「フリースタイル・ダンジョン」モンスター抜かれまくり問題を考える。

9月18日放送回で3人に勝ったSIMON JAPが、翌週25日放送回で輪入道に勝ち、5人目、ラスボス・般若が登場しました。

peko(4th Season Rec3)、Lick-G(5th Season Rec1)、MCニガリa.k.a.赤い稲妻(5th Season Rec2)と3回続けてチャレンジャーを般若まで到達させしてしまい、続く5th Season Rec3では二代目モンスターへ気合いを入れに初代モンスターが登場しました。

二代目モンスターの新たな姿を見せるのが5th Season Rec4の位置づけだったはずです。

9月5日放送回こそ、ふぁんく、雄猿、SNAFKINと1回の放送で3人押し込むという省エネぶりを見せましたが、翌週登場したCIMAには3人抜かれた挙句に勝ち逃げをくらい、最後にSIMON JAPが登場しました。

最近の二代目モンスターの実力は、FORK、呂布カルマ輪入道がまぁまぁで、裂固がちょっと下、崇勲には迷いが見えて、ACEは客をつかめていない、というところです。

CIMAは、輪入道、ACE、呂布カルマを抜いたので、次にFORKが出ていれば止めることができたはずです。

SIMON JAPを止めに行ったのは、FORK、ACE、崇勲、輪入道

FORK倒して勢いづいたチャレンジャーを崇勲、ACEで抑えられる見込みはあったのだろうか?

初代はDOTAMAが戦略を考えていたということですが、二代目は同じようにしたくないらしく、戦略を立てず、誰が出るかも立候補制で、順番について譲り合っているように見えます。

1周り以上年下の若手が勝ち上がってきた時には分が悪い般若ですが、「世田谷の二個下」SIMON JAPを押し切り、クリティカルで防衛しました。

輪入道の「良かった~」のあと、FORKの「良くはない。良くはないけど」というやりとりが映されました。
「(負けなくて)良かった~」「(4人が抜かれたのだから)良くはない。良くはないけど(般若が負けなくて安堵した)」ということだと推測します。

般若が3連敗しなかったけれど、これで、初代モンスターを挟み、4回連続で般若まで到達してしまいました。

SIMON JAPに抜かれた4人が敗戦インタビューに答えていました。

FORK

悔しい。そこだけが今回の目的だったし、般若は絶対ださせないつもりでいた。実際、そういう結果になったわけだから、受け止めるしかない。俺が負けて乗せちゃった。さらに締め直さないといけない。

 

ACE
大きい責任があるな。「FORKさんが万が一行かれても俺100%止めるんで!」サクッと負けたのが余計乗せちゃった。チームとしては俺が一番機能出来てない。

 

崇勲
非常に重く受け止めております。「どうしたらいいかな」と迷いながら出て行っちゃった。何も出来ない普通以下のラップして帰ってきた。恥ずかしかった。

 

輪入道
またケツ拭いてもらってしまった。何やってんだろうな、俺は。あの場面は初代だったら4人目が死ぬ気で食い止めてた所。あのザマだったわけだから。結局般若さんにケツ拭いてもらって、ヘラヘラしてるわけだから。相当、どうにかせんとな。チャレンジャーが強かったっていうのもありますけど、「お客さんの空気が」「審査が」言い出せば色々言える。そっちのせいにしたくない。今の状態だと確実に自分が穴だった。他のメンバーに申し訳ない。

 

SIMON JAP戦を総括すれば、「呂布カルマは何で出てこない?」「FORKは締めすぎて、ちぎれちゃいそう」だとか、「ACEの止めるという自信はどこから沸くんだ?」とか言いたいことは色々あります。

崇勲が迷いながら出たって言うなら、DOTAMAのように戦略立てられる人が必要ってことだし、輪入道が言う「お客さんの空気」については、チャレンジャーに傾いた空気を変えるのがモンスターの仕事じゃないのか、と思ってしまう。


現状のまとめはこの辺にして、二代目モンスターの抜かれまくり問題についての対策を考えました。

1 モンスターを入れ替える

大関だって何場所も負け越せば陥落するんだから、なにか厳しい措置が必要に思う。


二代目モンスター、個々は総合力が高いけど、際立ったものをもつモンスターが少ないような気がする。崇勲にサ上のユーモアは引き継がれているが、T-Pablowのセルフ・ボースト、漢a.k.a.GAMIのイリーガルな雰囲気は二代目に引き継がれていない。

ユーモアのある崇勲は残す価値あるとしても、ACEはバッサリ変えてもいいだろうと思う。

とはいえ、ACE含めてBBQまでしちゃったし、ZeebraとACEはダンジョン開始時からの付き合いなので交代は実現性が薄い。

深刻な顔をしながら「負けても次があるからさ」と思っているモンスターはいないだろうか?「フリースタイル・ダンジョン」で負けても次があるって思ってしまうと、水面下でプロップスが低下し続け、今後どんなに素晴らしい音源をリリースしたとしても聞いてもらえなくなる。

とはいえ、2018年9月時点で、二代目になってからアルバムを出したのは呂布カルマと裂固だけだから、2人以外は「フリースタイル・ダンジョン」以降の身の振り方について何も考えていないらしい(その後、18年11月にFORKの所属するICE BAHNが「LEGACY」をリリースし、輪入道は19年3月にアルバムをリリース予定。崇勲、ACEは何をしてるの?)

