BOOK OF THE "2016"

f:id:tabun-hayai:20161219165133j:plain

年末を迎え、各誌、各サイトで年間ベストが発表されはじめました。

いろんな人が10本、10枚、10作、、、と選出していますが、分母が気になってしまいます。

あなたの選んだ10本(10枚/10作)は幾つの選択肢から選んだものなのですか?と。

手に取る段階において、なんらかのフィルターがかかるのは仕方ない事なのですが、あの作品が入ってないけど、作品に触れたうえでランキングから外してんの?と突っかかりたくなるわけです。

「観た(聴いた/読んだ)けどランク外」と「観て(聴いて/読んで)ないからランク外」は違います。

 

ということで、私が年始から12月19日までに読み終えた36冊のランキングを発表します。

 

順位/ランク/読んだ順番/著者/タイトル

1      A      13 坪内祐三『昭和にサヨウナラ』

2      A      24 藤井健太郎『悪意とこだわりの演出術』

3      A      29 くるり+宇野維正『くるりのこと』

4      A      28 阿部広太郎『待っていても、はじまらない』

5      A      35 佐久間宣行『できないことはやりません』

6      A      22 大崎梢『スクープのたまご』

7      A      6 佐渡島庸平『ぼくらの仮説が世界をつくる』

8      A      20 

tabun-hayai.hatenablog.com

9      A      33 橘川幸男『ロッキング・オンの時代』

10     A      4 宇野維正『1998年の宇多田ヒカル

11     A      31 石井朋彦『自分を捨てる仕事術』

12     A      25 池田純『空気のつくり方』

13     A      2 水口克夫『アートディレクションの「型」。』

14     A      36 佐藤オオキ『佐藤オオキのボツ本』

15     A      14 大崎梢『クローバー・レイン』

16     A      32 目黒考二目黒考二の何もない日々』

17     A      1 若林正恭『完全版 社会人大学人見知り学部卒業見込』

18     A      12 大崎梢『プリティが多すぎる』

19     A      23 藤田和日郎『読者は読ムナ』

20     A      30 宇野常寛吉田尚記『新しい地図の見つけ方』

21     B      19 

tabun-hayai.hatenablog.com

22     B      26 

tabun-hayai.hatenablog.com

23     B      5 小西利行『すごいメモ。』

24     B      34 柴那典『ヒットの崩壊』

25     B      10 山内マリコ『買い物とわたし』

26     B      15 大崎梢『平台がおまちかね』

27     C      3 江弘毅『K氏の遠吠え』

28     C      7 みうらじゅん『大人に質問!「大人ってどのくらい大変なんですか!」』

29     C      8 大崎梢『サイン会はいかが?』

30     C      17 大崎梢『背表紙は歌う』

31     C      9 ホイチョイ電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気くばり』

32     C      11 印南敦史『遅読家のための読書術』

33     C      16 佐々木典士『ぼくたちに、もうモノは必要ない。』

34     C      18 増井修ロッキング・オン天国』

35     C      21 尾崎世界観『祐介』

36     C      27 中島聡『なぜ、あなたの仕事は終わらないのか』 

 

以下は2016年の読書傾向と「ブックデザイン部門」です。

〇 大崎梢著作を読み漁った

ブログに書いたように大崎梢が出版について書いた著作はあらかた読み終えました。著作7冊のうち購入したのは『スクープのたまご』のみで他の6冊は図書館で借りたので申し訳ない気持ちもあります。

 

〇 小説を読んでない

大崎梢著作7冊を除けば『祐介』のみ。『祐介』については、装丁100点だけど、内容に入り込めませんでした。文学になってるし、青春でもあるんだけど、私の好きな青春小説ではなかったです。35歳の私では入り込めませんでした。

 

〇 ロッキング・オン関係の本を読んだ

ロッキング・オンと一括りにするのは乱暴であるが、ロッキング・オン出身の人の著作を5冊読みました。ロッキング・オン出身の人は文章について地肩ができているから手にとってしまいます。「地肩」というのは、古い話で恐縮ですが、大根仁さんの言い回しを拝借しました。

