GEISHA GIRLS とは何だったのか?
「水曜日のダウンタウン」の8巻9巻のDVD BOX SETにPUNPEEがリミックスを手掛けたGEISHA GIRLSの「Kick & Loud」が特典としてつきました。
「THE GEISHA GIRLS SHOW ~炎のおっさんアワー~」は私がはじめて買ったCDなので、GEISHA GIRLSにはより一層の思い入れがあります。
GEISHA GIRLSを知った当時はダウンタウン関連ということにだけ注目していましたが、20年経ってこのプロジェクトの凄さがようやくわかってきました。しかしながら、ウィキペディアの情報は表層的すぎるし、他のサイトにも詳しいことはまとめられていません。幸いにして、GEISHA GIRLSというプロジェクトでは後藤繁雄編集によるアルバム製作に密着した同タイトルの副読本も発行されているので、これを参考にしながら、まとめてみました。
ディスコグラフィーは以下のとおり、シングル2枚、ミニアルバム2枚、アルバム1枚です。「Grandma Is Still Alive」と「Kick & Loud」の2曲はアルバムには収録されていないので、シングルがリミックスアルバムのどちらかを買う必要があります。
Grandma Is Still Alive 1994/7/21
Grandma Is Still Alive(6:01)(※DISCOOGによるとスクラッチはスチャダラパーANIであるらしい)
Kick & Loud(4:32)
Grandma Is Still Alive "Instrumental"(6:01)
Geisha "Remix" Girls 1994/8/19, FLCG-3003
Kick & Loud (T.Mori's Loud Mix)
Grandma Is Still Alive
Kick & Loud
Grandma Is Still Alive (T.Mori's Flying Phat Mix)
Kick & Loud (Instrumental)
THE GEISHA GIRLS SHOW - 炎の おっさんアワー 1995/5/19, FLCG-3011
The Geisha Girls Show Opening Theme (0:55)
Blow Your Mind - 森オッサン チョイチョイ キリキリまい (3:40)
奥さん (7:24)
plonger (0:45)
ノメソタケ - Minha Geisha (2:17)
ステップナー (6:08)
少年 (5:10)
AGATTE (3:34)
「あ」研究家 (3:24)
おいちゃん (4:09)
Damesska (4:42)
monter sur la barre fixe (0:42)
ビー玉 (5:59)
Yuji (3:28)
炎のミーティング (4:28)
NAGOMI (2:53)
batiment de l'ecole (1:09)
少年 1995/5/19
少年(5:08)
ビー玉(4:00)
少年 "Instrumental"(5:08)
THE GEISHA "Remix" GIRLS SHOW - 続・炎のおっさん 1995/6/21, FLCG-3012
少年 (T.Mori's TUFF Mix) (5:22)
Blow Your Mind-森オッサン チョイチョイ キリキリまい (KENNY "DOPE" REMIX) (3:36)
ビー玉 (T.Mori's 12.B.O.G.G. Mix) (4:39)
少年 (U.N.K.L.E.'s Remix) (5:37)
Blow Your Mind-森オッサン チョイチョイ キリキリまい (SUNSHINE ENTERTAINMENT REMIX) (5:09)
「水曜日のダウンタウン」のDVDの特典CDであるPUNPEE REMIXは石野桜子なる人物がフィーチャーされていました。石野桜子とは誰でしょうか。坂本龍一が以下のように説明しています。
前回の(「Kick & Loud」)は、ブルックリンから来た本物のラッパーをKENとSHOにぶつけましたが、今回(「Blow Your Mind - 森オッサン チョイチョイ キリキリまい」) はなんと言っても“二番せんじ”ですから、日本の女の子を使おうと思い吉本興業に相談して、例の「SO・YA・NA」を歌ってるWEST END X YUKIの女の子。大阪パフォーマンスドールの女の子と、石野桜子(脱線トリオのアルバムにも入ってる)っていうこれも吉本のコメディアン、そしてMC HAIJIというラッパーの三人に頼んだわけです。すごく味の濃い物に仕上がっています。
アルバム「THE GEISHA GIRLS SHOW - 炎の おっさんアワー」のジャケット・デザインは、2014年10月に解散してしまったけれど、4パターンのデザインがある安室奈美恵「Sweet 19 Blues」を手掛けたデザイン・ユニットTycoon Graphics(タイクーングラフィックス)。
ジャケットのCGは谷田一郎で、スリーブなどの写真はホンマタカシ!