モンスターをもう1人追加するとか、入れ替えるとかしないと、本当のところで違うギアには入らないんだろうなと思う。

現在のHIP HOPシーンは、バトルに出る人と出ない人の区別がはっきりしすぎていて、ある程度のプロップスがあって、モンスターを引き受けてくれそうな人材は見当たらない。

SKY-HI、PUNPEE、5lack、OMSB、JJJ、Kid Fresino、KOHH、KEIJU、Ryohuといったスター街道を進む面々は出てくれそうにない。

こういう面々より出てくれる可能性が高いのは、番組開始直後から出演が待ち望まれている鎮座DOPENESSだと思うんだけど、出ないんだろうな。

 

2 4人目を固定する
初代モンスターの時のR-指定のように、誰かが覚悟を決めて4人目を引き受けてほしい。

「チャレンジャーに傾いた空気を変える」という面ではFORK、輪入道より呂布カルマが4人目にふさわしいと考えます。

現状、1人目、2人目と早い順番で呂布カルマを見れる楽しさはあるけれど、「チャレンジャーに傾いた空気を変える」ためには、ある程度の温存なり引っ張りが必要になります。

呂布カルマはCIMA戦に出て負けたから、次のSIMON JAP戦では引っ込んでいたのでしょうけど、CIMAとFORKなら、SIMON JAPと呂布カルマなら、どっちもモンスターに軍配が上がったように思います。

SIMON JAPは「フリースタイル・ダンジョン」に短期間で何回も出ているので、勝ち上がって会場が沸いたわけではなく、ライミングの聞き取りやすさや、内容に齟齬がなかったためだろうと感じます。だからこそ、呂布カルマが4人目だったら、、、と考えてしまいます。

 

3 戦略が必要(ついでに、二代目モンスターの弱み)
Abema TVで放送された初代モンスターを迎えた5th Season Rec3完全版の冒頭、二代目モンスターが決起集会を開いた模様が放送されました。

ACEの「初代モンスターはDOTAMAが相手の分析を行い、チームで戦っていた」という話を受け、崇勲が「東西!口迫歌合戦(16年12月31日放送)」の前にDOTAMAからHIDADDY対策のメールが来たけれど、それを無視して臨んで勝った、という話をしていました。

二代目モンスターにはまだお互いに対する遠慮があり、互いに助言したり、誰かがリーダーシップを発揮することがないように見えます。
だから崇勲は「SLUM DUNK」の谷沢のように、何の策もないままステージに上がることになってしまったのでしょう。

ディスが効かないという触れ込みで登場した崇勲が般若まで到達できたのは、後攻を選べるチャレンジャーという立場だったからなのでしょうか?チャレンジャーに後攻を選ばれ、先に何かを言わなければいけないモンスターという立場にまだ迷いがあるように思います。

弱みついでに言うと、ACEの弱みはCIMAの言った「クソセルアウト野郎」がドンピシャです。「全力!脱力タイムズ」で料理のラップするならバトルは引退した方がいいように思うんだけど、子供産まれたらしいから目先の稼ぎに飛びついてしまうんだろうな。

CIMAから「かわいいい少年」と言われてしまった裂固は、良い人すぎます。押韻が堅いのはいいんだけど、それは基礎であって、観客を沸かすためのパンチラインが足りていません。T-Pablowのように「若いのに凄いんだぞ」というセルフ・ボーストもなく、「何を言うんだ?」ということが、現状では全く期待されていません。

輪入道は、「青筋立てて早口」以外のことをしているだろうか?ガルフィー着てT-Pablowを驚かせたところにヒントがある気がする。

FORK、呂布カルマは二代目になって以降、宇多田ヒカルネタを入れてきたり、押韻に力を入れたりといった変化が見られるので、注文はありませんし、引き続き肩入れしていきます。

ただ、バトルには相性があるし、それ以上に「フリースタイル・ダンジョン」では空気づくりや空気を変えることが重要だから、そこへの対策をしてほしいです。

抜かれまくり問題は解決するのでしょうか?

 

 

 

19年2月からはじまった「Season5 Rec8」について書きました

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音楽フェスティバル雑感、というかフェスがしんどい

(1)音楽フェスに行く人

音楽フェスは「去年はサマソニへ行ったけど今年はケンドリック来るからフジロック行こう。来年は20周年で気合い入れたブッキングあるかもだからロッキンに行こう」というようにブッキング次第で行くフェスを決めるものだと認識していました。

私は5回くらいしか音楽フェスに行ったことないし、だいたい目当てのアーティストいるから参加しています。フジロックは金曜日にもやってて、行ったことなかったから、たまたまタイミングあった時に行けました。

ところが、そういうことでもないらしいのです。

ロッキンは開場待ちしてると、並んでる人はみんな過去のロッキンTシャツ着てますからね。で、帰りは「来年は何日来れるか」っていう話をしてる。だからリピーター率めちゃ高いんですよね。実は出演者にそこまで依存してないっていう。

www.ongakunojouhou.com

フジロックが2019年で21回目、サマソニやロッキンが来年20周年ということで、今までの積み重ねにより「場所」の重要性が増してきています。

今年の開催の最終日に来年の開催と日程が発表され、年明けには早割チケットが売り出されて売り切れているので、リピーターが一定数いるということなのでしょう。

フェスは営利事業だし、乱立すれば客の取りあいになるのだから、独自性が必要になります。

ロッキンは快適さが良いらしいし、フジロックは不自由さや自然が良いらしいし、サマソニは都心からの利便性が良いらしいし、エゾロックは遠くて良いらしい。

それぞれの独自性に気づかないと、ロッキンの快適性に慣れた音楽ライターのようにフジロックの不自由さを批判することになります。


(2)音楽フェスは魅力的だが、物足りなさもある。

私には定宿や実家のように思えるフェスはまだないです。2,3回行った「りんご音楽祭」の勝手がわかる程度です。

フェスへの参加が習慣になってないし、りんご音楽祭の裏かぶりに耐えられないのもあるし、何より1時間程度のセットしか見れないくらいなら、2時間近くが期待できる単独公演に行きたいと思うようになりました。