モテキの取材をいくつかやってて、原稿チェックしたりもするんだが、元ロッキンオン系のライターさんが書く文章やインタビューや対談をまとめたテキストはなんか違う。地肩が強いというか「直させねえよ!」というオーラがある。あとまあなんか筋が通ってるんだ文章に。(2011.7.28)

 

ロッキング・オン関係のなかでは、『くるりのこと』を最上位にしました。くるりの楽曲は全て聴いているけれど、くるりが最も好きなバンドであるというわけではないから、この順位です。

ロッキング・オン天国』は、タイトルにロッキング・オンとあるけれど、90年代の海外の音楽事情について紙面が割かれており、ロッキング・オンの内部事情とか編集方針とかを読みたかった私には肩すかしでした。なので、『ロッキング・オンの時代』は渋谷陽一のエピソードが多く出てきたので『ロッキング・オン天国』より上位にしました。

 

〇 ブックデザイン部門

1位 『悪意とこだわりの演出術』

2位 『くるりのこと』

3位 『昭和にサヨウナラ』

4位 『待っていても、はじまらない。』

5位 『ロッキング・オンの時代』

6位 『祐介』

7位 『読まされ図書室』

8位 『空気のつくり方』

9位 『アートディレクションの「型」。』

10位 『目黒考二の何もない日々』

11位以下は、ワーストの『できないことはやりません』『新しい地図の見つけ方』を除いて並列です。

f:id:tabun-hayai:20161225114819j:plain

 

私の見方に興味ある方いましたら、読書メーターのマイページに寸評書いてあるので、そちらをどうぞ。

elk.bookmeter.com

 

特典のDVDを聴いている


f:id:tabun-hayai:20161203135037j:image

『ミュージック・ポートレイト』で又吉直樹さんが紹介していたハンバートハンバート「ぼくのお日さま」。番組を機に、改めて聴きたくなりました。

けれども収録されている『むかしぼくはみじめだった』が見当たりません。残念に思いながら、You TubeでPVを何回か見て、聴きたい気持ちを落ち着かせました。

ハンバートハンバートへの興味が再び高まり、『ぼくはみじめだった』を買い直すことも考えましたが、ディスクユニオンに手ぬぐい付きの『FOLK』というアルバムが売っていたので注文しました。

『FOLK』に収録されている「国語」が素晴らしくて、歌詞をまるまる引用したいのだけれど、本題から逸れるので控えます。

『FOLK』を含め、他にも何枚かCDを買ったので、車のHDにリッピングしました。リッピングするだけだと曲名が出ないので、ネットに繋いでタイトルを登録するためSDカードを取り出しました。SDカードを取り出したけれど、なんやかんやあってタイトル取得の作業を忘れたまま、車に乗ってしまいました。

車に乗って聴くものがないことに気づき、手元にあった『FOLK』は何度か聞いたということで、特典のDVD『FOLK LIVE』流すことにしました。

DVDを入れてから気づいたのは、運転中は映像が遮断されるので、ほぼほぼCDを聞くのと変わりがないということです。

この『FOLK LIVE』には「ぼくのお日さま」が収録されているので、車内で声を張り上げて歌うようになりました。

 

CDにいつごろからか付属するようになったDVD。

ウィキペディアには谷村新司が1996年にリリースした『シンジ ラ ムニタ』が世界初の商業用DVDと書いてあります。

96年が最初とはいえ、実感としては2000年代に入ってからCDの初回限定盤に付属するようになった印象があります。

ライブでもPVでも映像で音楽に接することはほとんどないので、しっかりと区切ることはできないのですが、それでもかつて購入したものを思い出してみました。

 

1997年4月『music clips ALIVE』Mr.Children

1998年10月『WINTER GIFT '98 Happy Songs & Music Clips』広末涼子

2000年2月『ビデオ ポキールBUMP OF CHICKEN

2004年4月『シフクノオト』Mr.Children

2006年7月『箒星Mr.Children

 

