いしわたり淳治さんのこと
ちくま文庫『うれしい悲鳴をあげてくれ』が売れていると知ったのは、昨年11月13日の朝日新聞に掲載された広告に気付いたときです。
『うれしい悲鳴をあげてくれ』のことを知らなかったわけではありません。横山裕一さんのイラストが表紙を飾ったロッキング・オン社から出版された元版(07年11月28日発行)も持っています。なんなら、『ロッキング・オン・ジャパン』誌にて04年6月号から「Opportunity&Spirit」というタイトルで連載がはじまった時から愛読していました。
14年1月の文庫化直後に買ったので、その後の売れに売れてている状況は知りませんでした。14年12月15日時点で13刷累計115,700部という大ヒット作になっていることを慌てて知りました(現在は15万部を超えていいるそうです)。
大ヒットを受けて、15年1月から筑摩書房のWEBマガジン「Webちくま」で月1回ながら「短短小説」いう連載が始まりました。せっかくの機会だから「いしわたり淳治バブル」が起きて、作詞集とブログ本が発売されないかと期待しています。
SUPERCAR解散後、プロデューサーや作詞家、文筆家に転身し、「いしわたり淳治&砂原良徳+やくしまるえつこ」名義で『神様のいうとおり』のリリース(10年5月26日)以外は、制作中心の活動にシフトされました。
歌詞がネット上で公開されている以上、作詞だけでは、今まで気にも留めていなかったアーティストの作品を購入するまでには至っていません。「作詞集」としていずれ一冊にまとまらないかと思っています。
いしわたりさんは「KIHON THE BASIC」というブログを05年8月から書いています。
一応説明しておくと、「KIHON THE BASIC」というタイトルは、「基本」と「基本を英語にした、BASIC」を足したタイトルで、SUPERCAR後期のシングル「AOHARU YOUTH」(02年2月6日リリース)と同系統のタイトルです。
最初は写真つきで日々の生活を綴っていましたが、最近は告知が中心でありつつ、日々の生活で気付いたことが付け加えられている形式をとっています。
その中でも、時にSUPERCARについて綴られると、特別な気持ちになります。
**********************
2005年2月25日にバンドを解散したので
気づけば作詞家になって10周年を迎えていました。
だからどうってこともないけれど
どうってこともないこともなくて深呼吸をひとつ。 (15年4月8日)
昼から打ち合わせごとや撮影をして帰宅。
帰り際に事務所でふと思いついて
SUPERCARの解散ライヴのDVDをもらい、
家に帰ってから観た。
へえ。なるほど。こういうライヴだったのか。
でも、うかつにもまたバンドをしたくなった。
今度はもっとうまくやれそうな気がした。
後半にいくにつれて涙がこぼれそうになった。
実は、これを見るのは初めてのこと。
つまり、10年組んでいたバンドの解散を
冷静に受けとめられるようになるには
3年かかる、ということなのだと思う。 (08年2月22日)
**********************
いしわたりさんに「Opportunity&Spirit」の連載を依頼した宇野維正さんが、「Real Sound」の「チャート一刀両断」でEXILEのアルバムを取り上げ、「ポピュラーミュージックの世界において、「時間の流れ」は時代を追うごとに確実に遅くなってきています」と指摘していました。
同じことをいしわたりさんが06年4月12日に「歩幅がせまい」というタイトルで指摘しながらも、制作者の立場からの決意が綴られていました。
音楽を進化させているアーティストとしては、チャットモンチーが筆頭です。ドラマーが抜けて2人になった時、サポートを入れず、2人でもバンドはできることを見せつけ、意思はしっかりと継承されていました。