私は県内でアナログフィッシュのコンサートを5回くらい見ているけれど、いずれも単独公演ではなく、2マンかフェスなので1時間くらいしか見たことがありません。見てない公演もあるけれど、それだってフェスかなんかで、単独公演は開催されていません。

アーティストと側とすれば単独公演に人を呼ぶためにフェスへ出ているんだろうけど、参加者からすると大半のアーティストはフェスで見れば満足できてしまいます。フェスで見てすぐ単独に足を運ぶことは稀で、実際は、前から音源を聞いて気になっていたアーティストの演奏が良かったから次は単独へ、という流れなんだろうと。

地方でもフェスなら集客が見込めるので多くのアーティストに来てもらえるけれど、りんご音楽祭出演アーティストのほとんどの単独公演がなかなか実現しないところをみると、集客は私が思うより厳しいのかもしれません。

ライブハウスでの公演があるのはThe Birthdayザ・クロマニヨンズKen YokoyamaMAN WITH A MISSIONなどバンドばかりです。

東京を含めて単独のキャパが需要とあっていないアーティストはチケット取れないのでフェスで見るしかないのかなとも思います。


(3)音楽フェスとはバイキングである

フェスで会場内を移動して時に演奏に足を止めたり、行く行かないに関係なくラインナップやタイムテーブルを見ているうちに、これは新人を探すコンベンションなのかと思うようになってきてしまいました。

コンペティションと思ってしまうと、「音楽フェスとはバイキング(ビュッフェ)である」という結論に至りました。

ホテルの朝食バイキングには、ご飯ものだけでも、白米、玄米、おかゆがあって、夕食だと更に寿司やおこわも追加されます。この種類の多さはステージの多さに似ています。

あれもこれもとちょっとずつでもいいし、3つ抑えるだけでもいいし、定番ばかり選んでしまうということも置き換え可能な共通した「楽しみ方のバリエーション」です。

サマソニにチャンス、フジロックにケンドリが来るってのは、ホテルビュッフェにイレブン・マディソン・パークやフレンチランドリーが出張するみたいなことで、サザンやユーミン山下達郎の出演するロッキンやライジンはすきやばし次郎や賛否両論、瓢亭が出張するみたいなことです。

自分の好きなものだけを皿に盛り、いつも以上に食べ、、温泉やアスレチックを楽しむのも悪くはないけれど、2時間を料理人にゆだねる体験の方に今は魅力を感じます。

一つの店に絞るのは、他を捨てることです。寿司を選べば、ステーキやラーメン、カレーを食べることはできません。

色々楽しめるのも悪かない別に。とはいえ、旅費の負担はあるけれど、狙いを絞って入り込んでいきたい。

ザ・ウィークエンド、「TIME」誌掲載インタビュー(和訳)

2018年12月18日にザ・ウィークエンドが来日公演を行います。

ザ・ウィークエンドはケンドリック・ラマー、チャンス・ザ・ラッパーに並んで、今年来日するアーティストのビッグ3の一画です。

しかしながら、ザ・ウィークエンドの位置ははっきり言ってよくわかりません。ヒップホップ界隈は記事が充実しているけれど、ヒップホップではないザ・ウィークエンドのことはほとんど語られていないのが現状です。

そうなると海外メディアの記事に当たるしかないのですが、幸いなことに雑誌などに掲載された記事はネットにも転載され、触れることができます。

 

ということで、アメリカのニュース週刊誌「TIME」2018年5月28日号掲載の特集「次世代リーダー」で取り上げられたザ・ウィークエンドの記事を翻訳しました。

きっと誤訳だらけです。読める人は原文に当たってください。

※ 「The Weeknd」の読み方は「ジ・ウィーケンド」「ジ・ウィークンド」が好きなんですが、「ザ・ウィークエンド」に統一しました。

 

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ザ・ウィークエンド、その名声、愛、「憂鬱」 / The Weeknd on Fame, Love and 'Melancholy'

 

エイベル・テスファイは昨年セレブリティたちが身を寄せるカリフォルニア州カラバサスに引っ越してきた。明るく風通しの良い家はヒドゥン・ヒルズの近くで、近所にはドレイクやキム・カーダシアン・ウェストも住んでいます。額はどこかに吊るすべきだし、ワインの貯蔵庫もすきずきしているけど、部屋の隅には彼の胸像があります。ビバリーヒルズに比べて過度に注目されない所を彼は気に入っています。「またかつてのような状況に戻りたいとは思わない」と彼は言いました。「いつも誰かに見られているようだった」。

 

