「みずず」2018年1・2月合併号「読書アンケート特集」

2017年2月16日付のエントリの冒頭を引用します。

みずず」2017年1・2月合併号「読書アンケート特集」

年末に各誌で発表される「年間ベスト」。
その末尾を締めるのは、みすず書房が発行するPR誌「みすず」の「読書アンケート特集号」。今号では146名の方が5冊以内という規定の中で選んでいます。
本の雑誌」や「ダ・ヴィンチ」でランクインするエンタメ小説はほとんど紹介されず、学術系の書籍が中心になるのが「みずす」の特徴です。
(年間ベストといえば、マガジンハウスが発行していた雑誌「ダカーポ」で発表していたBook Of The Year。休刊後はWebで発表していたけれど、14年を最後に発表されてないので、ぜひとも復活して欲しい)

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私の行動範囲に置いている書店がないので、昨年は、みすず書房に410円分の切手を送って入手した「みすず」。

そろそろ「みすず」の読書アンケート特集号が発行される時期だなと思って「みすず書房」のHPを確認し、住所をメモしたけど、切手を用意しそびれたまま何日か過ぎてしまいました。
そんな折の2月9日(金)、BRAHMAN日本武道館公演前にジュンク堂書店池袋本店に寄ったら読書アンケート特集号の「みすず」が平積みされていたので買い求めました。

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今年は145名の方が選んでいました。外岡秀俊服部文祥、辻山良雄、ブレイディみかこ坪内祐三と著作を読んだことのある方もいますが、大半は名前すら存じ上げない方々ばかりです。

改めて目を通すと、つくづく世界の広がりを実感します。

複数の新聞の書評欄で紹介され、紀伊國屋書店主催の「じんぶん大賞2018」でも上位になった國分功一郎『中動態の世界 意志と責任の考古学』、東浩紀『ゲンロン0 観光客の哲学』、松村圭一郎『うしろめたさの人類学』、千葉雅也『勉強の哲学』などを紹介している方もいますが、大半は初めて書名を知る書籍ばかりです。

2018年版には、みすず書房から著作を刊行したブレイディみかこさんもアンケートに応えていますが、英字の翻訳もされていない書籍を紹介していました。
ブレイディみかこさんと交流をもった松尾匡がブレイディさんの著作3冊を取り上げたのを筆頭に、他にも2名がブレイディさんの著作を取り上げていました。


服部文祥さんが、石塚真一BLUE GIANT SUPREME』を挙げていました。
「ジャズマンガ。ヨーロッパ編になったが、変わらず一〇日と二五日(ビッグコミック発売日)を楽しみにしている。」

私が昨年推測したことは、その通りだったわけです。

服部文祥(登山家・作家)が石塚真一BLUE GIANT』を選んでいました。

寄せられたコメントは「ジャズマンガ。ユキノリの境遇はあんまりです」。

コメントで触れられた「ユキノリの境遇」とは、17年3月に刊行される10巻に収録されるエピソードのことだと思いますので、このことから服部文祥さんは「ビッグコミック」本誌で『BLUE GIANT』を読んでいることが分かります。

 

上野千鶴子がヘイドン・ホワイト『メタヒストリー』、『実用的な過去』を挙げ、「ヘイドン・ホワイトの翻訳が二冊刊行。」と書いていました。
読み進めていくと、柿沼敏江が「今年は大著『メタヒストリー』をはじめ、ヘイドン・ホワイトの翻訳本が三冊出版された」と書き、『歴史の喩法』を挙げていました。
断定して間違える上野先生を発見したわけです。

 

阿部日奈子が藤崎彩織『ふたご』を取り上げていました。

「愛の不均衡。だが、取り繕いようもない裸の心は、この不均衡な磁場でこそ見えてくるのかもしれない。十代で出会い、自分の言葉が通じるのはこの相手だけと直感的に選び合った男女の、手探りで匍匐前進するような歳月が冷静な筆致で綴られる。自分も相手も生き延びさせるために受け身で持ちこたえ、事態を覆してゆくヒロインの勁さに胸打たれた。」

 

坪内祐三さんが後藤明生『アミダクジ式ゴトウメイセイ』を選出していました。
5冊以内という依頼に対して、1冊についてのみ書いてありました。後藤明生『壁の中』新装版刊行の新聞広告で坪内祐三さんの名前は確認済みであり、その流れからの選出であることもうかがえます。紹介しつつ、今の文藝誌で取り上げられない事を嘆いていました。あい変わらずだなとも思うし、言い続けることの重要さも実感します。


買ったところで手におえないのに、買いたい本が増えるだけだから、こういうベストは手をださないようにしたいのが本音である。けれど、「これが1位は納得」「順位低すぎ」とか言いたいんだよな。

 

yomunelさんも日記のなかで触れていた箇所を引用します。注目してるとこが全然違うなー。

あまり熱心ではなくナナメ読みしていたみすずのアンケート特集号で、阿部公彦氏がとにかく読んでみてよと薦めていたボラーニョ『チリ夜想曲』や、山田稔氏が内容も翻訳もいいと褒めていたイーユン・リー『黄金の少年、エメラルドの少女』を読みたくなったが、なかでも大竹昭子氏の文章が印象に残っている。いつか読もうと思っているうちに時間がたち、いつかはもう来ないのではないか。そんないつか読もうと思っていた石牟礼道子青来有一の本を読んで感動したことが河井寛次郎の随筆からの引用とともに綴られていてよかった。情報に踊らされて、新刊ばかりに目が向いてしまうけれど、いつか読もうと思っていてまだ読めていない本もどんどん読みたいと思った。

 

d.hatena.ne.jp