『ビデオ ポキール』はVHSで、『シフクノオト』にはDVDが付いてきたので、2000年と2004年の間あたりでDVDが広まりだしたのだろうと思います。

CDの売り上げのピークが『1998年の宇多田ヒカル』に書いてあったように1998年であるから、右肩下がりの市場のなかで、DVDを付属して初回盤の値段設定を高くするのが打開策の1つとして広まったと推測します。

あと、CDとDVDは形状が一緒なのでパッケージしやすいってのも広まった理由の1つなんだと思います。広末の『WINTER GIFT’98』はCDとVHSがセットになっいて、かさばってましたし。

f:id:tabun-hayai:20161202131503j:plain

大友啓史『ミュージアム』と巴亮介『ミュージアム』

f:id:tabun-hayai:20161125162931j:plain

巴亮介ミュージアム』を原作とした大友啓史『ミュージアム』を鑑賞しました。その感想です。

マンガや小説など原作があるものを映画化する場合、何らかの脚色をすることは避けられない事です。

 細かい事ではあるけれど、その脚色具合への不満が6ヶ所あったので書きます。感想であり、紹介ではないからネタバレを気にせず行きます。 

 

(1)

「ドッグフードの刑」執行後、現場確認を終えた主人公は、近くにいたカエルに「お前は何を見たんだ?」と話しかけます。

冒頭、散らかった自室のソファーで目覚めたシーンや玄関で妻を見送る回想シーンからも推測できるように、主人公の仕事の忙しさから妻が子どもをつれて家を出てしまっています。妻に出ていかれ、それでも仕事に出かける主人公にカエルに話しかけられるだけの心理的余裕はあるのか、と疑問が浮かびました。

このシーンは原作にはなく、作品として重要なモチーフである「カエル」に重ねてタイトルを出すための脚色です。

(2)

「ドッグフードの刑」を執行された被害者と同棲する彼氏は金髪でした。

映像としての見映えのためでしょうか。このことは有効的な脚色だと感じました。 

(3)

「均等の愛の刑」執行し、均等に切断された裁判官の遺体が自宅と愛人の勤め先に送付されます。原作では会社の事務員であった愛人ですが、映画ではクラブに勤めるキャバ嬢になっていました。

これも映像としての見映えのためにクラブのセットが選ばれ、愛人がキャバ嬢になったのだろうと推測しますが、裁判官がキャバ嬢を愛人にするのか?というところの疑問がありました。

原作どおり、一般企業の事務員の設定の方が、大学や仕事上での接点があり得そうに思えました。

(4)

女医がカエル男と双子であるという繋がりが急にあらわれ、クラクラしました。

資産家夫婦殺害が原作通りカエル男の犯行であるとするなら、その時に双子の片割れは何をしていたのか?という疑問が生まれます。

今回の犯行前に幼女樹脂詰事件があり、その時も双子の片割れである女医は気付かなかったと断言して良いのでしょうか?

(5)

原作と比べて主人公が痛めつけられすぎであるということ。

友人宅に身を寄せていた妻と子供がカエル男に誘拐されたのち、主人公とカーチェイスをするシーン。

カーチェイス自体は原作にもありますが原作では電柱に衝突するだけで、映画のように横転したり、カエル男がトラックを運転することはありませんでした。

また、主人公とカエル男がビルの屋上で対面する前、カエル男を探している時に主人公は車に撥ねられます。撥ねられてもカエル男を追う。執念というか、もう破綻してます。

(6)

カエル男の家でカエル男と対峙するシーン、原作では後姿を見て妻の立ち姿を思い出し、妻がカエル男のマスクを被っていることに気づきます。

しかし、映画ではしゃがみこんで泣き叫びます。「尾野真千子、なにしてんだよ?」と原作ファンである私は思いました。

 

 以上のように、瑕疵ばかりを書いてしまいましたが、画面の暗さなどのトーン、リアルサウンド映画部でも記事になっていたカエル男・妻夫木聡はじめ俳優陣の演技などについては何の不満もありません。特に、田畑智子さんが短い時間ながら光っていたことも嬉しかったですし、「親の痛みを知りましょうの刑」で殺されるオタクがおでんの玉子を口に入れたあとにポンッと鍋に吐き出すシーンは良かったです。

