上げられて届く物や事柄は私の生活している範囲にはないものです。ネット上のウェブメディア、たとえばナタリーやリアルサウンド、では自分が知っている物しか目に入らないし、Amazonは自分の好きそうな物しか薦めてきません。雑誌という物体があることで、今は素通りしても、何かのきっかけで再びアクセスすることが可能になります。

 

吉田豪『続・聞き出す力』を読み始めたんですが、そこに「紙のプロレス」所属時の上司が山口日昇であったと書いてありました。山口日昇は「KAMINOGE」によく出ている名前だからちょっと読み返してみよう、というようなことが楽しくて雑誌を読んでいます。

テレビドラマ OF THE "2016"

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2016年のベスト・ドラマ

1『奇跡の人』

2『ちかえもん』

3『トットてれび

4『重版出来!

5『スニッファー』

ランク外『逃げるは恥だが役に立つ』、『ゆとりですがなにか』

 

『奇跡の人』は峯田和伸麻生久美子の『色即ぜねれいしょん』コンビ再び!ということで下手なドラマにはならないと思っていましたが、予想を超えて良かったです。キャスト10人だけで回した小演劇のような座組みで、その10人が極めて優秀だったので、目を逸らすことができませんでした。とくに正志を演じた山内圭哉。朝ドラ『朝が来た』の大番頭が真面目で良い人で友近との淡い恋を楽しんでいたので、ギャップに悶えてしまいました。

松尾スズキさん主演の『ちかえもん』。江戸時代の劇作家を、松尾スズキさんが演じる。創作の苦悩を演じるのだから、松尾スズキさんは適役でした。

満島ひかりさんが黒柳徹子を演じた『トットてれび』。テレビ草創期の黒柳徹子の映像を見ると『トットてれび』での再現性の高さに驚きます。黒柳徹子の歴史はテレビの歴史になっていることは凄いことだし、黒柳徹子が今も現役であることは信じがたいことだけど、長生きすることで失ったものの寂しさを考えてしまいます。

トットてれび』に登場した渥美清坂本九向田邦子沢村貞子、そして森繁久彌黒柳徹子と友情より深い関係を結んでいく人たちが描かれていますが、いずれも物故者となり、黒柳徹子は皆から別れを告げられています。

その後、主役だけが生き残るなんて、黒柳徹子の眩しさに翻弄されていまうけれど、黒柳徹子が主演でなければ、悪い夢のようなドラマ。

 

ベスト5本のうち4本がNHKのドラマってのは、なんなんでしょうか?「画面にヒビの入ったスマホは映せない」とか民放のドラマの規制や予算、人材不足が原因なのでしょうか?

そんななかで、フジテレビの『重版出来!』は安心して観れました。原作はいつのまにか若手マンガ家が成長していく話になったので巻を追うのが途絶えてしまいましたが、その手前までをドラマにまとめてありました。

黒木華がシャツの第1ボタンまで留めていて、田渕ひさ子さんの系譜に連なっていて好感を持ちました。

主人公の黒沢たちが毎回立ち寄る小料理屋「重版」の女将で「朝が来た」美和役の野々すみ花さん出てきて嬉しかったけど、役回りが「朝が来た」と同じだったのでキャスティングに捻りがありませんでした。出演は嬉しいけど、違う顔が観れなくて残念だったということです。

そんな『重版出来!』で効率重視の編集者を演じた安田顕が『スニッファー』最終回で演じた役にはガッカリしたし、井川遙の元旦那との繋がりも唐突であると思って興ざめしたので最終回はダメでした。

そのダメだった最終話を除く6話までは1話完結で解き明かす行程にワクワクしたし、トータス松本劇団ひとりのキャスティングは嵌っていたし、連続して楽しめたドラマでしたよ、『スニッファー』は。

『逃げるは恥だが役にたつ』は妻が観てるのを横目で観たり観なかったりしたのでフルで観てませんし、『ゆとりですがなにか』は重くて録画したのを消化できてないんで、ランク外にしました。1クールに1本、見続けられるドラマがあると嬉しいです。