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三谷宏治『戦略読書』


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 15年10月に藤原和博『本を読む人だけが手にするもの』について書いたとき以下のように始めました。

 『本を読む人だけが手にするもの』以外にも、『頭は「本の読み方」で磨かれる』(茂木健一郎)、『読んだら忘れない読書術』(樺沢紫苑)など、「読書術」や「読書すれば良いことがある」という内容の本が定期的に刊行されています。

 タイトルからは読書が習慣化されていない人をターゲットにしているのだと思いますが、スーパーやコンビニで売られているならまだしも、書店でしか売ってないのであれば、恐らく読書が習慣化されていない人には届いていないでしょう。

 本屋に通う習慣のある人が更なる効率化を求めて、手に取っているんだろうなと、体験を込めて感じます。

 その後も読書術に関する書籍は高橋弘樹『敗者の読書術 圧倒的な力の差をくつがえす読書法』、堀紘一『自分を変える読書術 学歴は学“習”歴で超えられる』、久木田裕常『読書の方法 自分を成長させる本の読み方』など続々と刊行されています。調べる中で大岩俊之が14年8月から16年1月にかけて『読書が「知識」と「行動」に変わる本』『読んだ分だけ身につくマインドマップ読書術』『ビジネス本1000冊分の成功法則』『年収を上げる読書術 当たり前のことなのに上位3%しかやっていない』という4冊を発行していることを知りました。粗製濫造の疑いがあるのでチェックしたいところですが、私に暇と金が生まれるまで温存です。

 

 読書術についての本を読むのはやめようと思いつつ、三谷宏治『戦略読書』を購入してしまいました。

 帯には「みんなと同じ本を読んではいけない」「私たちは読んだ本でできているーー。ビジネス、SF、科学、歴史、マンガ、心理、哲学・・・他/「何を」「いつ」「どう」読むかを戦略的に変えてコモディティ化しない自分をつくる「読み方」大全。」「独自の視点を生む435冊ブックガイド付き」とあります。

 コモディティ化とは「一般化したため差別化が困難となった製品やサービスのこと」です。

 

 著者の主張は、「他人と同じ本を読んでいたら、他人と同じ発想、同じ考え方しかできない。だから、基礎ができたら専門以外の本を読みましょう」ということです。

 あとがきで、この本のポイントがまとめられていましたので引用します。

 ①年間100冊の本や雑誌を読みましょう。時間はスマートフォンとの付き合い方を変えるだけで生み出せます。通勤通学途中を上手に使いましょう。

 ②100冊の本を「読書ポートフォリオ」として管理・配分しましょう。今のビジネス系か否か、基礎か応用・新奇かで4分します。

 ③その「読書ポートフォリオ」を、自分の社会人ステージに合わせて、意思を持って変えていきましょう。ビジネス系から非ビジネス系に、基礎から応用・新奇へと。

 ④各セグメントでの読み方も、意図的に変えましょう。「粗読み」「斜め読み」「熟読」「重読」です。基礎ができれば、粗読みや斜め読みが効率的にできるようになります。

 ⑤同じ文章を読むにしても「読め方」によって価値は何倍も変わります。「対比」「反常識」「数字」「一段深く」「抽象化」の5つの視点で読み込みましょう。

 ⑥廊下の一部でもいいから書斎(コーナー)を持つ。浅めの天井までの本棚で蔵書を開架し、棚ごとに分類・面陳する。

 ⑦読書→思索・行動→発信→スキルのサイクルを回す。思考法のパターンを少数身につけ使い込み、必ず自分でやってみる(試行錯誤)。流行りにかかわらず発信を続けてスキル化し、世の中が追い付いてくるのを待つ。

 ①の読書時間について、1冊読了するのに平均4時間かかるとして、年100冊を読むとすれば400時間必要になります。1日最低1時間の読書時間を確保する計算になりますが、スマホを操作する時間を読書に振り分けることで1日80分は確保できるとのこと。

 

 「ビジネス系の本は「企業本」「ノウハウ本」「フレームワーク本」の3つに分類できる」「どんな本にしても新しいことばかりで100%埋め尽くすことはありません」という著者の指摘に合点がいきました。

 「これまで世の中に知られていることをベースに、新しい内容を位置づけ、解説していくのがビジネス本の造り」であると定義されています。私が「読書」についての本を手にとってはありきたりな内容に落胆してしまうのは、1冊のなかで新しい内容の占める割合が少ないためのことだったのです。

 著者は「正味の「新しい内容」は全体の10%に過ぎない」ので、斜め読みでの抽出を推奨しています。「基礎ができていれば、それはほとんど自動的にできるでしょう」と。

 あと、藤原和博『本を読む人だけが手にするもの』と同様に、読み終えたらアウトプット(発信)することが大切であるとありました。読み終えた時に必要な知識を抽出し、次に生かすことが大切ということと認識しました。とはいえ、まとめることは面倒や困難が伴い、「読書メーター」の一言コメントすら書いてない本が幾つかある始末。

 本書は定価2,052円、440ページの大著ですが、140ページが本の紹介と書影を載せただけのブックガイド、50ページは自分の読書遍歴、25ページ+巻頭のカラーグラビアは書斎の紹介で占められています。

 ブックガイドと書斎紹介をカットして200ページくらいの新書で刊行したほうが適切であると思いましたので、私から推薦することはありません。

 装丁に関しては、「おわりに」で小口翔平(tobufune)に「みんなして「本好きがワクワクするカバーを!」などと無理言いまくりましたが、見事に応えてくれました。さすがです。」とありましたけれど、他人の著作物のカバーを載せてしまうという姿勢には、許可をとっていたとしても、全く好感がもてません。

 岩郷重力さんは東京創元社ミステリ・フロンティア」シリーズの装丁をてがけていて、大崎梢『配達赤ずきん』の表紙に載っている書影は過去に刊行された「ミステリ・フロンティア」シリーズの表紙を全て少しずつ変えて載せたというエピソードを思い出しました。そのくらいのことをやってほしいものです。