CDのパッケージ・デザインを語ってくれ
「CDのパッケージを包むビニールを剥がし、ブックレットを手に取り、ディスクを取り出し、プレーヤーにセットし、再生ボタンを押す」
私が音楽を聴くまでに辿る手順です。
iTunesで音源を購入することもありますが、大半はこの手順であり、「Youtubeの画面をクリックして、再生する」という手順を踏むことはほとんどありません。
そういう習慣を持つので、CDのパッケージには愛着があります。
惣田紗希さんがアート・ディレクションを行った、ザ・なつやすみバンド『PHANTASIA』。
そのパッケージ・デザインは『PHANTASIA』の音源から放たれるキラキラ感を増幅させるものでした。
このことは二次元の画面から伝わるのでしょうか?
音楽を扱うメディアは、もっとパッケージについて言及するなり、紹介してほしいと考えます。
音だけほしいなら、聞ければいいだけならストリーミングで足りるわけであって、パッケージ化されてフィジカルリリースされているのだから、そのことについても私は知りたいのです。
既存のメディアによる新譜のリリースについてのインタビューでパッケージについて触れていないのは、インタヴューアーが音源だけもらってインタビューに臨んでいるからです。
「どこよりも早く聴いた」が雑誌の表紙に踊り、「宇宙最速オンエア」がラジオで強調されています。
フィジカルの完成を待っていたらリリース間近になり、取材~編集~印刷~流通という仮定を経ていたらCDの発売から雑誌の刊行まで日数が開いてしまうからでしょう。
リリースとは関係なく、CDのパッケージと音楽との関係について深く掘り下げてくれる雑誌なりウェブなりのメディアが欲しいと考えています。現状、パッケージについては『ブレーン』『アイデア』『Mdn』とかデザイン雑誌がデザイナー寄りでちょこっと触れてるだけです。
サニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』に対して「名盤」「傑作」という評は目にしますが、ジャケット・イラストレーションは永井博さんで、ジャケット・デザインは小田島等さんであるということについては全く語られていません。
パッケージ・デザインが誰であるかを伝えてくれれば、買う予定でなかったCDを買うこともあります。
実際、CINRAの「祖父江慎と佐内正史が語る、黒猫チェルシーに施した「治療」」という鼎談を読み、黒猫チェルシー『グッドバイ』を購入しました。その後にリリースされた『青のララバイ』はまだ買ってませんが、そのうち買うかもしれません。
CINRAの鼎談を読むと、アートディレクションがアーティストの勢いを加速されることがわかります。
物としてのCDや書籍について語らないと、iTunesやサブスクの方が価格が安く済むからそれで良いということになってしまいます。
物としてのCDには音源データに何が上乗せされているのか?
プラケースに16ページのブックレットが挟まっているだけのものもあるかもしれないけれど、趣向を凝らしたパッケージもたくさんあります。
CDジャケット大賞というものもありますが、これについてはCDジャケットに主眼があり、パッケージを評価しているとは言えないような気がしています。
順位付けの方法は「投票」であるようですが、itunesや雑誌の新譜紹介などで観れる小さい写真だけの評価なんじゃないのか、という疑念があります。ウェブサイトに「実際に見て評価できます」とあるけれど、手にとれるわけではなく掲示板に貼りついたのを見るだけのようです。
2016年は星野源『YELLOW DANCER』が受賞していました。
しかし、パッケージを含めたデザインという観点が与えられれば、候補50作品に入っている、CORNELIUS『Constellations Of Music』が選ばれるべきです。
音楽とデザイン。私の願望を満たしてくれるメディアの登場を切望いたします。