テスファイ、一般にはザ・ウィークエンドとして知られる、はわかりやすいところから登場してきました。彼が音源をリリースした2010年当時、彼は意図的に曖昧さを保っており、主にインターネット経由でバズを起こしました。「ザ・ウィークエンド」とはバンドなのかソロなのかもわからないまま、ファンは彼に夢中になっていきました。一連のナンバーワン・ヒット(「ザ・ヒルズ」、「キャント・フィール・マイ・フェイス」、「スターボーイ」)や新作「マイ・ディア・メランコリー」(SpotifyApple Musicともに公開24時間で2,500万回以上再生という記録を作った)で新進のスーパースターとなり、4月開催のコーチェラで彼はビヨンセと別日のヘッドライナーを務めました。

※2018年は4月13日(金)~15日(日)、20日(金)〜4月22日(日)に開催(3日間×2公演)。
ヘッドライナーは、ザ・ウィークエンド、ビヨンセエミネム(曜日順)

 

あちこちで彼の名前を目にする割に、ザ・ウィークエンドについてよく知らないと感じているのはあなただけではありません。彼はめったにインタビューに応じることがありません(最後に受けたのは2016年11月です)。もっとも、彼の謎めいた姿勢は、主として神経質なところに起因しています。「生放送のテレビ・インタビューに答えなきゃいけないと思うだけで吐きそうになるよ」。個人的なことについてはほとんど語ってきませんでしたが、彼が女優で歌手のセレーナ・ゴメスやスーパーモデルのベラ・ハディットとデートしているのをパパラッチに撮られた写真は簡単に見つけることができます。

 

しかし、音楽において、テスファイは自分自身をさらけ出し、愛やドラッグ、セックスについて気まぐれに歌っています(君が触ってくれるだけでいいんだ、感情なしで/ラリってるときの俺は正真正銘の素の俺「ザ・ヒルズ」)。重く、感染力のあるビートと忘れられないフックを持つ彼の楽曲はとても良く、それはR&Bとポップの間に位置付けられます。テスファイは楽曲がミレニアルズ(1980~2000年初期に生まれた世代)、中でも思春期の子たちなら共感してくれることを信じています。少年少女のことがわかり、楽曲を作るテスファイ自身は28歳です。「私たちが感じている愛の定義は、キッズやティーンの子も経験しています」と彼は言います。「音楽は特別なものです。そして人々が必要としているものです」。
※ エイベル・テスファイの誕生日は、1990年2月16日。

 

テスファイはエチオピア系移民としてトロントで産まれ、母親と祖母に育てられました。彼は17歳で学校をドロップアウトし、それから数年間は保護者のいないティーンエイジャーのしそうなこと、ドラッグや万引き、ホームレスまがいのことをして過ごしました。「僕は学校をドロップアウトしたり家出したりしている16、17の子たちを奮起させようとはしていない」と彼は言います。「単に自分も同じだっただけなんだけど」。

 

2015年に彼がリリースした「ビューティ・ビハインド・ザ・マッドネス」は200万枚を売りあげ、グラミー賞を獲りました。リードシングル「アーンド・イット」は映画「フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ」の主題歌としてオスカーの歌曲賞にノミネートされました。「星が自分のために並んだように思った」「連日のハードワークはあったけれど、正しい場所に、正しいときに収まったように感じた」。翌年リリースした3枚目のアルバム「スターボーイ」は初登場1位となり、最終的には200万枚を売りあげました。

 

ヘッドライナーを務めるコーチェラへの移動まで1週間を切ったタイミングでインタビューを行いました。コーチェラのヘッドライナーは彼にとってランドマークの1つとなる出演です。2015年にヘッドライナーのジャック・ホワイトが早い時間の出演を選んだので、彼は2日目を締めることになりました。「今までの人生はこの瞬間のためにあったんだと感じた」「打席に入れ。いいか、輝く時が来たぞ」。そして彼は演奏しました。観客のエネルギーを呼び戻し、彼の演奏で観客は立ちすくんでいました。彼の空へ抜けるような歌声は冷たく荒れた空に色を与えました。彼のキャリアは上昇していきました。コーチェラは3年早いとがっかりさせられていたので、とりわけ成功を感じた瞬間でした。Apple Musicのゼイン・ロウは2012年のザ・ウィークエンドを「スターの器じゃない」と評しましたが、結局はテスファイを鼓舞させることになりました。
※2015年のコーチェラでのジャック・ホワイトは、2018年のフジロックでのボブ・ディランと同じようにヘッドライナーでありながら、トリ前の出演だった。


それは興味深い許可であり、彼の平穏に加え、不屈の願望を覗く機会にもなりました。多くの人がスターになろうとして、しかし、何人がスターになることを認められたでしょうか?恐らく率直に言ってテスファイはスターになったことがわかり、満足しているようです。グラストンベリーのヘッドライナーになり、デヴィッド・ボウイスティービー・ワンダーポール・マッカートニービヨンセに並ぶことを目標にしているようです。目標どおりにいきそうかと尋ねました。「ええ、恐らく」。それにも関わらず、彼は賞や評価をそれほど気にしていないように見えます。それどころか彼はレジェンドたちがそうしているのを認めていて、レジェンドのようになるなら同じように引き受けていかなければいけないとわかっているようです。そのアプローチに注目すると、言うまでもなく、独自性が彼の仕事につながっています。

 

