あいみょん「憧れてきたんだ」

2017年9月13日にリリースされたあいみょんのメジャー・ファースト・アルバム「青春のエキサイトメント」。

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1曲目に据えられた「憧れてきたんだ」。

18年11月時点での最新曲「今夜このまま」と比べると、音域が狭く、粗削りな印象を受けます。とはいえ、同じ「青春のエキサイトメント」に収録されているシングル曲「愛しているだとか」には現在に通じる高音の伸びや表現力が発揮されているので、1年間であいみょんの歌唱が上手になったわけではなく、「憧れてきたんだ」に沿った歌い方をしていることがわかります。

憧れて憧れて

憧れてきたんだ

あなた達が奏でた音で

あなた達が見せた芸術で

私は変わったんだ

この歌は、死去とか消息不明とか逮捕とかあっても憧れて、影響を受けたという事実は揺るがないことを歌っています。そして、メジャー・アーティストという立場になり、憧れてきた人たちからバトンを受け取り、憧れられる側に回ったんだという意思も伝わります。

メジャー・ファースト・アルバムとしては、チャットモンチー「耳鳴り」に収録された「東京ハチミツオーケストラ」以来の快心の1曲目です。実際(CDかけっぱなしではなくSpotifyで聴いているせいもあるんでしょうが)「青春のエキサイトメント」では「憧れてきたんだ」ばかりをリピートしています。

以上のように「憧れてきたんだ」を名曲と考えていますが、手放しで絶賛はしていません。歌詞にひっかかってしまうのです。

「私が知ってるロックスターなら/数年前に墓の中」
「私の知ってるシンガーソングライター/数年前にメジャーをやめた」
「私が知ってるスーパーエンターティナー/数年前から姿を見ない」
「私が知ってるナイスガイなアクター/数年前にブタ箱ん中」

具体的な人物でのことを歌っているわけではないと思いつつも、具体的な書き方をしてあるので、誰なのかと考えてしまいます。特に後半は島田紳助押尾学が浮かんで歌の邪魔をします。

また、憧れとは違うかもしれないけれど、私が中学生の時から追い続けているダウンタウンMr.Children広末涼子。知ってから20年経ちますが今も最前線にいます。それと比較すると、あいみょんは短命な人ばかりに憧れてしまうのか?と思ってしまいました。

メジャーとインディー、自主レーベルの垣根はほとんどなくなっているし、メジャーやめたって活動し続けているならSNSを追えば情報は入ってきます。メジャーで出すアルバムに収録される曲だから、他との整合をとるためという理由なのだろうけれど、「メジャーをやめたから消息不明だけど歌い続けてほしい」という内容には「そんなにファンじゃなかったんじゃないの?」という違和感が出てきます。

まとめると、「憧れてきたんだ」をメジャー1stアルバムの1曲目においたことと、立ち位置の表明は素晴らしいけれど、歌詞には多少の不満が残ります。不満は伸びしろや期待値のことであり、今後はラブソングに収まらない楽曲を発表してくれることを大いに楽しみにしております。