市川実日子さんが出てきて嬉しかったのですが、これは私の観たい実日子さんではありませんでした(私のベストの実日子さんは『blue』です。あと、『午前、午後。』に続くエッセイ集の出版をお願いします)

主演・小栗旬の演技は『GTO』と『宇宙兄弟』くらいでしか観たことありませんが、原作の主人公を実在化させることに成功していたので、何の文句のつけようもありません。

 

原作はカエル男を追うことを重視して読みましたが、映画『ミュージアム』では「失いつつある家族」から「仕事と家族のバランス」について我が身を振り返ることに自分の重心が移っていくのを感じました。

原作の『ミュージアム』が完結する3巻の発売は14年4月で読了時は自分が独身で16年11月の現在は結婚しているからだろうし、尾野真千子の存在感が強かったせいもあるだろうと思います。

 あと、大半の映画と同じように、ONE OK ROCKの主題歌も必要性が感じられませんでした。

映画を観に来た観客に無理やりにでも歌を聞かせられるし、CMやテレビの映画紹介時に曲が流れるということで主題歌があるのでしょうけども、ONE OK ROCKのCDの購買欲は刺激されませんでした。

市川実日子さんが公式サイトで「台本の中に、私の好きな歌が出てきました。明るくかわいい歌です。普段なら。このミュージアム界ではどんな歌に聴こえてくるのか、作品の完成が・・・とっても恐ろしいです」とコメントしていた曲、つまり、カエル男がつぶやくように歌っていた、大貫妙子「メトロポリタン美術館」が主題歌としてベストだったはずです。

そのままでなくとも、誰か(五十嵐隆さんとか?)にカバーさせればよかったのにと思いました。

 

 

原作ファンとして注文が多くなってしまいましたが、とても良い映画でした。集客も85%くらい埋まってましたし。

f:id:tabun-hayai:20161125162951j:plain

 

2016年11月23日、アナログフィッシュ@松本ALECX、そしてバンドの衣装のこと


f:id:tabun-hayai:20161124112451j:image

アナログフィッシュ下岡晃がプロデュースを務めたHelsinki Lambda Club『ME to Me』。

リリースツアー『From Me to You』の一環としてAnalogfish、Kidori Kidoriを呼んだ公演が松本ALECXで開催されたので出かけてきました。

松本はちょっと遠いので本来であれば見送るところですが、アナログフィッシュのアコースティックアルバム『town meeting』を買うためもあって出かけてきました。 

最初はKidori Kidori。

Kidori Kidoriに対してはメンバーが失踪して脱退したバンドであると音楽ナタリーで読んだことあるだけで音源を聞くのは今回がはじめてでした。

良いバンドであると思いましたが、「アウトサイダー」を演奏する前に「生きにくいということを歌詞にしました」と紹介していましたが、肝心のその歌詞が聴き取れなくて残念でした。

 

そして、アナログフィッシュ

1.平行

2.こうずはかわらない

3.My Way

4.Good bye Girlfriend

5.Baby Soda Pop

6.There She Goes(La La La)

7.今夜のヘッドライン

8.No Rain (No Rainbow)

以上のようなセットリストでした。

「平行」という驚きのスタートでした。

佐々木健太郎さんの曲は「Good bye Girlfriend」と「Baby Soda Pop」。この2曲が鉄板なのは百も承知ですが、他の曲も聴いてみたいのがファン心理です。

「抱きしめて」がセットリストから外れていたことも驚きました。「抱きしめて」に代わって軸となる「No Rain(No Rainbow)」が産み出されたので、「抱きしめて」が演奏されないことについての不満は全くありません。

私はりんご音楽祭とかネオンホールでのタテタカコとの2マンなどでトータル5回くらいアナログフィッシュを見ているけれど、いずれも1時間程度なので、長尺の20曲くらいの公演をいつか観に行きたいと思っています。

そうなると、東京まで行かなくてはならず、、、。武道館公演が実現した際は平日であっても行きます!