テスファイの新作EP「マイ・ディア・メランコリー」はリリースから数週間後に彼とゴメスの関係の終わりが伝えられ、「Wasted Time:無駄な時間」「Hate You:君を憎む」といった暗いタイトルの曲が収録されていたことから、すぐに「別れのアルバム」と呼ばれるようになりました。彼はその詳細については慎重になっています。「ゴメスとのことはパンドラの匣と同じであり、僕はそれを開けたくない」。しかし、彼は先行シングル(「Without a Doubt」)とレコーディングが浄化をもたらしたことを認めています。「それはセラピーであった」とテスファイは言います。「それについて話すことを求められているんだろうけど、言ったとおり終わった話なんだ」。

 

だけれども、話は終わっていません。「憂鬱な気分を優先して、このアルバムの曲を書いてきた」とテスファイは言います。「これまでの人生で憂鬱になることは少しもなかった」。私はこのアルバムのレコーディング期間中はまだゴメスと続いていて楽観的だったのではないかと尋ねました。「あぁ」、彼は言います。「それはとても楽観的だし、美しくもある」。しかし、彼はその仮定を破棄しました。なぜなら彼はその時期を過ぎていたからです。「僕がやりたいと思わないことは実行したくない」と彼は言います。それを聞かせてもらうことは?「決してない」と強く主張しました。

 

その日の午後遅く、母屋の向かいの全く同じような作りの2棟の犬小屋について話を振りました。犬が好きかを聞く前にテスファイは誇らしく微笑み、ドーベルマンの子犬、カエサルとユリウスを呼びつけました。彼はどのように散歩しているか実演し、結局は倍の大きさまで育っていることを自慢しました。彼らは泳げるけど、プールから出る方法はわかっていないから教えているんだ。その瞬間の彼は、のんびりした春に犬とくつろぐ一人の男性でした。ザ・ウィークエンドの謎めいたベールは決してはがされないだろうけど、たくさんのことを知ることができたのではないだろうか。

 

time.com

津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』総集編

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津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』は2017年1月から18年3月にかけて朝日新聞に連載されたのち、18年6月に単行本が刊行されました。

 

朝日新聞連載時と単行本では、話の収録順が変更になっています。

朝日新聞連載時は「えりちゃんの復活」→「若松家ダービー」→「三鷹を取り戻す」という順でしたが、単行本では、「えりちゃんの復活」と「三鷹を取り戻す」が入れ替わっています。

各話は、対戦するチームのサポーター同士が最終節のスタジアムに居合わせるのがこの小説の決まりごとになっています。

1話「三鷹を取り戻す」

 カード  :三鷹ロスゲロス VS 弘前ネプタドーレ

 サポーター:糸川貴志、松下広務

 2人の関係:バイト先が同じ

    表紙:若生賢治(三鷹/監督)、三鷹で暮らした太宰治とのコラボTシャツ、2人がスタジアムで食べたカルビ丼の幟


2話「若松家ダービー」

 カード  :泉大津ディアブロ VS 琵琶湖トルメンタス

 サポーター:若松供子、若松圭太

 2人の関係:親子

    表紙:峰岸青児(琵琶湖/監督)、ディアブロ泉大津/マスコット)


3話「えりちゃんの復活」

 カード  :オスプレイ嵐山 VS CA富士

 サポーター:ヨシミ、えり

 2人の関係:いとこ


4話「眼鏡の町の漂着」

 カード  :鯖江アザレア VS 倉敷FC

 サポーター:香里、誠一

 2人の関係:スタジアムへ向かうシャトルバスで隣に乗った

    表紙:野上芳明(ヴィオラ西部東京→倉敷)


第5話「篠村兄弟の恩寵」

 カード  :奈良FC VS 伊勢志摩ユナイテッド

 サポーター:篠村靖、篠村昭仁

 2人の関係:兄弟

 表紙:窓井草太(伊勢志摩)


第6話「龍宮の友達」

 カード  :白馬FC VS 熱海龍宮クラブ

 サポーター:睦美、細田

 2人の関係:バイト先の同僚

 表紙:細田さんの夫がスタジアムで会っていた熱海のおじさん


第7話「権現様の弟、旅に出る」

 カード  :遠野FC VS 姫路FC

 サポーター:青木壮介、内藤親子

 2人の関係:シーズン初戦に姫路のスタジアムで会った


第8話「また夜が明けるまで」

 カード  :ヴァーレ浜松 VS モルゲン土佐

 サポーター:遠藤忍、広瀬文子

 2人の関係:最終節前日に土佐空港で会った


第9話「おばあちゃんの好きな選手」

 カード  :松江04 VS 松戸アデランテロ

 サポーター:周治、周治の父方の祖母

 2人の関係:祖母と孫

   表紙 :石切秀児(松戸/21番)


第10話「唱和する芝生」

 カード  :川越シティFC VS 桜島ヴァルカン

 サポーター:岩田富生、鰺坂先輩

 2人の関係:吹奏楽部の先輩、後輩。


第11話「海が輝いている」

 カード  :カングレーホ大林 VS アドミラル呉FC

 サポーター:功、堂河内仁美

 2人の関係:離れて暮らす父と娘

    表紙:コルドビカ・イザギレ(大林)、吉内(呉/24番)、功が快速電車で一緒になった祖父と3兄弟

 

 

 

