CDのジャケットデザインについてミュージシャンが語るとき
トライセラトップスのデビューから4枚目までのアルバムがリマスタリングされて再発売されました。
発売を告知しているサイトには「彼らがエピックレーベル在籍時である1998~2001年にかけて発表したオリジナル・アルバム4作が、最新リマスタリング/高品質Blu-spec CD2仕様にて復刻、8月24日にリリースされる」とあります。
価格は1枚2,000円(税別)と破格なので、4枚とも持っていますが、『A FILM ABOUT THE BLUES』だけでも購入するか考えています。
リリースにあたり、和田唱さんがジャケット・デザインについて珍しく言及していたので引用します。
明日24日、再・発・売!!リマスタリングあれこれは以前ツイートしましたけど、個人的に今回嬉しい事が他にもあって、1stと3rdのジャケが当初意図した(デザイナーさん共々)デザインに戻せたこと!Yeah👍 pic.twitter.com/tuOTlrVtBM
— 和田 唱(トライセラトップス) (@sho_wada) August 23, 2016
②そう、この2枚。オリジナル盤の1stはピンクの恐竜シールが右上に貼られてた。あれはそれまでのシングル盤をあのキャラクターで押し通していたため、急に「彼」がいなくなったらどのバンドか分からないのでは?という当時のスタッフの懸念から。 pic.twitter.com/wPtDtolBXI
— 和田 唱(トライセラトップス) (@sho_wada) August 23, 2016
③俺は嫌だったの。せっかくのボーリングのピンのデザインを邪魔するようで。そのままの方がシンプルでクールだ。で、シールなら頑張れば剥がせるし、妥協案としてそれで俺も折れたんだ。けどこれは初回デジパックの話で、通常盤の時は衝撃を受けたね。恐竜ちゃんシールが印刷されてたんだから!(笑)
— 和田 唱(トライセラトップス) (@sho_wada) August 23, 2016
④今回晴れて恐竜ちゃんが取れました。デザイナーさんも意図した元々の、ステージに立つボーリングピン(つまり俺達だ)だけのデザインになった。A Film〜に関しても似たような事。ジャケット写真にバンド名もタイトルも入ってるのに、これまた当時の宣伝の人?が「分かりづらいかも」との懸念。
— 和田 唱(トライセラトップス) (@sho_wada) August 23, 2016
⑤結局上にバンド名とタイトルを入れる事に。こういう二重の説明は日本人特有のもので本当嫌なんだけど、この時のデザイナーさんが白文字でタイトルを入れてくれた後、これならキレイだし悪くないよと言ってくれた事で納得した記憶が。でもまぁ今回、晴れてこれも取れました😄🙌✨ジャケ裏話でした。
— 和田 唱(トライセラトップス) (@sho_wada) August 23, 2016
修正前のジャケットを載せておきます。確かに和田さんの望んでいるデザインの方がすっきりとしています。
先日(16年6月7日)公開された和田誠さんとの対談のなかで『A FILM ABOUT THE BLUES』のデザインに心残りがあることを匂わせていました。以下に引用します。
——さっき親子コラボの話が出ましたけど、今後、その可能性もありますよね。
唱:望んでる人は多いかもしれないよね。
誠:やれって言われれば、やるんだけどさ。唱たちはアルバムのジャケットって自分たちで決めてるんだよね。
唱:ちゃんとデザイナーの人がいるよ、方向性は示すけど。
誠:映画館の看板のジャケットがあるでしょ。
唱:『A FILM ABOUT THE BLUES』(99年)。本当はもうちょっとうまくやりたかったんだけど。
誠:きれいないいジャケットだよ。
唱:本当に? よかった。
ミュージシャンは音源については納得いかないと発売を延期することも辞さないようですが、デザインについてはレコード会社などから提案されると納得いかない部分もありつつ、マーケティングなどを理由に説明されると折れてしまいがちです。
意向とは少しずれてデザインされたものが流通してしまった例を思い出しました。
スーパーカー『スリーアウトチェンジ』です。
07年4月4日の「10周年記念盤」の発売に際し、いしわたり淳治さんがブログに掲載した文章を引用します。
そしてパッケージについても少し補足を。
10年前の初回盤と同じ感じのカラーケースなのですが
トリコロールの配色が当時とは大きく違っています。
というのも、実は当時、発注ミスがあって
止むを得ず間違った配色のままリリースしていたんですね。
なので、今回の10周年盤が正しい配色です。
10年の時をこえて胸のつかえがおりました。すっきり。
メンバーがCDジャケットのデザインをしているバンドは一ノ瀬雄太さんを擁する快速東京しか知りません。
とすれば、ほぼすべてのバンドがジャケットデザインは外部のデザイナーに委託しているはずなので、意思疎通しきれず、あとあと心残りになっている例も多く発生しているのでしょう。
ミュージシャンがジャケットデザインについて語るインタビューはほとんど読んだ覚えがないし、そもそも納得していない部分については語らないでしょう。和田唱さん、いしわたり淳治さんについても、デザインへの「胸のつかえ」がおりたから発言しているわけです。
リスナーである私は「ミュージシャンがジャケットデザインについて納得してなないんじゃないか?」と推測することはありません。なので、ミュージシャンがどの程度デザインの方向性を示しているのか、そんなことを知る機会があれば音楽の楽しみも広がるのではと期待しています。