 

トリを務めたのはヘルシンキ・ラムダ・クラブ。

電車の都合があって30分くらいしか観れなかったけれど、良いバンドでした。

 

 

良いバンドであるヘルシンキ・ラムダ・クラブとKidori Kidoriが松本ALECX程度の箱を簡単に埋められるようになるには何が足りないのか?音楽的なことは分かりませんが、衣装の統一は必要なのかな、と思ってしまいました。

古くはThe Beatlesから始まって、the michelle gun elephant、東京スカパラダイスオーケストラと衣装の統一されているバンドは大概、カッコいいです。

普段着でステージに上がっていたアジカンだって『Wonder Future』ツアーやGotch & The Good New Timesのツアーでは衣装を揃えるようになっています。

ふらっと登場してバーンと演奏する。それでは日常の延長線上になってしまいます。

そのことがダメなわけではないけれど、観客としては驚きがありません。

BUMP OF CHICKENがあの勲章いっぱいつけた中世ヨーロッパのような衣装で揃えたり、WANIMAが短パンで揃えり、【ALEXANDROS】がスーツで揃えたりしているのは、自分たちの演奏する音楽と一致する服装を考えた結果であるはずです。

アナログフィッシュについては、歌詞の内容が日常に根付いたものなので、普段着だったりメンバー思い思いの服装で演奏するのが当然であると思います。

ただ、ヘルシンキ・ラムダ・クラブ、Kidori Kidoriがどういった内容の歌を唄っているのかを知らないので、認知度が上がるまでは衣装に統一感を持たせることも必要なのではないかと思った次第です。

 

ちなみに、Kidori KidoriのマッシュはThe Beach Boys、ドラムの川元直樹は橋本塁が中心となっているブランド「STINGRAY」のTシャツを着ていました。

アナログフィッシュ下岡さんはカナダのバンド「HOLYFUCK」、斉藤州一郎さんはアナログフィッシュのTシャツでした。

アナログフィッシュ、Kidori Kidoriともベーシストは長袖のシャツを着ていました。

ヘルシンキ・ラムダ・クラブはサイケデリックなポンチョを着てるメンバーもいればTシャツだけのメンバーもいました。

f:id:tabun-hayai:20161124110157p:plain

くるり「東京」~「ミュージック・ポートレイト」岸田繁×又吉直樹

f:id:tabun-hayai:20161101104701j:plain

 

東京の街に出て来ました

あい変わらずわけの解らない事言ってます

恥かしい事ないように見えますか

駅でたまに昔の君が懐かしくなります

 

くるり「東京」

 

2016年10月27日に放送された『ミュージック・ポートレイト』「岸田繁×又吉直樹 第1夜」において、又吉さんがくるり「東京」を10曲のうちの1曲として挙げていました。その「東京」の歌詞の冒頭について以下のように話しており、衝撃を受けました。

「あい変わらずわけの解らない事言ってます」ってことは、出てくる前からわけのわからん事を言うてたんやっていうのと、それですごいなんか色んなことが説明してなくてもわかるっていう

又吉さんは「あい変わらずわけの解らない事言って」るのは、上京してきた主人公であると解釈してるわけです。それを聞いていた岸田さんはニコニコしていました。

 

 「あい変わらずわけの解らない事言ってます」について、わけの解らない事を言っているのは、主語は、「東京の街」であると15年くらい解釈してきました。

住んでいた街とは違う人の多さに加えて、各店舗から流れる音楽や街頭ビジョン、呼び込みの声が溢れている騒がしさに対してのことなのかと。

そして、心もとない東京で、強がりだろうけど「恥ずかしい事ないように」ふるまって、溶け込もうとする主人公の姿を思い浮かべていました。

自分が「わけの解らない事を言ってる」と自分で客観的に判断できるのは疲れてるときくらいです。よっぽど疲れている時以外は、周囲から「わけの解らない事を言ってる」と思われてたとしても、自分のなかでだいたいの理屈は通っているはずです。

 「あい変わらずわけの解らない事言ってます」と距離を置いた言い回しをしているし、この部分の主語は「東京」で良いと思うのですが、どうなんでしょうか?