アルバム1曲目でナレーションを務めるのは、小林克也。そもそもスネークマンショーという先例があったので小林克也は候補から外して別案を検討したけれど、想定したニュアンスを表現できるのが小林克也しかいなかったため起用されたそうです。
「砂の果実 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々」という著書で何度目かの再評価をされている作詞家・売野雅勇(うりの・まさお)も「少年」の作詞で参加しています。
「少年」の作詞はもともと倉本美津留(ダウンタウンに近い放送作家)に頼んだが、坂本龍一の目指していた方向からちょっと違ったので不採用になり、「(不採用にしたのが)歌入れの前日だったので、これは作詞のプロに頼むしかないということで、たまたま以前お逢いしたことのある売野さんに、もう、勘で頼んだ」ということです。
売野は坂本とのブレーン・ストーミングを経て、一晩で仕上げたという。
「17のままならいいのにね」という歌詞があるが、浜田は17歳当時は全寮制の監獄のような高校で過ごしていたため、17には戻りたくないというようなことを著書「浜田雅功」で話していました。
なお、「少年」でギターを弾いているのは、佐橋佳幸。
(2023年9月「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!」ランジャタイ国崎七変化で浜田の「WOW WAR TONIGHT」と対になるように松本の場面で流れたのが「少年」。松本人志は「この曲、なんやったっけ?」と)
多くの人たちが参加・客演している中で最も重要なのは、「NAGOMI」に参加したボアダムズです。
ボアダムズっぽいバンドとGEISHA GIRLSを掛けあわせてみたいと坂本龍一がイメージし、ボアダムズにオファーしたら引き受けてもらえて、数日後に合流。
本書を読むとレコーディングが行き当たりばったりで進んでいるように思えます。売野雅勇やボアダムズへのオファーは急であるのに作詞をしてくれて、レコーディングに来てもらえている、、、。カルヴィン・ハリス「Fank Wav Bounces」に似た風通しの良さがあります。
ダウンタウンはコンビとしての活動の他にソロとしての活動が爆発的に売れたことでスターになっていきました。それぞれのソロ活動である、松本人志の著作「遺書」の発行が94年9月で、H Jungle with t「WOW WOR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント」のリリースが95年3月。
GEISHA GIRLSは絶頂期前夜のプロジェクトであり、もっとも勢いのあったダウンタウンを坂本龍一やテイ・トウワが更に引き上げた、ダウンタウン前期の集大成のような作品です。
これがなければダウンタウンはお笑いしかやってなかったろうし、坂本龍一(&テイ・トウワ)がお笑いに直接触れることもなかったろうから、現在も悪い方に変わっていたはずです。ダウンタウンと構成作家2人の4人が顔を突き合わせてコントを考えることはもうないだろうから、再結成してもこの形にはならないでしょうし、やっぱり特別すぎるプロジェクトです。
現在のお笑い芸人の歌手活動は、RADIOFISHよろしく歌手になりきるか、水谷千重子よろしく別人格を装うかしかパターンがありません。
バナナマンの「T-Back」はいいラインだったと思うけれど、中田ヤスタカとかを起用できないところに弱さがあります。中田ヤスタカがダウンタウンに引き寄せられて「浜田ばみゅばみゅ」に参加するのはGEISHA GIRLSという金字塔が立っているがためです。
同じメンバーで続けるシェルターから生まれる音楽も魅力的だし、このようにあらゆる人たちを招聘した音楽も同様に魅力的です。後者の最高峰の一例がGEISHA GIRLSなのです。
2023年10月22日放送「まつもtoなかい」に伊武雅刀が出演した際に松本人志は以下のように言っていました。
スネークマンショーみたいなことをもう1回やりたいということで、坂本教授がダウンタウンと一緒に何かやるっていうのでGEISHA GIRLSっていうのをやったことがあって。