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タイアップに絡めとられだした星野源

8月1日(水)付けの朝日新聞全面広告で星野源の新曲「アイデア」が配信限定でリリースされることが告知されました。

CDでなければ入手できない年配の方もいるのに、朝ドラ主題歌を配信限定でリリース、、、。

今回のリリースは、「365日の紙飛行機」を2曲目にして「唇にBe My Baby」でシングル切ったAKB48以上に間違っているし、何より聴き手に優しくないです。

間違っているとはっきり書いたけれど、星野源サイドにもこうせざるを得ない事情があるのだろうと推測します。

星野源は「Crazy Crazy/桜の森」(2014年6月)以降、シングルには4曲を収録しています。4曲目が自宅録音の「House ver.」であることもお決まりです。

14年 6月「Crazy Crazy/桜の森」
15年 5月「SUN」

15年12月『YELLOW DANCER』(アルバム)

16年10月「恋」
17年 8月「Family Song」
18年 2月「ドラえもん

アルバム『YELLOW DANCER」以降、シングルを3枚リリースし、未収録曲が4曲×3枚と12曲溜まっている状況です。

aikoはシングル3枚→アルバム→シングル3枚→アルバムというルーティーンを守っています。aikoが律儀すぎるのかもしれませんが、シングル曲の収録数が増えると既発曲をまとめただけのベストアルバム感が濃くなっていき、アルバムとしてはまとまりに欠けていきます。

そろそろアルバム制作も始まっていると期待すれば、これ以上シングルを切れなかったのが、星野源サイドにあったのだろうと推測します。

シングル切るとアルバム未収録曲が16曲になるだけでなく、アルバム待望論が更に高まります。それ以上に星野源へシングルのためだけの制作を強いることになります。

配信限定にするとリリース情報を知らないでいる人も出てくるだろうから、その対応として新聞に全面広告を打ったのでしょう。

星野源の多才な活動が全方面から受け入れられるようになり、断ることのできない大型タイアップの依頼が集中していることが今回の事態を招いています。

本稿はアルバム『初恋』を聴いた時の「驚き」から書き進めてきたが、もちろん“Play A Love Song”も“あなた”も“初恋”も“Forevermore”も“大空で抱きしめて”もテレビCMやテレビドラマを通して何度も何度もアルバムを聴く前から繰り返し耳にしてきた。宇多田ヒカルの音楽のファンならば、自分のように「もしアルバムを聴いた時が最初の出会いだったらもっともっと大きな『驚き』があったのに」と夢想してしまう人も少なくないのではないか。「そもそもタイアップ案件があったからこそそれらの曲が生まれたんじゃないか」というごもっともな意見には、「そろそろアルバム収録曲の約半分がタイアップ曲ではない宇多田ヒカルのアルバムを聴いてみたいだけなのに」と返すしかない(「約半分の曲がタイアップ曲ではない」宇多田ヒカルの最後のアルバムは、2001年の『DISTANCE』まで遡らなくてはいけない)。

これはCINRAに掲載された宇多田ヒカル『初恋』についての文章の引用です(筆者は宇野維正さん)。

www.cinra.net

星野源『YELLOW DANCER』は14曲中7曲にタイアップがついているため、星野源にも置き換え可能な指摘であり、星野源の音楽のファンに待っている未来のことでもあります。

ドラえもん」のタイアップがなければ「ドラえもん」は生まれていないし、「逃げるは恥だが役に立つ」の主演&主題歌起用がなければ「恋」は生まれていないのは重々理解しています。

必要は発明の母はその通りなんですが、多くのひとに届くポテンシャルを持ち、そのための条件のそろっている「アイデア」という楽曲が広まりきらないだろうことが残念に思うわけです。

例えば、朝ドラを毎日見ていて主題歌を気に入っている祖母に、どうやって配信限定シングルを届けることができるのでしょうか?

フィジカルでリリースされれば、CDなりカセットを買って渡せば済みます。

配信限定の場合、iTunesでダウンロードしたものをCD-Rに焼かなければいけません。私はSpotify中心でダウンロードはめっきりしていないし、自宅にはネットにつながったパソコンがありません。職場のパソコンはセキュリティが強化されてCD-Rに焼くことはできなくなりました。


一体、どうすればいいのだろうか?

 

同じく朝ドラ主題歌だった桑田佳祐「若い広場」もシングルカットされず、「配信→PV公開→アルバム」という流れでした。

星野源桑田佳祐と同じ事務所「アミューズ」に所属のタレントなので、この流れを踏まえているんだろうな。しょうもないな。

 

似たようなことを考えている方がいました。

face.hateblo.jp

CD販売による収益が得られなくて困るのはレコード会社であって、アミューズ自体はそんなに痛くないんじゃないでしょうか?

だとしたら、アミューズの狙いはどこにあるんでしょうか?飽きさせないため?タイアップ作品を独占しようとしている?アルバムの売上に賭けている?