 

 

岸田繁 選曲

1曲目   「The Entertainer」 スコット・ジョプリン

2曲目   「1974 (16光年の訪問者)」 TM NETWORK

3曲目   「GOOD TIMES BAD TIMES」 LED ZEPPELIN

4曲目   「BELLBOTTOMS」 The Jon Spencer Blues Explosion

5曲目   「東京」 くるり (※インディーズver.)

6曲目   「Pyramid Song」 Radiohead

7曲目   「交響曲第39番(3楽章)」 モーツァルト

8曲目   「帰って来たヨッパライザ・フォーク・クルセダーズ

9曲目   「琥珀色の街、上海蟹の朝」 くるり

10曲目 「おぼろ月夜」

 

又吉直樹 選曲

1曲目   「カレーライス」 遠藤賢司

2曲目   「からたち野道」 THE BOOM

3曲目   「MOTHER」 奥田民生

4曲目   「東京」 くるり (※メジャーデビューver.)

5曲目   「明日はどっちだ!」 真心ブラザーズ

6曲目   「JACK NICOLSON」 bloodthirsty butchers

7曲目   「オールドルーキー」 竹原 ピストル

8曲目   「IGGY POP FANCLUB」 ナンバーガール

9曲目   「ぼくのお日さま」 ハンバート ハンバート

10曲目 「太陽のブルース」 くるり

2016年9月24日(土)、25日(日)のこと ――― というか、りんご音楽祭のこと


f:id:tabun-hayai:20161006215730j:image
 

りんご音楽祭2016の感想です。

 

「りんご音楽祭」とは長野県松本市アルプス公園で開催されている音楽フェスティバルです。ラインナップの特徴として、インディーバンドとヒップホップがメインとなっています。ヒップホップ系の人を中心として、MCのなかで主催者であるdj sleeperのことに触れるアーティストが多いのも特徴の1つ。スリーパー氏の人徳!

長野県内での単独公演がほとんどないアーティストばかりなので、長野県在住35歳の私が行かない理由はありません。

長野県民が一斉に集まっていると思ってました。思ってたんですが、水曜日のカンパネラコムアイがどこから来たのか手を挙げさせたところ、長野県内50%、関東40%、その他10%という割合でした。

行くときのシャトルバス乗車前に名前と年齢を記入することになってて、それを見たら30代は数組で、8割は20代以下でした。

2日間を通じて、会場が明らかに満員だったのは、藤井隆早見優tofubeats、PUNPEE、水曜日のカンパネラMINMIあたり。

 

< 藤井隆早見優 >

藤井隆が満員の観客に向けて1曲目から「ナンダカンダ」を放ったサービス精神に感服しました。もう1,2曲なんか歌ったけれど、だいたいは「これから早見優さんが登場します」という告知MCでした。

早見優は「夏色のナンシー」を登場と同時に歌いだしたけど、マイクの音量が小さすぎて、、、。

 

< The K-ing All Stars >

始まる前から加山雄三Tシャツを着用した年配のファンが最前列に陣取っていました。加山雄三が登場した時、人間の厚みというか存在感を感じまました。

英語の曲を2曲くらいではじめたときは何を歌ってんのかなと思ってました。

が、キヨサク作曲の「continue」から場の雰囲気が変わりはじめ、PUNPEEを呼び寄せた「お嫁においで2015」で沸騰しました。

一度終わったあと、ウエノコウジ先導による「若大将コール」のちは「サライ」「夜空の星」と誰もが知っている/聞き覚えのあるキラーチューンを連発しましした。

最高でした。

ウエノコウジは「お嫁においで2015」で暇そうにしている時の立ち姿も抜群に格好良かったです。


f:id:tabun-hayai:20161006215755j:image

 

< PUNPEE >

2日間で1番多くのステージに立ったのがPUNPEE氏であることはまちがいありません。The K-ing All Starsの他にも、G-RINA、一十三十一のステージにも客演したそうですし、中夜祭にも出演していました。

