雑誌「Number 1058・1059」
「なぜ今、読まれているのか 似て非なる名将 落合博満と野村克也」と題された特集が組まれていたので「ナンバー」を購入しました。
鈴木忠平「嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか」と加藤弘士「砂まみれの名将 野村克也の1140日」という2冊の本が売れている/読まれていることから生まれた企画と思われます。
2冊ともそれぞれの発売直後に読んだ自分が狙い撃ちされたような特集でした。
普段からプロ野球の結果を追っている小野島大さんからすると本特集は物足りなく思えたそうです。
ナンバーがなぜかこのタイミングで野村と落合の特集。どの記事もどこかで読んだような内容ばかりで、イマイチツッコミが浅い気がする。ノムさんは仕方ないけど、落合は存命で自分のYou Tubeにはガンガン出てるのに、ここには出てこないというのがやはり致命的。
興味深いのが、最近では出色の面白さだった監督時代の落合のノンフィクション「嫌われた監督」のさまざまな識者による読書感想文を計7人4ページにもわたって掲載してること。そのくせ「嫌われた監督」の著者である鈴木忠平氏はこの特集に一行たりとも登場しない。
果たして7ページも使う必要があったのか、それより鈴木氏に何か書かせる方が良かったのでは。それこそ、鈴木氏と落合の対談とか。なんかの事情でその企画がボツったのかもしれないけど。
いつも安定のナンバーにしては詰めが甘い特集。せっかくのプロ野球特集なんだから村上の特集でもすればいいのに。
小野島さんが指摘するように鈴木忠平さんが出ていればもっと充実したのは私も同意するところです。
ただ、4ページを7ページとして筆が滑っている感もなくはないです。
詰めが甘いって事は普段はもっと面白いの?とか、ヤクルト村上の特集はシーズン終われば大々的に特集組むでしょ?とか言いたいことも出てくるくらいには、今号の「ナンバー」を擁護したくもなります。
毎試合の結果を追わず、特に贔屓のチームがあるわけでもなく、たまに評判のノンフィクションがあれば手に取る程度の野球好きには、読み通すことのできた特集でした。
最も良かったのは、寄稿している人の人選。私が著者を読み、著書を待ち望んでいる作家たちばかりでした。
〇 長谷川晶一
買おう読もうと思っているが清原が活躍していないシーズンだしな、と二の足を踏んでいた「詰むや、詰まざるや 森・西武vs野村・ヤクルトの2年間」の著者。
〇 加藤弘士
「砂の上の名将」の著者。
〇 赤坂英一
2009年に「ほぼ日」に載った「こういうやつが、いたんだよ」(2009年!)を面白く読み、その流れで手にした「キャッチャーという人生」は名作。
〇 中溝康隆
最初のきっかけは、坪内祐三さんの「文庫本を狙え!」だっただろうか?かつてのペンネームをタイトルにした「プロ野球死亡遊戯」や最近では、西武ライオンズ時代に絞った清原和博を辿った「キヨハラに会いたくて」を読んだ。刊行ペースが早っくて、全然活動を終えていません。
〇 村瀬秀信
「気がつけばチェーン店ばかりでメシを食べている」を坪内祐三さんが紹介していたので気になり、名著「ドラフト最下位」を読んだ。
〇 プチ鹿島
長野県千曲市出身の文筆活動も盛んな芸人。コラムと対談が載っている「KAMINOGE」を毎号読んでいる。著者では「芸人式新聞の読み方」は面白かったし、最近の「プロレス社会学のススメ」は情報量が多くて一読しただけでは読んだにならないくらいの作品。
本特集への寄稿のタイトルは「名将本が愛されるワケ」。
あらためて思うのはノムさんにしても落合にしても偉大なる屁理屈
(確固としたその人の理屈を言葉にできる人)は活字とも相性がいいということ。
〇 西澤千央
「Quick Japan」や「GINZA」などこの名前を雑誌で見つけると得した気分になるライターのひとり。
「文春野球」でも書いていたためか、本特集での寄稿は「信子夫人とサッチーの“女のみち”」という西澤さんにしか書けないテーマ。
単著を待ち望んでいます。
〇 「嫌われた監督」の読書感想文
アイドル雑誌「BUBUkA」の2月号は、伊賀大介さんの年間ベスト本が載るので、ここ数年買い続けています。
その企画の今年の号で紹介されていたのが「嫌われた監督」。これだけで個人的には文句の付けようがありません。
寄稿者の紹介ばかりになっていますが、このラインナップで悪い内容になるわけがなく、読み通すくらいに面白かったです。