よくわかりませんね。

「フリースタイル・ダンジョン」2018年7月31日

初代モンスターと2代目モンスターが対戦する「フリースタイル・ダンジョン」シーズン5、rec3。

7月31日放送回は注目点の多い回だったので、まとめました。

いつもは「エキレビ」でのうっすい書き起こしとレペゼン社会不適合者さんのまとめを見て済ませるんですが、レペゼンさん今回は熱が入りすぎてふわっとしたことしか書いてなかったので、、、。


バトル以外でも言えることをバトルで言っているのか問題

「バトルで言っていることを、バトル以外でも言えるのか?」というのは、MCバトルで論点になっていることの1つです。

つまり、「バトル以外では言えないことをバトルで言う=リアルじゃない」という図式です。MCバトルに出場する人には、リアルであることが求められるので成立する論法です。

MCバトルが増えて、ラッパー同士が現場で顔を合わせる機会が増え顔見知りが増えている昨今では以前より有効なディスになっています。

a.k.a.GAMIと対戦した呂布カルマ、FORKと対戦したR-指定がこの論法を砕く返答をしていました。

まずは、呂布カルマ

a.k.a.GAMI

マイク持つとなんで豹変 
いやいや いらねんだよ 
そんな嘘臭い表現

呂布カルマ

そう いつものように続けるリアルなラップ 
あそこ(入場ゲート)をくぐる 
マイクを握る 
スイッチが入る俺は俺でなくなる 
ラッパーになる 
呂布カルマとしての仕事を全うする

続いて、R-指定

FORK

お前はステージに登ると急に生意気 
いきなり鼻息荒くしてるけど 
マジで世が世だったら 
無礼過ぎて腹切りして早死にしちまうような 
ハヤジニー発言だよ 
問題だ 荒れるぞインターネット 
今日はお前がターゲットだよ

※世が世なら … 2003年「FORK=般若」戦の後に判定を巡って揉めたことがあったようです
※ハヤジニー発言 … 椿が指摘したMCバトルでのミソジニー(女性蔑視)発言
※荒れるぞインターネット … 2014年3月31日「笑っていいとも!」最終回でとんねるず爆笑問題の乱入を受けて松本人志が「ネットが荒れる!」と繰り返した

R-指定 

俺がターゲット 
その荒い言葉使いに絶句する 
Checkする 切腹せずライムとsexする 
それが俺のやり方 
Zeebraの前だから鼻息荒くもなるわな

呂布カルマは、MCバトルだから現場の延長とはいえ、テレビのショーなんだから呂布カルマとして求められていることを発言するというスタンスを明らかにしました。

R-指定は、年代の違うFORKに向かって「お前」を連発し「バカ」とまで言っていたことを生意気と指摘されたわけですが、(FORK以上に)憧れていたZeebraが見ているんだから鼻息荒くなるし、格好悪いところは見せられないという、再び「フリースタイル・ダンジョン」に呼ばれたことへの意義を明らかにしました。

 

FORKの進化

第3ラウンド

やり方が全然入ってこないぜ
限界超えてやる 常に全開だよ 
まるでシェイクスピアも驚きの展開 
まるで宇多田ヒカルの歌詞 
疑いなく俺の方がヤバいと言わす 
Automaticにこの勝負は決まる 
お前のTravelingもここまでだ 
煙草のFlavorが残ってるうちに終わらす 
2時間もかかんねぇバカンスだったな

「人生最高の日(シェイクスピアだって驚きの展開)」、「Automatic」、「Traveling」、「First Love(煙草のflavor)」「二時間だけのバカンス」と宇多田ヒカルの引用で畳みかけたFORK。
R-指定とのバトルが最終までもつれ込み、最後自分で締めるという意識から奥の手を使ったんだろうと思う。
一人の歌手の、ここまで多くの作品を、これだけわかりやすく出してきたことはなかったから、観客がFORKに感じているマンネリをFORK自身も意識していて、それを打開しに行ったんだろう。

バトル前にR-指定が「(FORKは)カッとならない。冷静に淡々と上手い言い回しを続けていく。(それはスタイル何だろうが)チャレンジャーが熱くなった時に、チャレンジャーの方にお客さんが持っていかれる(原因になっている)」と指摘していましたが、熱くなったFORKを見ることができました。

第1ラウンドでR-指定が「FORK、ストレートで来いよ」と言っていました。

野球のフォークボールとかけているのはそうなんですが、それ以上に、「いつもはチャレンジャー相手に上からライムについて説教してるけど、俺には必要ないから説教抜きでバトルしよう」という意味があったんだろうなと思いました。

 

引用でいうと「R-指定=FORK」戦の前、サイプレス上野戦の呂布カルマも意外な引用をしていました。

ぶっちゃけ 初代弱ぇな 嘘じゃねぇよ 嘘じゃねぇよ
BAD HOP Benjazzyみたいなフロウでもかませるぜ 

 BAD HOPのT-Pablowがいるからでしょうか?

BAD HOPの「2018 (feat. Vingo & Benjazzy)」からBenjazzyのverse「嘘じゃねぇ 嘘じゃねぇ」をサンプリングしていました。

行き場の無いHaterの妬み
俺等がサボったらパクられたって
勘繰って喜んでるお前の事
皮肉だろじっとしてるお前らの
嫉妬のおかげで俺らまた一歩づつ
理想に近づいてくきっと
嘘じゃねぇ 嘘じゃねえ
手に入れる欲のまま
描いた理想の上を行く俺の路上の夢
まためちゃくちゃ
美人なBitchと仲間がしけこむ

「2018 (feat. Vingo & Benjazzy)」BAD HOP

 

「R-指定=FORK」戦の判定について

1対1で迎えた3ラウンド目。

R-指定は「リアルじゃない問題」への返答をし、FORKは宇多田ヒカルの引用を重ねたのが第3ラウンド。

今まで見せてこなかった落とし方をしたFORKの勝ちだと思ったのですが、まさかのクリティカルでR-指定の勝ち、、、。審査員は宇多田ヒカルの引用を5か所理解できていたんでしょうか?