そのP氏のステージは2番目に広い会場のトリでした。P氏地蔵でぎゅうぎゅうになっていたので「どついたるねん」はやりにくかったろうなと察します。メイン会場の前野健太はすきずきしていたそうなので、この時間帯で一番人を集めたのがP氏なのは間違いありません。

そのP氏のステージ。私には不満のあるステージでした。

P氏が披露したのは、ライムスターとの「Kids in the Park」、STUTSとの「夜を使いはたして」、5lack「東京」、8月末の「AVALANCHE 6」で披露した新曲、PSGの曲。流したのは5lack「東京」、レッチリなど。あとゲストでC.O.S.A.(1日目のステージはテント2張り分くらいのスペース。当然のごとく満員、、、)が来ていました。

「Kids in the Park」「夜を使いはたして」が流れればアガルけれど、終わった時に満足できたのかと言えば、できていない。

はっきり言って60分の構成を意識した流れが作れていませんでした。

客演した時の盛り上がりや集客力を考えればPUNPEE氏がスターなのは間違いありません。スター街道を進み始めたPUNPEEの看板を背負ったライブをするには、やはりPUNPEE名義のオリジナルアルバムが必要なんじゃないでしょうか?

単独名義のアルバムを待望されていることはP氏も自覚しているようで「アルバムがどうなってるかは中夜祭ででもはなしかけてください」とMCで言ってました。

(関係ないけど、レイザーラモンRGのPUNPEEあるあるは、「いろんなアーティストとコラボしがち」)

 

< アナログフィッシュ >

下岡晃の「出かけた」「はなさない」からはじまり佐々木健太郎の「Baby Soda Pop」「Good bye Girlfriend」や新曲を挟んで、「No Rain(No Rainbow)」「抱きしめて」で終わりました(たぶん何曲か抜けてます)。

05年の『BGM』に収録された「出かけた」が聴けたのは嬉しく、「抱きしめて」の佐々木健太郎パートではちょっと泣きました。

 

< 水曜日のカンパネラ >

前のアナログフィッシュ直後からステージ前に人が集まりだし、はじまる前から多くの人で会場が埋まっていました。そして、ステージ右側の関係者テントの端っこから神輿に乗ってコムアイが登場してきました。ステージ前を確保していた人はコムアイが最初に出てきた瞬間を見逃すことになって気の毒でしたが、コムアイさすがだな、と思わせました。

 

< THA BLUE HERB >

1曲目はクラムボンとのコラボ曲「あかり from HERE」でした。この曲聴けたら優勝です。

他の曲は全然知りませんでしたが、BOSSの存在感や人間力が圧倒的でした。

終演後、物販に寄りたかったけれど開始前に長い列が出来てたので並ばずに帰りました。

後日、tha BOSSが被っていて、最後に客席へ投げた帽子が7,800円と知り驚きました。

とはいえ、tha BOSSの衝撃は大きく、帰宅してから買ったままにしていたtha BOSS『IN THE NAME OF HIPHOP』を聴き始めました。

 

特に印象に残ったアクトについて書きましたが、他にはOTOGIBANASHI’S、KAKATO、吉田一郎向井秀徳アコースティック&エレクトリックギターウルフ、王舟、DOTAMAあたりを見ました。

ヘリノックスの椅子を出してくつろぎはじめると、他のステージに移動するのが億劫になってしまい、見逃したアクトは幾つかあります。

見逃すってことは、りんご音楽祭が自分にとって「日常」に近くなってきた証拠なのかなと。

 

不満があるとすれば、生ビールを売ってなかったとこ。会場レイアウトは一昨年とガラリと変わってましたが、良い変化だと思いました。

 

それでは、また来年。

小林聡美『読まされ図書室』

14年12月の単行本刊行時に書店で手に取った時は「装丁が凝ってるな。タイトルはそういう意味なのね」くらいで済ませていました。文庫が刊行されて読み通した時、『読まされ図書室』というコンセプトの革新性に気づき、目から鱗が落ちました。

普通の書評集と異なる点は、「著者である小林聡美さんが選んでいないこと」と、「選んだ人は小林聡美さんのことを考えて選んでいること」です。

まず「著者である小林聡美さんが選んでいないこと」について。

私が本やCDのレビューに接する時、内容以上に評者が何を選んだのかを気にしてしまいます。

たとえば、『文庫本宝船』(本の雑誌社)などにまとめられている坪内祐三さんの「文庫本を狙え!』。

たとえば、宇野維正さん、いしわたり淳治さん、石井恵梨子さんといった評者に注目してしまう「MUSICA」のレビューページ。

たとえば、『小泉今日子書評集』。

次に「選んだ人は小林聡美さんのことを考えて選んでいること」について。

1冊読めばその本の感想を言ったり書いたりすることはできます。しかし、1冊読んだだけでは「特定の誰か」に薦めることはできません。

「さっき読み終わったばかりの面白かった本」ではなく、「過去に読んだことのある本の中から選んだ小林聡美さんに読んでもらいたい本」を薦めています。

評者は小林さんと何らかのつながりがあるようで、手紙のような導入から徐々に本の内容に踏み込んでいきます。

たとえば皆川明さんから鬼海弘雄『ぺるそな』を推薦された回。

「長々と家の猫の半生を書いてしまったのは、『ぺるそな』におさまったおびただしい数の物言わぬひとびとの肖像を見たからである」と続くように、猫の半生から文章がはじまります。

かつて、「ありふれた生活」を通して知った、三谷家の犬や猫の様子を小林聡美さんからの目線で垣間見ることができたのは嬉しい誤算でした。

しかし、猫の半生を描いた部分は「そうこうしているうちに、一家離散。ホイちゃんはその後大好きだったとびと二度と会うことなく」と続くので、寂しさが残りました。

1篇の分量も少ないですし、書評集を期待している方には肩すかしかもしれません。

 

『読まされ図書室』というコンセプトの革新性にまず目が行きますが、薦められた本を(仕事とはいえ)素直に読める人でなくては成り立たない企画です。

さっき読んだ9月12日付の伊集院光のブログに「もはや自分が嫌いなことの中にしか発見はないのではないか?と思った。40歳まで好き勝手やってきて好きなことの延長線上にある発見はある程度予測のつくものなのではと思った。」と書いてありました。

東浩紀『弱いつながり』は「私たちは考え方も欲望も今いる環境に規定され、ネットの検索ワードさえグーグルに予測されている。それでも、たった一度の人生をかけがえのないものにしたいならば、新しい検索ワードを探すしかない。それを可能にするのが身体の移動であり、旅であり、弱いつながりだ―」という内容です。

小林聡美さんの意識も似たところにあったことが「やや長いあとがき」でわかりました。

このところ、すっかり視野の狭い生活をしている。緑内障とか肉体的な意味でなく、ひたすら自分中心の暮らしをしているという意味である。行きたいところにしか行かないし、見たいものしか見ない。それがとんでもなく傲慢で偏ったことであるのはわかっているけれど、今は、そんなときなんだろうなぁと思ってそうさせてもらっている。そして、そんなひとり鎖国みたいな生活に、いい具合にぐりぐりと食い込んできたのが、読まされ本の数々であった。

(中略)

凝り固まった自分の好みはことごとく無視され、とにかくそれまで手にとることのなかった差し入れが次々と届けられた。

 

本の雑誌」16年10月号に津田淳子さんが「装丁家10傑」を寄稿しており、丁度、単行本時の装丁について書いてありましたので引用します。

 映画関連のグラフィックデザインがメインだが、ブックデザインもすごくいいのが大島依提亜さん。『読まされ図書室』は、図書室というタイトルから、図書カードを模した目次が挟まっていたり、見返しに図書カードを入れる封筒が刷られていたりと、本に入った仕掛けが読者を楽しくさせてくれる。

 文庫版でもデザインは踏襲されています。大島依提亜さん自身が解説していましたので、引用して終わりにします。

f:id:tabun-hayai:20160914151142j:plain