二代目モンスターの4人目は誰なのか問題

第2ラウンドでR-指定が「誰1人として4人目の器じゃないんだよ」と指摘していました。

「フリースタイル・ダンジョン」は5人勝ち抜き制をとっています。初代モンスターの時は、R-指定は4番目に登場し、チャレンジャーが般若に挑むのを何度も阻止していました(呂布カルマは阻止され、崇勲は突破しました)

4人目の器かどうかはおいておくとして、二代目モンスターでは誰が4人目なのかはっきりしません。裂固、崇勲、ACEはランクが一個落ちるから違うとして、FORK、呂布カルマ輪入道が4人目に当たるはずなのですが、二代目の場合は4人目に誰が出るのか固定されていません。

誰が出るのかわからないところが二代目モンスターの面白い一面です。ただ、「待ってましたR-指定!」「アール、止めてくれ!」と初代のときに思っていたけど、二代目になってからこういう気持ちになっていないことを思い出しました。

R-指定が「負けたとしても、片目奪う気持ちでやっていた」と言っていましたが、それはつまり、R-指定が登場することでチャレンジャーに傾きかけた流れをモンスター側に戻そうとした、ということです。
peko、MCニガリa.k.a.赤い稲妻、Lick-Gいずれの場合もスルスルっと般若までいった印象があり、2人が般若を倒しました。

4人目を誰が引き受けるのか。二代目のなかで遠慮しあっているのか、誰も覚悟を決めないのか、、。輪入道は鉄砲玉というかかき混ぜるイメージがあるので、呂布カルマが4人目で居座るのがいいと思うのですが、どうか?

R-指定勝ち抜いて呂布カルマとの再戦して、何らかの問答があり、呂布カルマのモンスターとしてのスタンスに変化が生まれることを期待しています。

津村記久子『ディス・イズ・ザ・デイ』(カングレーホ大林の不在を埋める『この世にたやすい仕事はない』)

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杜王町、仙醍キングス、EAST TOKYO UNITEDなど小説やマンガに出てくる架空の町やチーム。どこかのチームの熱狂的なサポーターでなければ、実在する町やチームに対してより親近感が持てるはずです。

2015年10月に刊行された『この世にたやすい仕事はない』には「カングレーホ大林」というサッカーチームが出てきました。

2017年1月から朝日新聞で連載がはじまったサッカー2部リーグを舞台とした小説『ディス・イズ・ザ・デイ』。

カングレーホ大林は最終話に登場しましたが、アウェイで、最終節前に1位で上位リーグへの昇格を決めていたためか、消化試合のような描き方がされていました。エンブレムのデザインについての記述もなく、話の中心が、同じチームのサポーターになっていた交流がなく離れて暮らす父と娘に寄っていたため、余計にその印象が強くなりました。

カングレーホ大林のことを思い出すために『この世にたやすい仕事はない』に収められた「大きな森の小屋での簡単なしごと」を読み直しました。

『この世にたやすい仕事はない』は、前の職場を退職した主人公が職を転々としていく短編集で、その5つめの職場が、大林大森林公園内にある小屋。

カートには、公園にホームスタジアムが隣接しているサッカークラブであるカングレーホ大林の、タカアシガニがあしらわれたエンブレムが塗装されている。(中略)スタジアム建設時に、タカアシガニの化石が大量に発掘されたので、カングレーホ大林のエンブレムにはタカアシガニが登場するらしい(後略)

 カングレーホ(cangrejo)はスペイン語で「蟹」という意味です。

カングレーホ大林が昨シーズンの終わりに2部への降格が決まり、それと同時にスペイン出身のバスク人、コルドビカ・イザギレは家庭の事情で帰国してしまいます。
降格と同時だったので降格したチームを見切ったと思われていたそうです。しかし、大病を乗り越えた父親の看病を終えイザギレは復帰します。

半年後に、イザギレは日本に戻ってきて、降格したカングレーホ大林と契約し直して、今も元気にプレーを続けているらしい。カングレーホ大林は、先週昇格を決めたとやはりネットのニュースで見かけた。

イザギレだけでなく、百合岡という選手も登場します。

センターバックの百合岡がね、U21の試合で頭から血を流しながらヘディングでゴールしたことがあって、それを見てファンになって、それが高三の秋のことで、そのままここに就職を決めました。

カングレーホ大林の、コルドビカ・イザギレ選手と百合岡純選手が駆けつけてくださいました!と司会者は言う。(中略)百合岡純は、イザギレとは逆に、思ったより大きかった。もしかしたら190センチはあるのではないか。

カングレーホ大林は1部リーグから降格後、1シーズンで2部リーグに昇格します。

つまり、『この世にたやすい仕事はない』で描かれた1年間は、『ディス・イズ・ザ・デイ』で描かれるシーズンと同じ1年間なのです。

『ディス・イズ・ザ・デイ』はWeb本の雑誌「今週はこれを読め」(評者:松井ゆかり)「一冊の本」6月号(評者:木村俊介)などネットでも読める書評だけでなく、各文芸誌に掲載されたものも読みましたが、カングレーホ大林や「この世にたやすい仕事はない」に触れている書評はなかったので、カングレーホについてを中心にまとめました。

『ディス・イズ・ザ・デイ』を補完するのが『この世にたやすい仕事はない』です。

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最初に読んだときの感想。刊行から4年近くたつのにまだ文庫化されていない。

tabun-hayai.hatenablog.com